妊娠中には控えていた寿司や刺身などの生魚を授乳中に食べると母乳にどのような影響があるのでしょうか。授乳中に寿司や刺身を食べる際の注意点と、万が一食中毒や胃腸炎になったときの母乳は控えるべきかについて医学博士、産婦人科医師である田園調布オリーブレディースクリニック院長の杉山太朗先生監修のもとお伝えします。
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生魚は水銀を多く含むものもあることから妊娠中は寿司や刺身はなるべく食べないように控えていたというママもいるのではないでしょうか。
授乳中にママが寿司や刺身などの生魚を食べると、魚に含まれる水銀は母乳を通して赤ちゃんの身体に移行するのか心配になる人もいますよね
厚生労働省の資料にも以下のように記載されています。
とあるように、授乳中に生魚を摂取しても母乳を通して赤ちゃんに影響する心配はないようです。
授乳中に生魚を食べても母乳に移行する量は少量ですが、大量に摂取すると母乳に影響することがあります。
生魚は身体を冷やすといわれているため、生魚を食べると身体が冷えて血行が悪くなる場合があります。血行が悪くなると、母乳の出も悪くなり、乳腺が詰まる可能性もあります。
寿司のネタでは、特に脂質を多く含むさんまやサバ、サーモン、マグロ、ハマチ、ウナギ、トロなどは乳腺を詰まらせる可能性があるので注意が必要です。
ママの食べたもので母乳の味や質が変わるといわれています。
サバなどの臭みが強い魚は母乳にもにおいが影響し、赤ちゃんが母乳を飲みにくくなる場合があります。
寿司や刺身などの生ものはアレルギーを発症する可能性が高いといわれています。
授乳中にママが寿司や刺身を食べたからといって赤ちゃんが生魚アレルギーになるわけではありませんが、赤ちゃんがアレルギー体質であった場合に皮膚が赤くなったり、湿疹が出るなど多少の反応が出る可能性があります。
ママが生魚や魚卵を食べて、赤ちゃんが湿疹やじんましんなどの症状が出たらアレルギーの可能性があるため、摂取を避けましょう。
ママが寿司や刺身を食べて、食中毒や胃腸炎になった場合、授乳は続けてもよいのか、一時的にやめた方がよいのか悩む人もいるでしょう。
食中毒や胃腸炎にかかっているときに赤ちゃんの授乳をしても食中毒や胃腸炎の細菌が母乳を通して赤ちゃんの血液に入りこむことはありません。
そのまま母乳をあげ続けて平気ですが、ママが嘔吐や下痢を繰り返している場合はママの体内の水分量が減り、母乳の出が悪くなることがあります。こまめな水分補給を意識して、脱水状態にならないようにしましょう。
授乳中のママは、寿司や刺身などの生魚や魚卵を食べるときには以下のようなことに気をつけましょう。
いくらなどの魚卵やトロなどは脂肪分が多いため、食べすぎると乳腺炎になる可能性があるため、食べすぎには注意しましょう。
脂質の多い魚は乳質を悪くする可能性があります。授乳中はタイやヒラメ、カレイ、アジなどの白身魚を選び、食中毒になりやすいサケやサバ、イワシ、サンマなどの生魚は控えるようにすることが大切です。
寿司のネタでも、煮アナゴやタマゴ、茹でたエビなど生ものよりも火の通ったネタを選ぶようにするとより安心して食べられます。
古くなって鮮度が落ちている寿司や刺身などの生魚は、食中毒を引き起こす可能性が高くなります。
生魚を買うときは、消費期限を確認したり、買ってきたらできるだけ早く食べるようにしましょう。
生きている魚を自分でさばくと鮮度が落ちる可能性があるため、自分でさばくことはやめておく方がよいです。
授乳中にママが寿司や刺身などの生魚を食べても魚に含まれる水銀などの成分が母乳に移行して赤ちゃんに影響する可能性は少ないです。しかし、ネタによっては脂が多く、母乳の味を変えたり、母乳の質を悪くしたり、乳腺がつまるなどの母乳トラブルや食中毒を引き起こす可能性があります。
寿司のネタは火の通ったものを選んだり、鮮度の高い魚や白身魚を選ぶようにするなど生魚の種類選びには配慮が必要です。授乳中にどうしても寿司や刺身を食べたくなったら我慢しすぎず、食べ過ぎに注意して食べるようにしましょう。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
信州大学卒医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。
患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
2018年12月02日
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