筋トレでも有酸素運動でもない…高齢になっても「自分の足腰で歩き続ける」ための"シンプルな動作"
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年をとるにつれ、身体がどんどん動かなくなっていくのは自然の摂理だ。だが、理学療法士のケリー・スターレットさんは「可動域を広げてスムーズに動く体をつくるためには、筋トレも有酸素運動も必要ない。ごくシンプルな動きを定期的に行うことで高齢者でも“動く体“を手に入れ、転倒などのリスクを減らすことができる」という――。 ※本稿は、ケリー・スターレット、ジュリエット・スターレット『すごい可動域』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
転倒は年齢に関わらず毎日毎秒起きている
“動き”のすべてに影響し、身体能力のすべてを支える縁の下の力持ち、それがバランス能力だ。若いうちは気にも止めていなかったのに、60歳を超えると平衡感覚を失う危険性が一気に高まる。
高齢者の転倒は紛れもなく世界的な問題であり、米国に限っても憂慮すべき数字が報告されている。CDC(疾病対策予防センター:Centers for Disease Control and Prevention)によると、毎日毎秒、高齢者が転倒している――それは年間でおよそ3,600万件に及び、高齢者におけるケガと、ケガがもたらす死の主原因になっている。
転倒がもたらすケガや心理的影響は、行動範囲の縮小にもつながる。社会的交流を制限し、最終的には動くこと自体が億劫になって、体が弱っていく。それが、平衡感覚をさらに失わせるという悪循環に陥っていく。
社会はこの状況を、加齢がもたらす代償として受け入れているが、私たちはその消極的な見方を拒否したい。必ず“転ぶ”必要はなく、バランス能力を保ち続けられることも、取り戻せることも知っているからだ。
転倒は高齢者だけに起こる問題だという考えそのものも間違っている。例えば、大学生を対象に4カ月間調査した結果、その半数が何らかの形で転倒していることがパデュー大学の研究によって明らかになった。若者の転倒についての調査はパデュー大学以外でも行われている。
ある研究によれば、学生は平均して週に1回つまずいたり滑ったりするが、ほとんどの場合、転ぶ前に体勢を立て直すことができる。転倒する最大の原因は、誰かと話しながら歩いていたことだった。18歳から35歳までの不慮のケガの3番目の原因は転倒によるものだ。
バランス能力は誰でも回復できる
こういった話が、憂鬱に聞こえることは承知している。しかし、もともと人間は、重力の中で直立していられるものなので、バランス能力が衰えないように気をつけていれば、転倒数は急速に減少していくだろう。バランス能力の改善は難しいことではなく、遊び――歯を磨いたり、皿を洗ったりしながらでもできる――に似ている。
誰もがかつては子供だったので、上手にそうするやり方を知っている。ほんの少しの努力で大きな違いにつながるのがバランス能力だ。
次に紹介する2つのテストをやれば、バランス能力の異なる側面を評価できる。SOLEC(Stand On One Leg, Eyes Closed)テストは視覚情報を排除するテスト。オールドマン・バランステストは動的バランス能力(動きながらバランスを取ることができるか)を測定するテストだ。どちらも、バランス能力と深く関係している足について多くを知ることができる。足裏を通じて入ってくる情報をうまく脳に送ることができれば良いスコアが出る。
SOLECテスト
足元がどれだけ安定しているかは、足そのもののほかに3つの要素によって決まる。視覚、内耳、それと、筋肉/腱/筋膜/関節に散らばっている固有受容器だ。体と周囲との位置関係を教えてくれる視覚は、体を安定した状態を保つうえでとても重要な要素だ。
「見る能力」を除外すると、体に備わっている他のバランスツールに頼らなければならなくなる。SOLECテストは、視覚以外のあなたのバランスツールがどの程度機能しているか知ることができるテストだ。目を閉じて片足で立って行うが、簡単なことではなく、バランスを維持するうえで視覚がいかに重要であるか理解できるだろう。