おたふく風邪の前兆と症状は?登園許可の目安とホームケア方法

おたふく風邪の前兆と症状は?登園許可の目安とホームケア方法

2021.03.26

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金髙太一

金髙太一

おひさまクリニック院長/日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科医会 地域総合小児医療認定医/日本アレルギー学会/日本感染症学会

おひさまクリニック院長。小児科専門医、地域総合小児医療認定医。小児の感染症、アレルギー、免疫・膠原病を中心に東京、横浜の病院で研修・診療の経験を積み、2015年に東京の十条にておひさまクリニック(小児科、耳鼻咽喉科)を開院。子どもたちが健やかに成長していくためのサポートをしたいと思っております。また、3児の父でもあるので、子どもに関することでしたら、お気軽にご相談ください。

保育園や幼稚園で冬場に集団流行しやすい病気のひとつ「おたふく風邪」は就学前の子どもがかかりやすい病気のひとつ。今回はおたふく風邪の流行時期や症状、そしてワクチンの重要性とホームケアや登園許可、予防法などについてご紹介します。

保育園や幼稚園で初冬から春にかけて集団流行しやすい病気のひとつ「おたふく風邪」。日本ではまだワクチンは任意接種ですが、難聴などを引き起こす可能性もあり、ワクチン接種で防ぎたい病気のひとつです。

おたふく風邪とはどんな病気?

おたふく風邪はムンプスウイルスにより起きる病気で、「流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)」ともよばれます。

乳児がかかることはまれで、主に3歳〜6歳の子どもが発症することが多く、一度かかると二度とかからないといわれています。

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iStock.com/nzfhatipoglu

潜伏期間や感染経路

おたふく風邪の原因であるムンプスウイルスの潜伏期間は長く、12日〜25日ともいわれています。ムンプスウイルスは飛沫感染や接触感染により感染します。

感染してから発症まで期間があくため、いつどこで感染したか分かりにくく保育園や幼稚園などで集団感染してしまうこともあるようです。


流行時期

おたふく風邪は主に冬から春にかけて流行ります。その時期に保育園や幼稚園などで流行のお知らせが出たら、自分の子どもに初期症状や前兆が現れないか注意して様子をみましょう。

おたふく風邪の前兆と症状

おたふく風邪にかかりやすい3歳~6歳の子どもは初期症状があっても、的確な言葉で表現するのは難しいもの。

地域や通園している保育園や幼稚園でおたふく風邪が流行っているときは、子どもに以下のような兆候がないか注意しましょう。

初期症状

おたふく風邪にかかると耳下腺が腫れ、発熱することが知られていますが、まれに耳下腺に腫れがみられる前に、


  • 全身のだるさ
  • 頭痛
  • 食欲不振

などの症状がみられることも。その後、首の痛みなどを訴えるようです。


耳下腺の腫れ

おたふく風邪の特徴ともいえる耳下腺の腫れですが、誰しもが両方のほほや首がパンパンに腫れる、というわけではなく、片方だけ腫れるケースもあるようです。

とくに就学前の子どもや乳児の場合、おたふく風邪にかかっても症状が出ない不顕性感染であったり、乳幼児はもともと首や顔の輪郭がぷっくりしていることが多いことから腫れに気づけない、というケースもあります。


発熱

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おたふく風邪の発熱は一般的に37~38℃台が多いようです。熱の症状は3~4日続くといわれていますが、なかには発症初日で熱が下がる子どもや熱が全く出ないという子どももいるようです。

おたふく風邪は、必ずしもわかりやすく発症するわけではありませんが、このような異常をいち早くキャッチすることで、保育園や幼稚園など集団保育の場の集団感染を防ぐことができます。

難聴や卵巣炎など合併症に注意

おたふく風邪でもっとも注意すべきなのは、難聴などの合併症を引き起こす可能性があることです。


おたふく風邪による合併症の種類

おたふく風邪による合併症とその割合は以下のとおりです。


  • 無菌性髄膜炎 1~10%
  • 脳炎 0.02~0.3%
  • 難聴 0.1~0.25%
  • 膵炎 4%

髄膜炎は高熱や嘔吐などが1、2週間程度続きますが、安静にして鎮痛剤などを使用していれば自然治癒することが多く、予後は良好です。

一方、脳炎の致死率は1.4%で、難聴に次いで予後の悪い合併症といえるでしょう。

おたふく風邪による難聴の発生率は、以前は15000人に1人といわれていましたが、最近のデータでは1000人に1人というデータもあります。

難聴の治療法はなく、自然に治る可能性も低いため、罹患しないための予防が重要です。

また、思春期以降におたふく風邪になった場合、以下のような合併症を引き起こす可能性があります。


  • 精巣炎(こうがんえん)20~40% ※思春期以降
  • 卵巣炎(らんそうえん)5% ※思春期以降

精巣炎は精子の数が減ることで、不妊症の原因となる可能性もあるため注意が必要です。

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iStock.com/kuppa_rock

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おたふく風邪の登園許可

おたふく風邪は、保育園や幼稚園などに通う子どもがとくにかかりやすい病気です。感染力が強いため、発症すると登園禁止期間が設けられています。

おたふく風邪にかかったときの登園許可については、厚生労働省が定める保育所における感染症対策ガイドラインに以下のように記されています。

「耳下腺、顎下腺、舌下腺の腫脹が発現してから5日を経過する まで、かつ全身状態が良好になるまで」

登園停止期間が少し長く感じるかもしれませんが、集団流行しやすい病気なので、子どもがおたふく風邪にかかったときはしっかり休ませましょう。
また再登園の際には医師による登園許可証への署名が必要となります。

P79 医師による意見書が望ましい感染症/2018年度 感染症対策ガイドライン /厚生労働省

おたふく風邪の予防には予防接種が効果的

おたふく風邪の予防接種は1歳過ぎると接種可能で、確実に免疫をつけるため数年あけて2回の接種が推奨されています。

WHOは、おたふく風邪と水痘(みずぼうそう)ワクチンの無料化を推進するよう勧告していますのでほとんどの先進国で定期接種になっていますが、現在、日本は定期接種をおこなっていません。


定期接種国では99%発症を予防

おたふく風邪による後遺症はワクチンにより防ぐことができます。世界の例を見ると、ムンプスウイルスを含むワクチンを 

1 回定期接種している国では88%

2 回定期接種している国では99%

という高い数字でおたふく風邪の発症者数が減少しています。

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iStock.com/Prostock-Studio

日本では2年間で300人に難聴の後遺症が発症

一方、日本は予防接種率が30-40%と低迷し、近年では2015~2016年にかけておたふく風邪が流行したことで、分かっているだけでも2年間で

348人が難聴
300人近くの方に後遺症(両耳難聴は16例)

が残っていることが分かっています。

もちろん、予防接種をしてもおたふく風邪にかかる場合もありますが、重症化を防ぐためにも接種は必要です。

おたふく風邪はウイルス性の感染症なので、流行時はうがい、手洗い、マスクの着用を行うことも大切。

また、栄養バランスの取れた食事、充分な睡眠や休息を家庭で心がけ、子どもだけでなく、パパやママも免疫力を高めましょう。

子どものおたふく風邪のホームケア方法

こまめな水分補給

小さい子どもだと喉や耳の痛みを嫌がりなかなか飲まないということもあるかと思いますが、スプーンやスポイトなどを使い少量をこまめに上げるとよいでしょう。


のど越しのよいもの

食事はスープやうどん、おかゆ。おやつはゼリーやアイス、プリンなど子どもが好むのど越しのよいもの選ぶとよいかもしれません。

のど越しのよい食事やおやつの多くは充分な水分も含まれています。水分補給が進まない、というときにもおすすめです。


熱で元気がない時はお風呂はNG

入浴は体力を消耗するもの。発熱して元気がないときはお風呂はやめましょう。さっぱりさせたいときは、蒸しタオルなどで身体を拭いてあげてください。


腫れを冷やす

子どもが耳下腺や顎下腺などを痛がるときや、熱が高いときはタオルで包んだ保冷剤で冷やすのがよいでしょう。解熱鎮痛剤もつらいときは併用しましょう。

集団感染しやすいおたふく風邪は家族みんなで予防して

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iStock.com/Evgen_Prozhyrko

おたふく風邪は、ムンプスウイルスが体内に入ることで感染する病気で、主に3歳~6歳の子どもに流行します。症状が現れるまでのウイルスの潜伏期間が長いことが特徴のひとつです。

おたふく風邪の主な症状に耳下腺の腫れや痛み、発熱がありますが、まれに熱がない、腫れが少ないなど、特徴的な症状が出ず、おたふく風邪と診断がつかない場合も。

ムンプスウイルスの潜伏期間の長さ、感染力の強さと合わせて、保育園や幼稚園での集団感染を広げる原因となっています。

おたふく風邪の流行時期には子どもの様子に変わったところがないか注意して様子を見ましょう。また、おたふく風邪にかかったことがない、という大人がおたふく風邪の子どもを看病する際には、ムンプスウイルスに感染しないよう注意が必要です。

大人がおたふく風邪にかかると子どもより重症化しやすく、入院となるケースも珍しくありません。

子ども時代におたふく風邪になっていない方は、お子さんと一緒に予防接種を検討してみてはいかがでしょうか。


監修:金高太一(おひさまクリニック)

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金髙太一

金髙太一

おひさまクリニック院長。小児科専門医、地域総合小児医療認定医。小児の感染症、アレルギー、免疫・膠原病を中心に東京、横浜の病院で研修・診療の経験を積み、2015年に東京の十条にておひさまクリニック(小児科、耳鼻咽喉科)を開院。子どもたちが健やかに成長していくためのサポートをしたいと思っております。また、3児の父でもあるので、子どもに関することでしたら、お気軽にご相談ください。

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