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子どもの口臭は何科を受診するべきか。原因と自宅ケア
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医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック
医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。
乳幼児期の子どもの口臭。強いにおいを放っている場合に病気ではないかと心配になることも。今回は、乳幼児の口臭の原因をはじめ、病院を受診する際の目安や選び方、自宅でできる予防ケア、放置した場合のリスクについて解説します。
口臭の原因は、口腔内の汚れだけではない
子どもの口臭が気になった場合、歯みがき不足なのか病院を受診した方がよいのか不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
においの強いネギやニンニクを食べたあとに感じる口臭は、生理的口臭(一時的口臭)と呼ばれていますが、口臭の原因はそれだけではありません。
赤ちゃんでも口臭は発生する
乳幼児の場合は、母乳やミルクを飲んでいるだけでも、1本でも歯が生えて汚れがつくと口臭がすることもあります。歯が生えていない赤ちゃんでも、母乳やミルクによって舌に汚れがつくと口臭がする場合もありますが、特に気にしなくていいケースがほとんどです。
就寝前の授乳やミルクは、虫歯の原因になる場合もあるため注意が必要です。歯が生えそろってくると、歯みがきが不十分で口の中に食べかすが残り、それが歯垢となって口臭が発生することも。虫歯や歯周病になると、口臭が悪化する場合もあります。
口呼吸によるドライマウスも口臭の原因に
鼻ではなく、口で息をする口呼吸が口臭の原因になることもあります。特に幼児は、口周りの筋肉が弱いため口呼吸になりやすいといわれています。
口呼吸は、加湿・加温機能のある鼻呼吸と異なり、乾燥した冷たい外気をそのまま取り込むため、口内が乾燥して雑菌が繁殖しやすくなります。
口臭以外にも、口呼吸は虫歯、歯周病、のどの炎症などさまざまな症状の原因にもなるため、注意が必要です。子どもの口呼吸が習慣化していないか、よく観察しておきましょう。
病気と口臭の関係
日常的にではなく、突然子どもの口臭が気になった場合は、風邪などの病気が潜んでいる場合もあります。熱があるときや精神的なストレスを感じていると、唾液の分泌量が減り免疫力が低下して口臭につながるケースもあります。
風邪をひいて胃腸などの消化器官が弱っていたり、便秘や下痢、服薬による胃腸への負担によって腸内環境がよくない場合にも、口臭を発生するケースがあります。胃腸が弱ると、食べ物を消化吸収する働きが停滞するため、発酵したようなにおいがします。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、アデノイド増殖症になると、鼻づまりによる口呼吸や、鼻の奥にたまった膿が原因で、口臭が腐ったような匂いになります。特に、副鼻腔炎は子どもがかかりやすく、症状が長引くと慢性副鼻腔炎へと悪化するため、鼻水が長く続く場合は注意しましょう。
子どもが糖尿病になると、糖尿病によって不足するインスリンに代わり、アセトンという物質が多く発生すると甘酸っぱいにおいの口臭がします。糖尿病の合併症として、虫歯や歯周病、ドライマウス、睡眠時無呼吸症候群になると、それが口臭の原因になる場合もあります。
出典:口臭の原因・実態(執筆者:山賀 孝之)/e-ヘルスネット 運営元「厚生労働省」 最終更新日2019年12月18日
口臭が気になる場合の受診先
朝の寝起きや空腹時に少しにおう生理的口臭は、一過性のものなので様子を見ましょう。持続する場合や原因が不明で総合的な判断をしたい場合は、小児科や耳鼻咽喉科を検討するとよいでしょう。
虫歯や歯並びのわるさが原因と疑われる場合は、歯科医を受診します。歯科医では、虫歯の診察や矯正治療だけでなく、原因となる歯みがき不足を予防するための正しいブラッシングの指導や定期検診も受けることができます。
風邪や鼻づまりによる口呼吸、副鼻腔炎の症状が出ている場合は、耳鼻科、消化器系の症状が見られる場合、原因がよくわからない場合は小児科で総合的に診ることができます。
家庭でできる子どもの口臭ケア
自宅ですぐに取り入れられる口臭ケアにはどのようなものがあるのでしょうか。
ブラッシングのフォロー
まず欠かせないのは、しっかりブラッシングを行って食べかすや歯垢を落とすことです。子どもが自分で磨いたあとは、大人が仕上げ磨きをして磨き残しのないようにしましょう。
乳歯から永久歯へ生え変わる時期は、歯の大きさも歯並びも不揃いになり歯垢がつきやすいため、歯間ブラシやフロスを使って磨きましょう。子ども用のデンタルリンスを使用する場合は、唾液の分泌が減る就寝前がよいとされています。
舌の汚れが気になる場合は、歯ブラシや舌苔ケア専用のブラシで舌を傷つけないようやさしくケアをすることが大切です。舌をできるだけ前に出し、力を入れすぎないよう奥から手前に向かってブラシを動かしましょう。舌はデリケートな部位のため、ケアの回数は1日1度以下が目安です。
口腔内の乾燥を防ぐ
子どもの口が普段から開きがちな場合は、口呼吸になっている場合があります。口腔内の乾燥は、口臭の原因になるため、口を閉じる習慣を身につけましょう。
また、特に口の中が乾燥しやすい寝起きに水分補給を習慣づけたり、洗浄・自浄作用や消化を助ける唾液の分泌を促したりすることも口臭予防につながります。
唾液腺がある耳下にある顎下腺から顎先へ向かって顎の内側を押す、顎下の舌下腺を親指でやさしく押す、頬にある耳下腺を円を描くように指で押すなどのマッサージを取り入れるのもよいでしょう。
歯ごたえのある食べ物や食物繊維の多い野菜などを食事に取り入れると、唾液の分泌量を増やすだけでなく、顎や頬の筋肉が鍛えられて、口呼吸を防ぐトレーニングにもつながります。
子どもの口臭は適切な対策を
子どもの口臭は、歯みがき不足だけでなく、口呼吸などの習慣、胃や腸などお腹の不調、鼻づまりや風邪などさまざまな原因が考えられます。そのため、原因に合わせた対策、症状にあった受診先を選びましょう。
毎日規則正しい生活をして消化に良いものを食べ、腸を整える乳酸菌や食物繊維といった食材を積極的にとる、しっかり運動する、十分な睡眠をとりストレスをためないなどといった点を心がけることも大切です。
子どもの口臭が長引く場合は「不調のサイン」と捉えて、適切な対策を行いましょう。
監修:保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)
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保科しほ
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。