教えて、てぃ先生×高濱先生!子どもの自制心はどう育む?

教えて、てぃ先生×高濱先生!子どもの自制心はどう育む?

子育てに関するママパパのさまざまなお悩みに、現役保育士のてぃ先生とKIDSNA編集長・加藤が赤裸々にトークするKIDSNA TALK。今回はスペシャルゲストとして花まる学習会代表の高濱正伸先生との対談が実現!「教育」をテーマに、「自制心の育み方」「しつけと虐待の境界」について、てぃ先生と熱くトークします。

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加藤
加藤

今回は子育てをテーマにお伺いしていきます。まず最初の質問は、「自分の思い通りにいかないことがあると自制がきかなくなってしまう子どもへの対応」を知りたいという3歳のママから。

たとえばスーパーで買いたいものを買ってもらえなかったときに袋を開けて食べてしまうことがあるそうです。床に寝転んで「やだー!」と泣いてる子は見ますけど、実際に商品を開けてしまう場合はどう伝えればよいでしょうか。

てぃ先生
てぃ先生

僕はそもそも3歳にそれを求めなくてもいいと思いますけどね。

自制をかせるためには、「自分が本当はこうしたい」と「でもこうしなければならない」という相反する気持ちと戦わなければいけません。

生きてきた年数が少なければ、当然そういう経験もまだ少なくて、いきなり自制しろと言われてもそれは無理なんですよね。言って聞かせることも無理でしょう。

そこで、いかに日常生活のお遊びの中で、「自分はこうしたい」「でも我慢しなきゃいけない」という経験を積ませるかが重要になってきます。

加藤
加藤

どんな遊びですか?

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てぃ先生
てぃ先生

たとえば、3歳くらいのお子さんなら「頭と言われたら足を触る」「足と言われたら頭を触る」という遊びがオススメです。

人って頭と言われたら頭を触わりたくなるものですが、ルールの中では足を触らなければいけない。ほかにも色がある程度理解できる子であれば「緑と言われたら青いもの指す」とかですね。

高濱先生
高濱先生

子どもは別の楽しいことがあれば、切り替えもすごく早いから、それを知ることも有効。落ち着いたときに何度も話してみましょう。

4、5歳の頃に「ギャー!」となっていた子も、だんだん学年が上がると、中3くらいにはみんなちゃんと勉強していますから。

今はお母さんが大変だけど、年齢とともに収束してくるから、それを信じてほしい。ちょっと激しい瞬間があっても「おー、またやってる」と満喫するくらいの気持ちで。

加藤
加藤

社会の目もあるからお母さんは大変ですよね。ちょっと暴れていると「しつけができていないと思われるんじゃないか」と気にしすぎちゃう。

高濱先生
高濱先生

それはあるでしょうね。お母さんが周囲と繋がっていればどうにでもできることだけど、孤立するとそうなりがち。

てぃ先生
てぃ先生

よほど親しい間柄じゃなければ、相談しにくいんじゃないですか。先輩ママとかと気軽に関われる場所があればいいんですけどね。

加藤
加藤

そう思います。特にこういうネガティブで人と違うみたいな部分はさらけ出しにくい。

高濱先生
高濱先生

「大丈夫だよ」と言われても、「心の底ではそう思ってないのでは?」と感じる場合もありますからね。だからひとり、ふたりでも本当に心の許せる繋がりが大事なんですよ。

そういう相手が話を聞いてくれて「分かる分かる」って言ってくれるだけでもだいぶ違いますからね。

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加藤
加藤

次のテーマはしつけと虐待の境界線について。

先ほどの話とも関連してきますが、たとえば子どもがなにかよくないことをしたときに、家では「ダメだよ」と穏やかに注意できるのに、外では他人の目が気になり、つい厳しめに怒ってしまうという保護者は多くいます。

虐待って必ずしも体への暴力だけではなく、言葉の暴力もありますし、しつけがいきすぎて虐待になってしまわないか不安というお悩みがきています。これらを踏まえて、保護者は子どもにどうしつけすべきでしょうか。

高濱先生
高濱先生

今の質問とその説明がまさに現代の母の闇を象徴しています。やっぱり人目を気にしすぎている。

一般に高校生も若者もそうですが、人生を台無しにするのは人目や比較です。親が本当に自信があってしつけをしていれば迷いはないけれど、お母さん同士「なにか言われるんじゃないかな」と気になってしまうんでしょうね。

「言わせておけばいいのよ」みたいな鷹揚(おうよう)な人が周りに何人かいて、味方をしてくれれば、そういう悩みはなくなるんじゃないかな。

しつけは各家庭ごとの信念ですから、基本的にはよそと違って当然。「叩いてはいけない」などの当然の守るべきルールはありますが、どこまで厳しくするか、線引きは本当に幅があると思います。

そこは家ごとに「ここは絶対厳しくする」と決めて、ぶれないことが大事じゃないですか。なんと思われようがわが家はこうだよと。

同じことをして、この前は叱ったけど今日は叱らないなど、親の基準がぶれるのが一番よくないんです。

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てぃ先生
てぃ先生

僕は境界線という意味では、「その子の人格そのものを否定する」ことはしつけとは言えないと思います。

たとえばお子さんがお友だちに手を出したときに、「なんていけない子なの」「あなたは本当にだめな子ね」というのは人格否定。でも「手を出すのはよくないよ」なら、その子そのものじゃなくて、行動を否定しているだけです。

プロ野球選手やプロサッカー選手のいわゆる恩師や名コーチと呼ばれる方って、「お前はセンスがない」とかではなく、「今のグラブの出し方がよくない」とか「上からとって」とか、ちゃんと行動をどうしたらいいかを示してくれてますよね。

「お前はヘタだ」「センスがない」だけで終わるのは、指導でもなんでもなく、ただ傷つけているだけ。

子どものモチベーションも上がらないし、結果も出ないという負のループになる。結果が出ない子どもを見て、大人がイライラして、言葉が強くなってというのも、同じことが言えるのかなと思いますね。

加藤
加藤

具体的になにがいけないか、なにがいいかを言うのは大切ですね。

高濱先生
高濱先生

親もスイッチが入ると、自分でも嫌だなと思うくらい、頭に血が上って言わなくていいことまで言ってしまうことがあるでしょう。

そこは感情コントロールが必要。先ほどの話に戻るけれど、味方や仲間がいっぱいいるとそこまではならない。一生懸命な親ほど、叱ったことで寝る前に自己嫌悪に陥ったりしてね。

てぃ先生
てぃ先生

僕は、唯一なにかと比べてもいいのは、過去の自分だけだと思います。他人と比べる意味は全くないと思いますね。

加藤
加藤

脳科学の先生曰く「自己肯定感が高い人はほかの人と自分を一切比べない」そうで、まさに今のお話とリンクします。

高濱先生
高濱先生

誰がなんと言おうと「自分はこれだ」と思えることが大事ですね。あまりにも周りが気ならないと、私のように何浪しても平気な人間になりますが(笑)。

加藤
加藤

質問全般に言えることですが、自分含め、今の親はすべてにおいて気にしすぎなのでしょうか。

高濱先生
高濱先生

そうですね。母親としての周りからの評価を気にすると、すごく狭い世界で苦しんでしまう。

根本の信頼関係が構築されていれば、多少感情的になっても「お母さんも興奮してごめんね」と謝れば、愛情が壊れることはないと思います。

てぃ先生
てぃ先生

何故か子どもと自分の人格を重ねようとする親御さんっていますよね。

「自分の子どもなんだから価値観が一緒のはず」「私がいけないと思っていることは娘もそう思っているはずだから絶対にやらない」と思い込んでいますが、別人格ですからね。

加藤
加藤

分かります(笑)。産んでいる感覚があるから自分と一緒と思いこんじゃうのかな。

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高濱先生
高濱先生

まあ愛情があるからこその落とし穴でしょうね。

てぃ先生
てぃ先生

でもお子さんに対してだけじゃなくて、パートナーに対してもそういう方いません?

高濱先生
高濱先生

まさに、あるあるですね。「言わなくても分かるでしょ!」と言われても男は分かりません。性別も生まれも家も全部違えば、考え方も違うのは当たり前です。

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加藤
加藤

それでは次のテーマです。子どもの好奇心は尊重して伸ばしたいけれど、「やりたいことをなんでもやっていいよ」とは言えない。どう折り合いをつけていくのがよいでしょう。

高濱先生
高濱先生

これも正解を求めてますよね。「ばっちいからダメ」の「ばっちい度合」は人によって違うし、危ないも年齢で違います。

そこは家庭と自分で決めるしかないんです。自信があれば、「こういうことはわが子にはやらせたくない」でいい。そこが決まっていればあまり困りません。

極論ですが、好奇心で犬のウンチを集めてきたら、99%のご家庭はダメですよね。でも、落ち葉を持ってきたら、「いいねいいね」という家庭もあれば、「きたない!」と怒る親御さんもいる。

「葉っぱくらいいいじゃない」と思うけど、その方はばい菌が心配なんでしょうね。線引きってそういうことですよね。

加藤
加藤

ポケットにダンゴムシがいっぱい入ってるとか(笑)。

高濱先生
高濱先生

ダンゴムシは大セーフでしょ!(笑)。

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てぃ先生
てぃ先生

筆箱の中で飼ってたりね(笑)。

言葉で表現するなら、受け止めると受け入れるの違いなのかなと。たとえば「おイスの上にのぼります」という子どもがいた場合、それはよくないことだけど「のぼりたい」という好奇心はあるわけです。

だからこそ「のぼりたかったんだね」と一度受け止める。そのあと「でも危ないことだよね」と言えばいい。一方「イスにのぼってもいいよ」というのが受け入れです。

高濱先生
高濱先生

さすがてぃ先生!受け止めと受け入れは、親子間だけじゃなく人間関係において重要な考え方です。

たとえばママ友という集団の中には、シングルも、専業主婦も、バリバリ働く人もいる。価値観は当然違うから、内心「自分は違う」と思うこともあるでしょう。

そういうときに、受け入れなくてもいいから受け止めればいい。これができている集団はとてもうまくいっています。

子どものしつけでも、「ダメ!」といきなり言わないで「のぼりたかったんだ」と一度認めて受け止めるのは極意ですね。

てぃ先生
てぃ先生

子どもの好奇心に対して全部「ダメ」と言っていたら、なんにも興味持たなくなっちゃいそうですね。

加藤
加藤

「子どもの好奇心を広げたい」と思いつつ、「ダメ」とばかり言っていたら広がらないですよね。

高濱先生
高濱先生

ここまではよくてここから先はダメという線引きはあってもいいですが、明確にしている家庭はあまりないですよね。であれば、子どもはある程度自由に放っておくのが一番いい。

加藤
加藤

受け止めと受け入れはとても分かりやすいのですが、先に行動が出てしまうタイプの子の場合、どうすべきでしょうか?興奮すると親、保育園の先生、友だちに噛みつく子がいて悩んでいるという親御さんもいます。

てぃ先生
てぃ先生

そもそも発達の話をすると、小さい子どもって、言語能力よりも歩いたり走ったり身体能力の発達のほうが早いじゃないですか。だから手を出したり、噛んだりするほうが言葉で説明するより早いんですよ。

たとえば、おもちゃをとられて噛みついた場合、「本当はあとで貸すつもりだった」とか、子どもの考えの中にはあるけれど、それを言語化する能力がない。語彙力より身体のほうが発達しているから、とりあえず噛んだり叩いたりしてしまうんです。

だから噛みつきについてはどう声かけをするかというより、その場合は、お子さんの語彙力を増やすほうが早いです。ちゃんと口で説明して伝えられる語彙力がある程度備われば、噛まなくたって相手に自分の意思は伝えられるので。

言葉が身につくまでは周囲の大人が、「こうしたかったんだね」とお子さんの思ってることを代弁してあげること。これは保育現場では一般的におこなわれています。

高濱先生
高濱先生

「悔しかったんだね」と一言いうだけでいいんです。そのお子さんも必ず落ち着きますから。

てぃ先生
てぃ先生

そのときの自分の感情に「悔しい」とかちゃんと名前をつけてくれないと、子どももずっとわけが分からない。ただ「噛んじゃだめ」「こうしちゃだめ」と言われても結局整理がつかないんですよね。

加藤
加藤

自分の子が噛みつきなどの加害行動をした場合、怒って終わってしまいがち。気持ちを代弁して、整理してあげることが大事なんですね。

高濱先生
高濱先生

だから一回受け止めておくと全然違いますよね。「おもちゃをとられて悔しかったんだよね。でも噛んじゃだめだね」と。さっきの話もそうですが、すぐになんて分からないですよ、だんだんと分かるもの。

加藤
加藤

それが今の子どもにとって自分なりの精一杯の自己表現ってことですよね。伝えたい気持ちはある。

てぃ先生
てぃ先生

周りに代弁してくれる大人がいないと、結局その子はなにも学べないから、その子はいつまでも噛むわけですよね。

どうせ自分に共感してくれる人は誰もいない。じゃあかんだ方が早いじゃんと思ってしまうんです。

次回の更新は10/6(水)予定です。お楽しみに!

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2021.09.29

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