厚切りジェイソン流・子どもへの「お金教育」の極意

厚切りジェイソン流・子どもへの「お金教育」の極意

30代半ばにしてFIREを達成した厚切りジェイソンさん。3姉妹のパパであるジェイソンさんは、お金に対してどんな価値観を持っているのでしょうか。おこづかいの渡し方や、節約に対する考え方、ジェイソン家の金融教育について聞きました。

「子どもが買い物をするときは『本当に自分にとって価値があるものか』を聞く」

「ベルトコンベアに乗っているような人生で、満足?僕はそうでない人間でありたい」

そう語るのは、「支出を減らして、残りのお金を投資に回して待つ」というシンプルな投資法を行っているという厚切りジェイソン。約2年前に家族が一生安心して生活できるお金を投資の利益だけで得ることができるようになり、「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」を達成しています。

お金教育によってマネーリテラシーを身に着ける前に、「みんなのお金の使い方に疑問」があるというジェイソンさんに、話を聞きました。

厚切りジェイソン(あつぎり・じぇいそん)/1986年アメリカ ミシガン州生まれ。17歳でミシガン州立大学に飛び級で入学。卒業後、イリノイ大学大学院に進み、エンジニアリング学部コンピューターサイエンス学科修士過程修了。現在もIT企業の役員も務めている。NHK「えいごであそぼ with Orton」にレギュラー出演するほか、情報番組でコメンテーターを務め、ドラマや映画に出演するなど幅広く活動している。著書に『ジェイソン流お金の増やし方』(ぴあ株式会社)など。
厚切りジェイソン(あつぎり・じぇいそん)/1986年アメリカ ミシガン州生まれ。17歳でミシガン州立大学に飛び級で入学。卒業後、イリノイ大学大学院に進み、エンジニアリング学部コンピューターサイエンス学科修士過程修了。現在もIT企業の役員も務めている。NHK「えいごであそぼ with Orton」にレギュラー出演するほか、情報番組でコメンテーターを務め、ドラマや映画に出演するなど幅広く活動している。著書に『ジェイソン流お金の増やし方』(ぴあ株式会社)など。

みんな「節約」を誤解している

――ジェイソンさんは約2年前にFIREを達成されたとのことですが、FIREを達成するためには、多額な貯蓄が必要なイメージがあります。

FIREというと贅沢な暮らしぶりを想像するかもしれませんが、そんなことはなく、5人家族の一般的な支出と同じくらいの生活費で暮らしています。

FIREというのは、資産運用で得られる不労所得で生活費をまかなえることであって、大金持ちになることではないんですよ。だから収入が高い人でなくても、できるだけ支出を抑えて、残りを資産運用に回せば可能なんです。

そのときに大切なことは、投資額をどれだけ増やせるかということ。だから僕の投資法の最初のステップは、「日々の支出を抑える」ということなんです。

僕は節約家だと言われることも多いし、もはや趣味のようなものだと思っていますが、多くの人が「節約」の意味を勘違いしていると思う。

※写真はイメージ(iStock.com/bogdankosanovic)
※写真はイメージ(iStock.com/bogdankosanovic)

――節約の意味を勘違い……生活にかかるお金を切り詰めて使う、というわけではないということでしょうか。

「節約は我慢をすること」という認識を持っている人が多いと思いますが、僕からするとそうじゃなくて、節約とは意識を持って正しくお金を使うこと

だから子どもたちにも、日常生活のなかで「お金の使い方」についてきちんと考えて使ってもらうようにしています。

たとえば、子どもたちがおもちゃやゲームソフトなどを買うときに、「本当に自分にとって価値があるのか?、他の人が持っているという理由だけで買いたいのではないか?、いくらかかるのか?、費用対効果が合っているのか?」という話をしっかりする。

そのうえで、本当に欲しいのであれば、複数の店舗を周ったり、インターネットで安く買える方法を調べたり、セールになるのを待ったりと「一番よい買い方は何だろう?」と子どもといっしょに確かめる。

本当に自分にとって価値があるものかを見極め、最適な状況で買うことが大切なんです。

※写真はイメージ(iStock.com/Vasyl Dolmatov)
※写真はイメージ(iStock.com/Vasyl Dolmatov)

ほかにも、家族で焼肉を食べたいとき、僕は妻とこんなふうに考えます。

焼肉の食べ放題がひとり5,000円だとしたら、ふたり合わせて10,000円。スーパーで10,000円分使ったとしたら、どれだけ高級な肉が買えるだろう? 家では時間を気にせず自分のペースで食事を楽しむことができる。

このように、さまざまな選択肢を調べて考えながらお金を使うことが僕にとっての節約術。支出を抑える方が、新たに所得を生み出したり収入を増やすよりも簡単だしね。

子どもに伝えたい投資感覚は「複利」

――支出を抑えるための本質的な節約をされているジェイソンさんは、お子さんのおこづかいについてはどのように考えられていますか?

長女が小学校に入ったタイミングでおこづかい帳をつけはじめました。支出を見直すときにまず最初にすべきは可視化すること。

子どもたちにはおこづかいを通して、投資感覚や複利の仕組みをを理解してほしい。だから、基本的に年末に子どもが持っているお金を預かり、それに対する利子10%だけを子どもに渡しています

※写真はイメージ(iStock.com/simarik)
※写真はイメージ(iStock.com/simarik)

たとえば、子どもが10,000円持っていたとしたら、1年後に10%の利子をつけると11,000円になる。この1,000円は元金の10,000円に対してついた利子です。

この1,000円も含めた11,000円を使わずに、もう1年経つと、12,000円になるのではなく、12,100円になります。この100円は利子の1,000円についた利子。

つまり、利子にもまた利子がつくことを「複利」といいます。

この制度だと、子どもがゲームを買いたいときに、「年末にもらえる利子が減るけれど、それでも欲しい?」という会話ができますよね。これは実際の投資感覚と近いものがある。

おこづかいを毎月渡して、欲しいものをどんどん買って生活水準を上げるのではなくて、自分が本当に欲しいかどうかを子どもには見極めて使ってほしい。

お金を使うということは、どういった犠牲があるのか。Opportunity Cost(機会費用)、つまりお金を投資に回さなかったことで失われた価値まで考えると、どれほど高価なものなのか。おこづかいがそのことを考えるきっかけになればいいと思っています。

※写真はイメージ(iStock.com/fizkes)
※写真はイメージ(iStock.com/fizkes)

よく誤解されるのですが、アメリカも金融教育が完ぺきな国ではありません。僕がマネーリテラシーを身に付けたのは生まれ育った家庭でした。

日本でも英語やプログラミングなども必修科目になっているものの、実際に学校で行なわれている内容を見ると、十分な学習内容とは思えません。金融リテラシーについても同じで、学校教育で十分だとは思えない。

投資などの経験がない先生にすべてを求めるよりも、最低限のスキルを家庭内で教えてあげないと。日本の人々は学校に任せすぎているよ!家庭内での補足が不可欠です。

こちらの記事も読まれています

みんな、なぜ贅沢をしたいの?

――ジェイソンさんから見ると、人々のお金の使い方や、それに対する価値観で疑問に思うことはありますか。

いろいろな人のお金の使い方を見ていると、本当に欲しいものを手にしているというよりは、自分の収入レベルに合ったものが欲しいからなんとなく買っているようにも見えます。

「自分にとって本当に価値あるものを見極めることが節約」だと思っている僕からすると、なぜ贅沢をしたいのか分からない!

僕は今の人生に満足しているから、これ以上使っても仕方がないでしょ?

多くの人が、できるだけたくさんのお金を使う人生がいいと思っていたり、所得が増えたら、お金はある分だけすべて使ってしまおうと思っているようだけど、「僕はそうしない」というと、「えっ!お金を持っているのになぜ使わないのですか?」と聞かれる……これはまったく理解ができません。

※写真はイメージ(iStock.com/YakobchukOlena)
※写真はイメージ(iStock.com/YakobchukOlena)

まず最初に、どういう人生を生きたいかライフプランを決め、それを逆算して、いくら稼ぎ、いくら資産を持たなければならないのかが決まってくる。本来はそういう順番であるべきだと思うんです。

お金があれば選択肢と自由が増えますが、お金が目的になったら逆に、自由が減るんですよ。

稼いだ分をすべて使っていたらキリがないし、結局満足できないものですから、お金の虜にならないようにすることが大切だと思います。

矛盾するけど、僕の話を鵜呑みにしないで

――収入に合わせて生活水準を上げたり贅沢するのではなく、自分がどういう人生を生きたいかという将来像から逆算して本質的にお金を使う……。ジェイソンさんの芯の強さ、とても参考になります。

これはお金の使い方だけの話ではなくて、「自分はどうしたいのか」を考えたことのない人が世の中には多いと思ってるんですよ。

周りに合わせて大学に入ったとか、結婚した方がいいと言われたから結婚したとか、「誰かに言われたから」「どう思われたいか」という基準で決める人々……。

何も考えないで、何も感じないで、毎日ベルトコンベアに乗っているような人生の方が多いと感じます。僕はそうではない人間でありたいし、僕の周りの人たちにもそうではない人間であってほしい。

自分で考えて、自分から物事を決められなければ、そもそも生きる意味はあるのでしょうか? 誰かに言われたとおりの人生は、本当に自分の人生を生きているといえるのでしょうか? それで満足といえますか?

僕はなりたいものややりたいことを見つけたら、どうしたらそうなれるのかを考え、計画を作り実行してきました。

自分で考えて実行する力は、人生の豊かさにもつながりますから。

※写真はイメージ(iStock.com/fizkes)
※写真はイメージ(iStock.com/fizkes)

僕がこの考えに至ったのも、誰かに言われたからではなく、自分なりに調べて実践し、結果を分析してきたから。

矛盾する話ですが、僕がこう言ったからといって、「ジェイソンの言う通りにします!」というふうになってほしくはない。本に書いてあることやメディアで言われていることなど、結果だけを鵜呑みにしただけでは、考えていないことから解放されていないんですよね。

だからこそ、人間の一番大事なスキルは考えること。そして考えることが最大のハードルだからこそ、みなさんにすぐにやってほしいことです。

まずは、自分はどういう人生を生きたくて、そのためにどうやって稼いで、どうやって資産を生み出すのか。日々考えて、動き出してみてください。

それを習慣化してやり続ければ、自分の幸せや豊かさにとって一石二鳥どころか、一石百鳥くらいはいけますよ!


<取材・執筆>KIDSNA編集部

 
 

ジェイソン流お金の増やし方

厚切りジェイソン著

1,430円(税込)ぴあ株式会社

2022年01月21日


広告の後におすすめ記事が続きます


取材レポートカテゴリの記事

ショート動画

教育を親の自己満足にしてはいけない。教育虐待になりうるハイパーペアレンティングの恐ろしさとは

教育熱心はどこまで?

この連載を見る

不安定な社会情勢やSNSなどを通じて得る過剰な教育情報によって、子どもの教育に奔走し、過干渉な子育てをする親が増加しています。行き過ぎた「教育熱心」が及ぼす危険性とは?そして子どもを疲弊させないために、親がどうあるべきか、各専門家に取材しました。
てぃ先生が見守る!卒園生たちの”チャレンジダンスプロジェクト”

入園当初にコロナ禍となりリアルイベントが少なかった園児たちが、卒園を迎えるシーズンとなりました。園児たちのかけがえのない思い出を作りたいという想いから、”チャレンジダンスプロジェクト”が始動。子どもたちが「卒園ダンス」に取り組む様子から、てぃ先生に子どもの成長を促進するコミュニケーションを教えていただきます。コナミスポーツクラブの全面協力のもと、ダンス未経験の園児たちが一生懸命取り組み、イベント当日を目指す様子を密着取材しました。