【天才の育て方】緒方湊~最年少10歳でプロになった野菜ソムリエ

【天才の育て方】緒方湊~最年少10歳でプロになった野菜ソムリエ

KIDSNA編集部の連載企画『天才の育て方』。 #15は最年少の10歳で「野菜ソムリエプロ」に合格し、メディア出演やセミナーなどで野菜の魅力を広めながら、自宅の菜園で伝統野菜づくりにも取り組む緒方湊さんにインタビュー。なぜ「野菜」に着目し、プロと呼ばれるまでに至ったのか。その背景を紐解いていく。

<連載企画>天才の育て方
「興味を持ったことは日本中どこへでも見に行く」
「趣味でも勉強でも、今の自分にできることをとことん進める」
「プロとして伝えることには子どもでも責任が伴う。エビデンスの確認は徹底する」

こう語るのは、「野菜ソムリエプロ」の資格を持ち、野菜の魅力を伝える活動を行っている緒方湊さん(以下、湊さん)。

現在12歳の彼が、野菜ソムリエプロの資格を取得したのは10歳のとき。

栄養や生産、流通や鮮度管理についてはもちろん、マーケティングやセルフプロデュースも学ばねばならず、試験ではプレゼンテーションや面接もあるという狭き門を最年少で突破した。
またメディアにも多数出演し、「超逆境クイズバトル!! 99人の壁」では東大生99人を破り当時、史上最年少V2の快挙を達成。

今回は父親である智さんにもご同席いただき、彼の才能が育まれたルーツに迫った。

制限のない環境が「好き」の探求を可能に

――野菜という身近なものに興味を持ち、追及するようになった最初のきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

湊さん:原点は「おいしいものを食べたい」という単純な欲求です。
もともと食材の種類に関わらず食べることが大好きで、野菜も最初は食べて楽しんでいただけだったのですが、あるとき親に野菜の図鑑を買ってもらったんです。

それを見ながら「こんなに種類があるんだ」「これ食べたい」といった風にどんどん野菜のいろいろなことに興味を持っていって、自分で調べたりするようになりました。

――野菜を自分で育ててみたいという気持ちもそのつながりで出てきたのですか?

湊さん:そうですね。野菜を育て始める前は、フルーツ狩りや収穫体験に行かない限り、実際に買って手にすることができるのは野菜の食べられる部分だけでした。
ナスを収穫する2歳の湊さん(提供:お父さん)
ナスを収穫する2歳の湊さん(提供:お父さん)
湊さん:どのような種や苗から育ち、どのような葉や花をつけるのかということまで実際に触れて知るには、自分で育てるしかない。そう思い小学校1年生のときに貸し農園で野菜づくりを始めました。

「MINATO FARM」と名づけた家庭菜園を始めたのは小学校6年生のとき。MINATO FARMでは伝統野菜とよばれる、日本各地で古くから栽培されてきた品種の野菜を中心に育てています。

MINATO FARMはもとは普通の庭だったので、畑づくりは芝生を切ってはがすところから始めました。
家庭菜園造成中の様子
家庭菜園造成中の様子(提供:お父さん)
湊さん:もちろん僕ひとりではできないので父といっしょに作ったのですが、父は普通の乗用車で出かけたと思ったら、4トントラックいっぱいにどーんと土を積んで帰ってきて。あれは驚きましたね(笑)。

父:僕の役目は、湊がカットした芝生を剥いで捨てることと、土の搬入。途中、芝生の下から建築ゴミが出てきたりといろいろ大変でしたが、畑自体は2日間くらいで完成しました。

湊さん:これまでに興味を持った対象は野菜だけでなく、魚や歴史などさまざまなことについて情報を調べたり検定を受けたりしていますが、野菜がその中でも特別な理由は、やはり自分の畑で育てたり毎日味わったり、日常の中で密に関わりやすいものだからだと思います。
――お父さんが湊さんの「好き」を追及するためにいつも行動されているのはなぜなのでしょうか?

父:湊は3月29日生まれなので、学年の中では誕生日がほぼ一番最後になる。4月生まれの子と成長を比べると、同じ学年なのに1年近くの差があるわけです。

だから走ることや勉強に関しては周囲に後れをとることもあるだろう、だったら好きなことをさせた方がいいのでは?ということを、小さい頃から妻と話していました。

食べることが好きだとわかった時期には「それなら食べ物を収穫しに行ってみる?」と提案したら、「行きたい」と喜んだので、観光農園にいっしょに行って収穫体験をしました。

魚に興味を持ったときは「日本中の水族館を見に行こうか」と話して旅をして、そこから「釣りに行きたい」というようになったので、宮古島で船釣りをしたり。

電車が好きだったときは北海道から九州まで電車を見に行って、城に興味を持ったときもいろいろな場所に行きましたね。
――ご家族でとてもアクティブに行動されているのですね。

父:僕と妻は、湊が興味を持ったことに関してはなるべく制限せず、好奇心を発揮できる環境を整えようと思っていました。

もちろん毎回僕自身も湊と同じように興味を持てるわけではないので、船釣りのときは妻に任せて、僕だけ陸で待っているなんてこともあります(笑)。

でもいっしょに楽しめることはできるだけ楽しみたいと思っています。

たとえば魚の図鑑の名前の部分だけを隠して、他の情報で何の魚か当てるゲームをやったり、サクランボを何種類かかってきて、目隠しをして味や香りだけで品種を当てたり、そういうことも家族でしています。
湊さん:食べ比べは今も頻繁にやっていますね。

――湊さんはそんなお父さんとお母さんの接し方をどう思っていましたか?

湊さん:5歳くらいで日本全国の電車を見に行ったときは、うれしかった記憶がありますね。

ただ本当に、僕にとっては興味を持ったことをとことん追及することは当たり前で、サポートしてもらっているというよりもいっしょに楽しんでいる感覚。

「今度はあれがやりたい」と新しい興味の対象を見つけたときに、親と意見が対立したことがないんです。唯一の家族会議は、明日のランチは何を食べるかとか、そのくらい(笑)。
湊さん:何かをやめるときも止められたことはないです。幼稚園の頃にスイミングスクールに行ったのですが、顔に水がかかることが苦手に感じてそれを父に話したら「じゃあやめよう」となって、すぐにやめさせてくれました。

――親としては「もうちょっとやってみたら?」といってしまいそうなシーンですね。

父:湊の人生の中心は湊自身なので、湊がやりたいことをやればいいし、やりたくないことはやらなくていい。

僕たち夫婦は湊に対して何かをさせたいという気持ちは一切なくて、「どうしたらおもしろいか」ということを考えています。

これをやってみたら湊が興味を持つんじゃないかなとか、このポイントはハマるかもしれないと思ったら、そのきっかけをこちらで作ることはあります。それで本人が楽しめたらうれしいし、興味を持たなかったらそれでいい。

人事の仕事をしている関係でいろいろな大人を見てきましたが、「仕事だからやらなきゃいけない」という気持ちでいる人は多い。好きなことを仕事にして、楽しんで働けるということは本当に貴重で、だからこそ湊には「好きなことを見つけなさい」と話していました。
――知識を詰め込むよりも楽しめることが一番大事だと考えているのでしょうか。

父:そうですね。でもプールの件は「水が苦手」で終わらせたくなくて、大きなサイズのプールを買ってきて庭で遊ぶことからやり直しました。

泳ぐ練習をするというよりは水に慣れるため、プールにおもちゃを沈め、シュノーケルを使って宝探しをすることで、「浮く」ということがスムーズに実践でき、本人も水に対して自信をつけたのでその後、泳ぐということに抵抗がなくなりました。

本人は苦手だったことができるようになって達成感を得られたようです。私はそうやって小さな成功体験を積み重ねていけるようにサポートするのが、親の役目ではないかと思っています。

「がんばれよ、やめるなよ」というのではなくて、やめることを肯定してもよいと。

――子どもを否定しない接し方が、親子間の信頼関係や湊さんの自己肯定感を育てたのですね。
プール遊びをする小学1年生の湊さん(提供:お父さん)
プール遊びをする小学1年生の湊さん(提供:お父さん)

野菜嫌いの父への説得が表現力を鍛えた

テレビなどで湊さんが野菜の紹介をしているのを見ると、その細かい描写に驚く。感情を込めながら野菜の特徴や美味しさを伝え、相手に「食べてみたい」と思わせる表現力は、湊さんの大きな武器のひとつだ。

――湊さんの表現力はどのように磨かれたのでしょうか?

湊さん:何か特別な話し方のレクチャーを受けているのかと聞かれることはありますが、そういった経験は一切ないんです。家族の中で普段から似たような会話をよくしているからだと思います。
父:実は僕は野菜や果物が嫌いなんです。触るのもいやなくらい。特に果物はまったくダメ。

だけど湊は自分が好きなものを周囲に知ってほしいから、僕が食べたことのないものでもそのおいしさを言葉にして伝えようとする。

僕も食べないけど質問はします。「梨ってどんな味なの?」「苺って食べるとどんな感じ?」と。

――苺の味を普段お父さんに説明しているように話してみていただけますか?

湊さん:つぶつぶの食感が噛むとプチプチとするけど、そこまで弾けるような感じではなく、ごまのような感じ。外の皮は薄めでほとんどないのと同じ。中の食感はシャキッとしている品種もあるし、やわらかい品種もある。上の方が甘くて下の方が堅め。

甘くていい香りがして……まあ香りくらいは自分で嗅いでみてよ(笑)、というような感じです。
――苺ひとつに対してこんなに表現ができるのですね。本来食べてみればすぐわかってもらえるものが、食べないお父さんを相手に言葉で伝えようとするから、表現力が日々育ってきた。

父:知らない人にものごとを伝えるのって難しいですよね。意図せずそれを家庭で当たり前にやってきたので、知らない相手でもイメージできる伝え方ができるようになったんじゃないかと思います。

――そうして日々野菜の魅力を伝えられたり、湊さんがそばで野菜づくりをしているなかで、お父さんの野菜嫌いに変化はありましたか?

父:変わりましたね。いろいろな野菜を知っていますし、食べられるものも多少増えました。やはり湊や妻が「美味しい」といって食べていると、「そんなにおいしいならちょっとくらい食べてみようかな」となる。

トマトも最近は5mmくらいに薄く切ったら食べれるようになりました。
湊さん:これは父にすれば大きな進歩です。人類が月に行ったくらいの(笑)。

でも食べ物に関して保守的なところは変わらなくて、父は新しいものや変わったものは一切食べないんです。たとえばじゃがいもなら紫色のじゃがいもは食べない。

初めは一生懸命おいしさを説明して勧めたりして、克服してほしいなと思っていましたが、今は「こんな特徴があってこんな風に美味しいんだよ」ということを言葉で共有することだけ続けています。

興味を持ったら挑戦するのが当たり前

野菜ソムリエプロとして活躍し、茨城県の魅力を伝える「いばらき大使」も担う一方で、学業に励んでいる中学1年生である湊さん。野菜の知識の探求と普及を続けながら、学業とのバランスをどのように保っているのだろうか。

湊さん:実はそこはあまり意識したことはなくて、なりゆきに任せています。
湊さん:自分のペースで進められる通信学習を受けているのですが、年長で算数を始めたら、小学校3年生のときには高校1年生の内容まで進むことができました。

算数はそれ以上はもういいかなと思って、今は英語に切り替えて取り組んでいます。小学校5年生のときに英検3級をとって、現在は高校2年生レベルまで進んだので、次は英検2級を受けようと思っています。

やりたいことはとことんやるという部分は、勉強に関しても変わらないです。

――勉強でもご両親はなにかサポートをされているのですか?

父:質問されれば教えますが、基本は本人に任せています。

野菜や魚についても同じですが、湊は好きなことは自分で勝手に伸びるタイプ。学業でも検定でも、楽しいと思えばどんどん学んでいく。

貸し農園のインストラクターの方に勧められて受けた最初の検定が日本農業検定だったのですが、合格したら「楽しいな」と感じたらしくて、「それなら他の検定も受けてみる?」ということで野菜検定に挑戦したら、3級・2級・1級とすんなり合格できたんですね。

あまりに野菜に関することが得意だから、僕も詳しくないのですが「野菜ソムリエという資格もあるらしいよ」と勧めてみたら、それも受けたいと。
夏野菜の収穫をする9歳の湊さん
夏野菜の収穫をする9歳の湊さん(提供:お父さん)
湊さん:野菜ソムリエと野菜ソムリエプロに関しては決められた授業を受けなくてはならなくて、それまでとは少し違い大変な部分もあったのですが、本当に好きなことだから合格するまで続けられたのだと思います。

――もともとの探求心が学業にも野菜ソムリエとしての活動にもプラスに影響しているのですね。

湊さん:そうかもしれません。昔から気になったことは本や図鑑で理解できるまで調べていたので、算数や英語、検定もその延長線上という感じ。

興味を持ったことをもっと知りたい、分かるようになったらうれしい、合格できたら楽しい、というゲーム感覚ですね。

父:小さいころからよく家族でクイズ番組と料理番組を見ていたんですよね。

湊はグルメ番組を見て「食べたい」とか「行きたい」につながったり、クイズ番組をみた後に「テレビで見た〇〇がこの本に載ってた」と言うようになって。僕らも「これ知っている?」と聞いたりして、湊は知らなかったら調べるし、知ってたら「もっと難しいのちょうだい」と。そういうことの繰り返しでしたね。

――10歳で野菜ソムリエプロの資格を得たあとも、知識の探求を続けている湊さん。後編では、野菜ソムリエプロとして活動するなかで重視していることや、湊さんが今後なりたい姿について聞いていきます。

<取材・撮影・執筆> KIDSNA編集部

<連載企画>天才の育て方 バックナンバー

2021年02月03日

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