【言葉がけ】子どもの可能性を広げる話し方

【言葉がけ】子どもの可能性を広げる話し方

KIDSNA編集部が選んだ、子育てや教育に関する話題の最新書籍をご紹介。今回は、『「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない』(SBクリエイティブ)。坪田塾塾長であり、偏差値を飛躍的に上げた実話によってベストセラー作家にもなった著者が、親の言葉がけの重要性を伝えます。

この本の発見ポイント

可能性をつぶす「呪い」

「苦手だね」と言われると、子どもは苦手意識を持ってしまう

たとえば、お子さんが点数の低いテストを持って帰ってきたとしましょう。

点数を見てびっくりした親から、「あなたは本当に算数が苦手だよね」などと言われたら、子どもは「そうだ、自分は算数が苦手なんだ」と思いはじめます。

それが厄介なことに、子どもにとっては「自分は算数が苦手だ」という呪いになり、不思議と、それを証明するように思考したり行動したりするようになります。
親にネガティブな言葉をかけられる子ども
iStock.com/fizkes
一方、同じように低いテスト結果でも、正解できた部分に目を向けて「ここができるようになったね」という反応をすれば、子どもはどう思うでしょうか?

もちろん、自分が認めてもらえたと感じます。そして頑張ったところを認めてもらえると、次はもっと頑張ろうという気になりますよね。

こうして間違えた部分を一緒に確認して、「ここがむずかしかったね」「ここをやり直せば次は大丈夫そうだね」と話せば、「得点できなかったテスト」が宝に変わります。

「算数が苦手ね」と言うのか、「ここはできたね」と言うのか。

それだけの違いで、子どもの自信も次の行動も変わってきます。

子どもは親の反応を本当によく見ています。こうした反応の繰り返しで、子どもの思考・行動は変わっていくのです。
勉強をする子ども
iStock.com/skynesher

可能性を奪う言葉「拮抗禁止令」と「13の禁止令」

親は子どもが生まれた瞬間から、その子に対して様々な制限や禁止を与えています。これ自体は普通のことです。社会の中で生きていくために、幸せに過ごすために、必要なルールや価値観を教えるわけです。これを「拮抗禁止令」あるいは「禁止令」と言います。

乳幼児期に親から無言のうちに与えられる「拮抗禁止令」の中で、特に厄介なものとされるのが次に挙げる5つです。
拮抗禁止令
拮抗禁止令として挙げられている言葉自体は、子どもがこれから先、社会に出て困らないように、幸せに生きていけるように必要なものとして親が伝えているメッセージです。

しかし、過度になると子どもを苦しめることになるのがおわかりでしょう。

また、拮抗禁止令は、これから紹介する「13の禁止令」と結びつくと子どもの思考や行動をさらに縛ることになります。たとえば「他人を喜ばせ、満足させよ」と「存在するな」が結びつくと、「他人を喜ばせ、満足させることができなければ存在するな」という厳しい束縛となります。本当は辛くても、自分の感情は無視して、他人を喜ばせようと必死になってしまうのです。
13の禁止令2

言葉を変えてバージョンアップを

僕は日本の「あいまい」を好む文化や、以心伝心も好きです。真面目だったり職人気質なところがあったり、日本人にはいいところがたくさんあります。

だからこそ、情報化、グローバル化が進む中でバージョンアップしなくてはと思うのです。
以心伝心のカルチャーはありつつも、世界中の人に引けを取らずきちんと自己主張できる、自分で選択して行動できるという文化へのバージョンアップです。

バージョンアップするのに、それほど複雑なことをする必要はありません。子育て、教育の本質的な部分に立ち返り、言葉を変えることです。子どもたちの自己肯定感を下げ判断力を奪う声かけから、可能性をひらく声かけに変えることです。
子どもに声をかける教師
iStock.com/andresr

自分で考える子を育てる言葉

たとえば子どもが「カルピスちょうだい」と言ってきたとします。

「甘い飲み物は禁止。水を飲みなさい」「やだ。カルピスがいい。カルピス、カルピス」「ダメと言ったらダメ。水が一番体にいいの。黙って言うことを聞きなさい」というのが過干渉的なかかわり方だとすると、「はいはい、カルピスね」とすぐにあげるのが過保護でしょうか?

いいえ、これはいずれも本当に要求にこたえているとは言えません。そもそも、その子の要求はカルピスではないかもしれないのです。「カルピスちょうだい」という言葉にはなっているけれど、喉がかわいたことをそう言っているだけかもしれないし、お母さんがスマホばかり見ているから自分のほうを見てほしいときの表現なのかもしれません。

ですから、「カルピスちょうだい」に対するイエス/ノーで答えようとするのではなく「喉がかわいたの?」とか「つまらなかった?」など、その子の言いたいことを探る問いを1つでも入れることが重要です。
疑問符と子ども
iStock.com/ismagilov

自分で判断できない子が育つ

集団行動や規律を大切にすること自体は、悪いことではありません。ただ、「みんながやっている」ことが正しく、常にそれに従わなければならないというのはどう考えてもおかしいですよね。「みんなやっているよ」という声かけを繰り返していると、自分で判断したり選択することよりも、周りに合わせることを良しとする価値観が植えつけられてしまいます。

それなら、「今はこれこれをする時間だよ」とシンプルに伝えたほうがよほどいいでしょう。
子どもに声をかける母親
iStock.com/shapecharge

子どもが不信感を持つ

大人はいろいろな経験や知識があるから、総合的に考えて最善の選択をしようとします。「子どものため」を軸にしながらも、時間、労力、お金、他の兄弟とのバランスや親自身の人生など様々な制約条件の中で最もいい選択は何かを考えるのです。

でも子どもは、そこまで様々な制約条件をわかっているわけではありません。それで「お母さんの都合で言っているだけじゃん」と思ってしまう。

ですから、親は変に見栄を張ったりかっこつけたりすることなく、素直に今の状況や制約について伝えるのがいいと思います。「今すごく疲れていて、新しいことをする元気がないんだよね」「大きな仕事がダメになって、しばらく金銭的に苦しい状況なんだ」などと素直に伝えていいし、弱みを見せるということも大切なのです。そういった制約のある中で、何が最善の選択なのか話し合うといいでしょう。
仕事をする母に話しかける子ども
iStock.com/Ridofranz

アピール上手でグローバルに通用する子を育てる

AI ・グローバル化と、日本人の呪い

今、「新しい時代の子育て」に注目が集まっているようです。

グローバル化が急速に進み、AI・ロボットなどテクノロジーの進歩によって、否応なしに価値観が変わっていくと感じるからでしょう。「これまでのやり方で子育てをしていたらマズイのでは」という不安が出てくるのはよくわかります。実際、教育の現場でも大きな変化が起こりつつあります。真面目に授業を受けて教科書を暗記し、テストで得点できればいいという感覚は、どんどん古いものになるはずです。
ブロックの世界地図
iStock.com/Pogonici
ただし、僕は子育ての本質的な部分は何も変わらないと考えています。時代が激しく変化していくからこそ、本質に立ち返ることが最も重要なのです。

僕が本書で伝えたいのは、一言で言えば「『やめなさい』と制限をかけるのではなく、その子に合った可能性を見せること」です。

日本人はもともと、空気を読むのが得意です。というか、「言葉にしていなくても察する」「雰囲気から感じとる」ことを良しとする文化があり、そのように育てられているのですね。アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールは、日本のようにお互いの意図を察し合うことでなんとなくコミュニケーションがとれてしまう文化を「ハイコンテクスト文化」と呼んでいます(それに対して欧米などあくまで言語によってコミュニケーションを図ろうとする文化をローコンテクスト文化と呼んでいます)。

でもこれは世界のスタンダードではありません。

グローバルという観点で考えると、ハイコンテクスト、つまり共通の価値観や体験、知識などをもとに察し合うということは不可能になります。価値観も体験も知識も違う人同士では、空気を読むことはできません。

ですから本来なら、コンテクストに頼るのではなく、言語や表現力、論理的思考、交渉力などを含めたコミュニケーション能力を重視していきそうなものです。
議論する先生と子どもたち
iStock.com/Kali9
ところが、今の日本では、逆に「空気を読め」「余計なことをするな」「叩かれるようなことはするな」という風潮が強くなっているのです。

グローバルで活躍できるアピール力をつける

「うちの子なんて……」という謙遜は、グローバル化していく社会においてはマイナスにしかなりません。自己肯定感が育まれないのはもちろん、アピール下手になってしまうからです。

ビジネスにおいても、それ以外の人間関係においても、ますますアピールすることは重要になります。この傾向は、受験業界でも顕著です。大学受験で、小論文はとても増えています。

仮想敵を作って、「なるほどこういう考えもあるが、私はこう考える。私の考えのほうがこういう点で優れている」と伝えるのです。

こうやって自分の意見、アイデアをしっかりアピールするのに、謙遜は必要ありません。「自分は全然ダメなんです、あなたのほうが素晴らしい」と言っていたら、国際社会の中では誰も相手にしてくれません。

いつまでもアピール下手のままでは本当にもったいないし、これからの世界で活躍できなくなってしまう。子どもたちには、しっかりアピール力をつけていってほしいと思います。
挙手する子ども
iStock.com/Antonio_DIaz

〇〇できない子は言葉が作る

「この子はやることがいつも遅いのよね」「この子は人前で話すのが苦手で」と人に話すのと同様に、本人に「いつも口だけじゃないの」「時間にルーズだよね」などと言うのも、同じくNGな声かけです。

「この子はやることがいつも遅いのよね」と言うことによって、子どもは「やることがいつも遅い」とラベリングされることになります。すると、その子はラベル通りに生きようとするのです。まさに、呪いになってしまうのです。

ネガティブであれポジティブであれ「あなたは~だ」「いつも~だ」という言い方ではなく「今回は~だったね」と言うべきだと考えています。過去と今を切り離して話すのが大事です。

「いつも緊張するよね」ではなく「今回は、緊張していたね」。それで、「次回はどうしたら緊張しないで話せるかな」と解決策を考えていく。そうすれば、呪いになりません。望ましい人生に向けて行動していけるようになります。
「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない
坪田 信貴著
990円(税込)SBクリエイティブ株式会社

2022年01月12日

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