部下の「わかりません」は上司に問題がある…東大研究員が教える「伝わるコミュニケーションに大切なこと」
「甘やかす」は、考え方一つで「尊重する」に変わる
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部下との齟齬をなくすために、意識すべきことは何か。東京大学で上廣共生哲学講座特任研究員を務める堀越耀介さんは「チームメンバーそれぞれが言葉の意味とイメージを共有できる“共通言語”をつくることがおすすめです。本稿では共通言語を考える際の“型”を紹介します」という――。 ※本稿は、堀越耀介『世代と立場を超える 職場の共通言語のつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
「共通言語」のつくり方
どうすれば共通言語をつくることができるのでしょうか。ワークショップの設計方法や日常業務への取り入れ方といったことは本書の第4章以降で説明しますので、まず核になる部分を説明します。
「共通言語のつくり方」には、大きく分けて4つの型があります。
(1)似ているイメージを見つける (2)意味が似ている言葉との違いを明確にする (3)1つの言葉に含まれている意味の違いを識別する (4)まだ名前のない現象や感覚に名前をつける |
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詳しくは追って説明していきますが、その前に、共通言語をつくると言っても、「新しい言葉」をつくる必要はないということを確認しておきましょう。新しい言葉をつくるのは、このなかで言えば4つ目の型だけです。コミュニケーションの基盤をつくるために大切なのは、言葉の意味とそのイメージを共有することですから、ことさらに聞きなれない単語を無理やりつくる必要はありません。
共通言語として扱っていく単語自体は「挑戦」「遊び心」「価値」「主体性」「自分事」といった、すでに使われているもので構いません。大切なことは、これまであいまいに使われていた言葉に、明瞭な意味を持たせ、自分の組織の特性や状況をしっかりと反映した言葉に再構築していくことです。
たとえば、あなたにとって「会社」はどんなイメージ?
(1)似ているイメージを見つける
これは、特定の言葉のイメージ(モデル)を他の人と共有するために、別の具体的なものに置き換えて、説明することです。「アナロジー(類比)」とも呼ばれます。この型の利点は、直感的なイメージで掴みやすく、アイデア出しの時点では便利なことです。
例で考えてみましょう。たとえば、あなたにとって「会社」とは「家」のイメージでしょうか、それとも「船」のイメージでしょうか。あるいは「軍隊」のイメージでしょうか。
「家」であれば、共通の価値観や歴史を共有しているようなイメージで、どんな目標を達成するかよりも、まずその会社に所属していることが重要かもしれません。「船」であれば、航海のように共通の目的を目指して協力するというイメージでしょうか。「軍隊」であれば、統率の取れた階層型組織のようなイメージかもしれません。
このイメージの違いは、それぞれの経歴、立場、世代などにもとづくナラティヴ(※)に由来するものです。アナロジーを使って説明していると、同じ言葉を使っている人同士のあいだにある、大きなギャップの存在に気づくことがあります。
同じ職場に「会社」という言葉に対して、家のイメージを持っている人と、船のイメージを持っている人がいることに気づくことこそが、対話の重要な第一歩です。
(※)物語や語る行為、そうした語りを生み出す「語り手の解釈の枠組み」という意味