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「世界が広がるガチ勢とのつながり」は、好きの追求から【後編】
家族の日々を綴った、楽しく癒されるSNS投稿が人気のなみそさんが、小学2年生クリエイターNEKO KENこと、KENさんとともにリモートでのインタビューに応じてくださいました。
お子さんの「好きなこと」を全肯定し、長男は小学生にしてクリエイターデビューを果たしている、フォロワー11万人超の3児の母、なみそさん。
後編では、なみそさんのSNS活用法や、子どもたちが「好き」を追うための環境について伺います。
「好き」がつなぐ人との縁が新しい力になる
――小学2年でクリエイターデビューした長男KENさんをはじめ、同じく切り絵をやっているお姉ちゃん、扇風機が大好きな弟さんと、お子さん3人は「好き」を追究しています。なみそさんのTwitterでは、末っ子の「扇風機大好き坊ちゃん」がメーカーの山善さんからプレゼントされていたりと、SNSによってお子さんの「好き」の輪が広がっているように感じます。
メーカーさんとの出会いが生まれたのは、末っ子が、七夕に山善さんの扇風機がほしいと祈ったことがきっかけでした。
その後、投稿を見た山善さんから直接扇風機が届き、ものすごく喜んでいました。自宅の近くにも、山善さんの福岡支社があるんですよ。だからその前を通るたびに喜んでいます。
――その道のプロや専門家と出会い、つながることで、子どもの「好き」が広がったり深まったりすることも、SNSの魅力のひとつだったのですね。
不思議と「ガチ勢」が集まるんですよね。私はもともとラジオが趣味で、同じ趣味の人たちとTwitterでつながっているんです。私より10~15歳くらい年上の方が多いんですが、専門職をされていることが多くて。
段ボール工場だったり、八百屋さんだったり。自転車屋さん、電気屋さん、大工をされている方などもいて……そういうプロフェッショナルの方々とのつながりから、子どもたちの好きなものに声をかけてくださる機会につながっています。
たとえば、ラジオ関係で知り合った10年来の友人が自宅にキャットタワーを作ってくれたことがありました。LEDで7色に光って、床部分が透明になっている特注品です。
彼は電気屋さんと大工さんをしているので、キャットタワーを作りながら、ずっと子どもたちの前で、こういう風に作るんだよ、と見せてくれました。
コンセントを付けるときも「この壁をこう切って、中の配線をこう出して……」と教えてくれたのですが、末っ子がすごく食いついていましたね。
コンセントの白いカバーの外し方も全部習っていたから、つい先日も「お母さん、見てー!コンセントのカバー、外したけん!」と見せてくれて、私が「外さんでー!」と慌てることが(笑)。しっかり覚えているんですよね。
本気で好きなことに、リミットは設けない
――なみそさんのSNSによって、お子さんの活動が広がっていることについてお話をおうかがいしてきましたが、お子さん自身のネットの使い方についてはどうされていますか?
今はまだ子どもたちが小さくてSNSの使い方も分からないので、もう少し大きくなったら管理しながらスタートかなと思っています。
ネットの世界には、良い面もあれば、悪い面もあるじゃないですか。メーカーさんやプロフェッショナルの方々とつながれる良いこともあれば、子どもを利用したり、危ない目に遭わせる人とつながってしまう悪いこともあるかもしれない。
だけど今の時代、特にコロナ禍では、外に出ることがなかなかできない分、私の周りも、SNSをよく見ていると感じます。だから子どもたちの作品の発表は私が代わりにSNSに投稿して、反応があったらすばやくレスポンスして、流れをどんどん作っていくようにして。
効果的に、たくさんの人に見てもらえているよ、ということが子どもたちのモチベーションにもつながっていけば。私のアカウントで今バズっているツイートがあるのですが、お姉ちゃんが学級閉鎖で休みになり「切り絵をしようかな」と言っていたので、「よっしゃ、今が見てもらうチャンスや!やったろやったろ!」と背中を押して、朝から切り絵を作っていました。
――ゲームや漫画は、制限をもうけていますか?
制限はしてません。Youtubeも、1時間までにしようかという話が出たことはありましたが……扇風機が大好きな末っ子が、ずっとYouTubeで扇風機かエアコンか換気扇の動画ばっかり観ているんです。そういう動画が9割くらいなのですが、すごい知識量になっているんですよね。
YouTubeで観たガチの商品説明とか、こういう風にすると扇風機は発火しますとか、こういう使い方は危ないとか……それを、動画を通して知ることが多いようです。
ずっとアニメばっかり観ているなら時間制限しようかと考えなくもないですが、自分が興味のあるものだったらいいかな、と思っているので、そのあたりは制限なしで見せています。
あとは、KENの切り絵のテーマが、習い事や、やっているアニメ、読んでる漫画など、そのとき興味があることにかなり影響されています。
1年くらい前、流行のアニメに出てきたからか、KENが「藤の花が見たい」と言い出して。近所の公園に藤棚があったので実際に見に行き、観察して、それが切り絵に生きたこともありましたね。
そうやって好きなものから派生して、毎回お題がいろいろ変わって。テーマは“その時好きなもの”という感じですね。ゲームや漫画、YouTubeなど、いろいろなものが関係しています。
KENの今のブームは、好きな芸能人の方を私の名前でもじった「なみそデラックス」です(笑)
※カワチ画材さんが、取材中にKENさんの描いたなみそさんの似顔絵「なみそデラックス」をマグカップにしてくださいました。3名様にプレゼントいたします。記事最後の応募フォームよりご応募ください。当選はメールのご連絡をもってお知らせさせていただきます。
子どもの好きなものを、親も好きになる
――子どもの「好き」を追究してもらおうと思うと、家の中の環境設定も大事になると思います。扇風機や切り絵の画材、作品も、家の中でかなりのスペースを占めることになるかと思いますが、どうされているのでしょうか。
もうリミッター壊れてますね(笑)。
扇風機を増やすにあたって、夫から「これ以上増やすと困る」と言われたことが何回かあったので、扇風機を1台増やす分、ソファーを処分する、クッションを無くす、たんすを2階に移動するなど……他のものを断捨離するんですよ。
私が個人的に好きなものは全然飾らず、全部子どもの好きなものだけを飾っています。
――家の中が子どもの物でいっぱいになることで、ご自身やパートナーの方の趣味や物が置けなくなる……といったことにはどう対応されてますか?
子どもが好きなことを追求していく中で、それを応援している私自身も、子どもが好きなものを全部、好きになっていくんです。
だから、「場所がなければ作ればいい」という精神でいますね。邪魔と感じるのは乱雑に置くからであって、インテリアってことにしよう、かわいく並べればそれっぽく見えるよ、と。歩くときに邪魔なら、その都度どけたらええやん、と言っています。
扇風機が大好きな末っ子は、ずらっと並べた扇風機を見ながら、ずっと扇風機の話ばかりしてきます。「この扇風機はここが可愛い」「ここの部分がいい、ここの材料はいい材料使っとうけんね!」と(笑)。
彼が扇風機にそれだけの熱意があるから、私もそれを止めようという発想にならないんですよね。
私も極端なことが好きなので、「やるんだったらとことんやってしまいな!みんながウェー!って言うくらい、何でも大げさにやればいいよ」と言っています。
――3人のお子さんはそれぞれ、熱中していることに挫折したり、一度好きなものを離れたりということはあるのでしょうか。
好きなことに対して、やめたいと聞いたことはないですね。あとは、人からやりなさいと言われると嫌になるじゃないですか。
だから、声をかけるタイミングは大事にしています。切り絵も、しないときは1~2週間くらい全然しないんですよ。でも自分からやりはじめるときは、すごい集中力で毎日のようにやることもあります。最近は1週間に1回くらいですが、集中力がすごいんです。
やりたいと言うならやってもいい、でもそのかわり、途中でやめないでという姿勢で見守っています。
「本気でやるなら、道具もガチなものを揃えてあげるよ。もしペンで絵を描きたいなら、コピック全色、揃えてやらあ!」と、何もかも全力で応援する。
でも誰よりも楽しみながら、絶対にやり通すくらいの勢いで、誰かにちょっとくらい変とか言われてもそんなんいいって流して、自分らしくカツガツやって欲しい。
軽い気持ちだったらやめとこうか、と言いますけど、本気そうだな、と思ったら熱が冷めない内に今すぐ!という調子で行動しますね。
「好き」はいつか必ず役に立つ
――これからお子さんたちにはどのように育ってほしいか、お気持ちを伺えますでしょうか。
もうこのまんまでいってほしいですね。これから大きくなるにつれ、周りからいろいろな矯正がいっぱい入ると思うんです。「猫だったら白とか茶色を使うのが普通」というように、自由な色を使うとちょっと変わってるだとか、子どもっぽいとか言われることもあるかもしれない。
でも、「人と違う」「普通と違う」ことを楽しんでほしいと思います。いい学校、いい会社に入ってほしい、などとは全然思っていなくて、テストや成績も、そこそこでいいんです。
そのかわり、たとえばイラストを描くのが誰よりも好き、みたいな気持ちを持っていてくれればいい。
”上手”じゃなくていいんです。絶対これだけはブレないっていう気持ちがあればいいな、と思っています。
――今お子さんたちが「好きなこと」が、将来、たとえ仕事と結びつかなくても良いと思われますか。
私は大学で、プロダクトデザインという、パソコンや机などをデザインする学部で4年間学んでいましたが、卒業後、そういう職種には就きませんでした。高校から大学にかけてデッサンも習っていたんですが、これも今の職業とは関係ありません。
でも結果的に、それから何十年経って、子どもが生まれてから、そのとき習ったことがすごく役に立っているんですよ。
コピックの使い方や色彩学など、当時習ったことが、色の組み合わせのおもしろさを伝える手段など、子育ての中で生きているんです。
そういうことが全部ぎゅっと合わさって、今、みんな開花したという実感があります。
両親からも、「お前はどういう大人になるかわからんな」と言われて来たんですけど、今では、「大器晩成やね、これまでやってきて良かったね」と言われるようになって。
だから、仕事としては結びつかなくても、好きなことはいずれどこかで、必ず役に立つと思っています。
――「好きなこと」は、いつか必ず自分を支えてくれるのですね。ありがとうございました。
<取材・執筆>KIDSNA編集部 <写真提供>なみそ
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