こちらの記事も読まれています
【天才の育て方】#01 水上颯〜勉強をしない天才児〜[後編]
Profile
KIDSNA編集部の連載企画『天才の育て方』。 #01は、高校2年まで勉強せずトップに近い成績をとり続け、現在は東京大学医学部に通う水上颯にインタビュー。後編では水上颯の天才ゆえの勉強スタイルやルーツについて紐解いていく。
水上颯独自の天才ゆえの勉強スタイル
東京大学医学部に通いながらも「勉強はしなかった」と語る彼の頭脳力の高さは、どのように培われたものなのだろうか。気になる勉強法を聞いてみた。
ノートは取らない
ーー勉強方法で、工夫している点や自覚している癖などはありますか?
「ノートはほとんどとらないですね。これは特徴や癖というか、僕は字が上手ではないので、自分の字をあまり見返したくないところから始まったと思います(笑)。
覚えるためにノートをとっても見返さなければしょうがないと思っているので、ノートに書かれているのはほとんどが問題を解いているときのメモですね」
ーーつまり、話を聞きながらその場で理解して、必要に応じて暗記しているということですか?
「そうやっていたことが多かったと思います。大学の授業では聞いていてわからないことがあったらその場で自分で調べて、そのときに理解するようにしています。ノートをとっていても、見直さないと頭の中に戻ってこない感覚があるので、そういう意味でノートはとらないですね。
ただ、これは僕独自の習慣で、覚えていないことは見直すこともできない。仮に自分の子どもにノートは取らなくても良いの?と聞かれたら、一応ノートくらい取っておきなさい、と答えるかもしれないですね(笑)」
ーー自分に合ったやり方で勉強を続けた結果、今に至るのですね。いつ頃からそのやり方を見出したのでしょう。
「中学校まではとっていましたよ。高校時代も何度もノートをとろうと思ったことはあるのですが、結局続かなくて。どちらにしても、続けていれば習慣になりますよね。僕にはこの習慣が性に合っていたというだけで。単純に、物の整理がうまくなかっただけなのかもしれませんね。よく母にも、服を片づけなさいとか言われていましたし(笑)」
英語は1冊の単語帳で十分
ーー例えば英語の場合、単語の意味を覚えていないと当然文章も読み取れないですよね。そういった暗記が必要なものはどのように勉強していたのですか?
「英単語は単語帳を使って覚えてました。大学受験の場合は難しい単語には必ず注釈がつくので、3000単語程度覚えれば済むと考えていました。3000語ならそれほど時間もかからないですよね。だって、たったの3000語ですよ」
ーー1冊の単語帳を何度もやるのか、違う単語帳を買って勉強するのですか?
「1冊でしたね。違う単語帳をやる意味があるとすれば、1冊だけだと覚えるべき単語に漏れがあるのでは?と、考えるからだと思います。ですが、僕は漏れなんて当然あるものだと思っています。僕たちはネイティブでもなければ得意でもないのだからわからない単語があって当然で、文中に出ている単語の9割くらいをカバーできればほとんどの英文が読めると思っています。
そう考えると、一冊を繰り返し勉強した方が、その単語帳に載っている分は全部覚えられます。その単語帳なりのロジックがあって作られていると思うので、その1冊を覚えれば十分です」
アベレージヒッターであれば良い
ーーここは覚えなくて良い、8割程度で良いといった感覚は、自分の性格上のものですか?それとも、テストで高い点数をとるための論理的な考え方ですか?
「どちらかというと後者だと思いますね。完璧を期さなければならないものは絶対にあるし、そういうものは全部覚える必要があります。
ただテストって、僕なりのロジックにおいては全球ヒットを打つ必要はなくアベレージヒッターであれば良いし、出題頻度ってあるじゃないですか。これ多分出ないよな、というようなものはあまり見ないとか、自分の中で最適な動き方を見つけるのは得意でしたね」
ライバルは自分
ーー自身のやり方を貫いていて他者に左右されない強さを感じますが、学業のうえでのライバルはいましたか?
「のんびりした大学生活を送っていたので、ライバル心を抱いていた人はいませんでした。むしろライバルは自分だったのかもしれませんね。自分でやる気を出せればうまくいくのに、うまくいかないとか」
ーーのんびりした学生生活、、具体的にいうとどのような感じでしたか?
「想像していた以上に、青春小説や恋愛漫画で見る"大学生"をやってる人が多かったですね。僕自身も思った以上に"大学生"ができたと思います。ただ僕は出不精なので、実習など学校が終わると家に帰って、調べものをしたり本を読んだりクイズの問題を考えたりで過ごしたことが多かったです。ゲームにしてもクイズのゲームをやっていたりと、自分でもよくやるなと思います(笑)」
ーー他人とは頭脳が違うな、頭が良いなという自覚はありますか?
「それは全くないですね。偉そうに『東大王』としてテレビに出てる身ではありますが、今、東大の医学部で過ごしていても自分より頭が良いと思う人はたくさんいるので、自分がそんなに優れていると思ったことはないですね」
天才ができるまでのルーツ
自分に合うやり方を自分で見つけ出し、それを続けてきた水上さん。ご両親には幼少期からどのように育てられてきたのだろうか。
「『私たちから、あなたに言うことはないから、あなたの好きなようにいろいろやりなさい、サポートはするから』という言葉は印象に残っています。好きなようにやってくれと言ってもらえていたおかげで、今の僕があると思っています。
昔から何かをやりたいとそれほど強く思うことはなくて、その分やりたいことがあったら必ずやらせてくれましたね。兄がテニスをやっているのを見て僕もやりたいと言えばスクールに通わせてくれたり、卓球をやりたいと言ったときは家に小さな卓球台を作ってくれたり」
ーー興味をもったことに対して環境を整えてくれていたのですね。
「押しつけがましくなくサポートしてくれていましたね。なにをするにも否定せずいてくれましたし、結局医者という道を選んだときにも、家を継いでも良いし継がなくても良い、いくらでも道はあるから好きなようにやりなさいと言ってくれました」
ーー現在、ご両親とはコミュニケーションを取っていますか?
「今、一人暮らしをしているのですが、朝起きるのが苦手なので、朝が早い日にはモーニングコールをかけてくれます(笑)。自炊がほぼできないのでご飯を持ってきてくれたりとか。僕の生活力が低いことをよくわかっているので、本当によくサポートをしてくれています。一人立ちできていないと感じます(笑)」
天才にきく、「天才」とは
水上颯は頭脳的に生まれながらの天才、という印象を受ける。本人は自分自身をどのように捉えているのだろうか。
水上颯はなぜ天才なのか
ーーなぜ天才になれたのか、振り返ってみていかがですか?
「自分が要領の良いタイプだとは思いませんが、愚直に何かができる、というのが自分の長所なのかなと思いますね。クイズにしても愚直な努力が必要で、そういう作業も違和感なくできるし、手を抜いて良いところは手を抜くズルさもあると思います。生活力では要領が良くないので、人としてそこでバランスがとれているのかもしれませんね(笑)」
天才が思う天才の人とは
ーー周りに「この人は天才だな」と感じる人はいますか?
「天才という言葉、僕自身は好きではないんですよね。多くの場合、羨む言い回しで使われるじゃないですか。『あの人は天才だから。自分とは違う』という意味合いが感じられてしまうんです。でも、そうではないんです。天才と呼ばれている人は必ず努力もしていて、ほとんどの人は努力の量で決まると思っていますし、僕自身も努力した結果、今があると思っています。
誰が天才というのでも偉人レベルでもなく、頭の回転が早かったり、『こいつすごいな』と思う人は身の回りにいっぱいいます。自分にはないものを持っているということはもちろん、そう感じる人はみんな『すごいヤツ』だと思っています」
編集後記
「勉強はしなかった」「東大医学部受験は学力をあげるゲーム」など、東大王・頭脳王と呼ばれる一端を垣間見ることはあったが、普段接する一般的な大学生と変わることはなく、真面目な話と笑いを交えながらの取材となった。
KIDSNA編集部