宋美玄先生、教えて! 【第2回】産後のママが見落としがちな体のトラブル

宋美玄先生、教えて! 【第2回】産後のママが見落としがちな体のトラブル

Profile

宋美玄(ソンミヒョン)

宋美玄(ソンミヒョン)

産婦人科女医 医学博士・性科学者

産婦人科医、医学博士、日本周産期・新生児学会会員、日本性科学会会員。 一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事。 丸の内の森レディーズクリニック院長。 1976年1月23日兵庫県神戸市生まれ。 2001年大阪大学医学部医学科卒、同年医師免許取得、卒業後大阪大学産婦人科入局。 2007年川崎医科大学講師就任、09年にイギリス・ロンドン大学病院の胎児超音波部門に留学。10年に出版した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』(ブックマン社)がシリーズ累計70万部突破の大ヒットとなり、各メディアから大きな注目を集める。その後も、各メディアへの出演や妊娠出産に関わる多くの著書を出版。 2012年女児、15年に男児を出産し2児の母になり子育てと産婦人科医を両立。 “診療95%、メディアへの露出5%”としながらも、“カリスマ産婦人科医”として、対応しうる限りのメディア出演、医療監修等で様々な女性のカラダの悩み、妊娠出産、セックスや女性の性などに女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。

産後のママの体は、ひどくダメージを受けている状態。しかし、赤ちゃんの世話や家事に追われて、自分の体のケアが後回しになってしまいがちです。無理をすると、かえって回復が遅れてしまう可能性も……。連載第2回目では、見落としがちな「産後の体で気をつけること」について教えてもらいました。

産後1ヵ月はなるべく横になって安静に

「赤ちゃんを産んだ後のママの体って、もうガタガタなんです。なので、基本的には産後1ヵ月はなるべく横になって過ごし、長時間立ったり動いたりするのは避けたほうがいいですね」と宋先生。

出産すると、骨盤の関節が開き、胎児や胎盤、羊水などを包み込んで保護していた骨盤底筋群が傷つきます。3000㎏近い赤ちゃんが狭い膣口を広げて出てくるのだから、そのダメージはとても大きいもの。

こうした産後の体を元に戻すためには、適切なケアが必要です。子宮は産後すぐから収縮しはじめ、授乳することでさらに収縮が進みます。また、骨盤や骨盤底筋群を回復させるためには、垂直方向の負担をかけないことが大切。産後1ヵ月はなるべく横になって過ごすことで骨盤が次第に閉じて、骨盤底筋群も修復されていきます。元に戻るまでは約6週間かかります。しかし、きちんと回復する前に無理をしてしまうと、尿漏れ、便漏れなどのトラブルを招くことも。

「産後すぐは家事や育児を家族に手伝ってもらうなどして、なるべく安静に過ごしてください」(宋先生)

骨盤底筋群をケアするために、「腹圧をかけない姿勢」を

骨盤や骨盤底筋群は自然に回復していきますが、自分でできる産後ケアもあります。まずは、骨盤を締める骨盤ベルトを着けること。骨盤や骨盤底筋群の動きをサポートしてくれます。もう1つが、普段から腹圧をかけない姿勢を意識することです。

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「腹圧がかかっている状態は、たとえるなら歯磨き粉のチューブをぎゅっとしぼっているような状態です。お腹に力が入ってしまうと、ガタガタに開いた状態の骨盤に向かって内臓が押し下げられてしまい、周辺の筋肉にも負担がかかります。こうした状態を避けるために、普段から背骨をまっすぐにして姿勢をよくして過ごすとが大切。姿勢がよくなると、インナーユニットが自然と広がって横隔膜を使った腹式呼吸になります。横隔膜が動くと骨盤底筋群も一緒に動くので鍛えることができます」(宋先生)

重い物を持つ、激しく咳をする、立ちっぱなしでいる、排便時にいきむなどは、どれも腹圧をかける行為。また、筋トレや激しい運動なども骨盤底筋群に負担をかけるので、当分は控えたほうがよいでしょう。

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産後は女性ホルモンが減少。この時期はできる範囲でケアを

また、出産によって大きく変わるのがホルモンバランスです。出産後は母乳の生成を促すホルモン「プロラクチン」が増え、逆に、女性ホルモン「エストロゲン」が急激に減少します。「エストロゲン」の分泌が低下すると、以下のような影響があらわれます。

・肌のうるおいがなくなる
・髪のツヤがなくなり、抜け毛が増える
・膣が乾燥しやすくなる
・メンタルが不安定になりやすい

「エストロゲンは授乳している間は分泌が抑えられます。『前はこんなんじゃなかったのに……』と悩む方もいるかもしれませんが、これは体が赤ちゃんを育てるためのホルモンバランスになっているということ。『私におっぱいをあげている間は次の子を妊娠しないでね』と赤ちゃんが言ってるんだなって、思ってください」(宋先生)

女性ホルモンの影響のほかにも、慣れない育児で疲れたり、睡眠不足が続いたりすることで、産後に体調を崩しやすくなったという声も聞かれます。家事や育児をしながら、自分の体をケアするにはどうしたらいいのでしょうか?

「産後の回復のスピードは人それぞれです。授乳中でも生理が戻ってくる人もいれば、2〜3年戻ってこない人もいます。ですから、できる範囲で休養して、栄養のある食事をとり、スキンケアをするなどして、無理をしないで過ごしてください」(宋先生)

産後に気をつけたほうがいい病気は?

そのほか、出産後に気をつけたい婦人科系の病気はあるのでしょうか?

「出産しているからという因果関係はないのですが、子宮頸がん検診の受診率は全体でも20%台前半と少ないんです。妊娠したときに子宮頸がん検診を受けますが、出産後は忙しくなるためか、妊娠したときに検査を受けたきりという人もけっこういます。もっと多くの人に検診を受けてもらいたいと思います」(宋先生)

子宮頸がん検診は2年に1回は受けることを推奨されていて、産後は1ヵ月たてば受診できます。自治体から届く検診案内を利用するなどして、定期的に検診を受けるようにしましょう。


「産後の体がどういう状態かを知り、自分自身でいたわる方法を知ってほしい」と話す宋先生。育児に追われて自分の体のことが後回しになってしまいがちですが、自分のためだけでなく家族のためにも、無理はせずに、適切なケアを行ってください。

Profile

宋美玄(ソンミヒョン)

宋美玄(ソンミヒョン)

産婦人科医、医学博士、日本周産期・新生児学会会員、日本性科学会会員。 一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事。 丸の内の森レディーズクリニック院長。 1976年1月23日兵庫県神戸市生まれ。 2001年大阪大学医学部医学科卒、同年医師免許取得、卒業後大阪大学産婦人科入局。 2007年川崎医科大学講師就任、09年にイギリス・ロンドン大学病院の胎児超音波部門に留学。10年に出版した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』(ブックマン社)がシリーズ累計70万部突破の大ヒットとなり、各メディアから大きな注目を集める。その後も、各メディアへの出演や妊娠出産に関わる多くの著書を出版。 2012年女児、15年に男児を出産し2児の母になり子育てと産婦人科医を両立。 “診療95%、メディアへの露出5%”としながらも、“カリスマ産婦人科医”として、対応しうる限りのメディア出演、医療監修等で様々な女性のカラダの悩み、妊娠出産、セックスや女性の性などに女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。

※症状によって必要なケア、処置は変わってきます。不安のある方は医師の診断を受けてください。
※当記事の情報による行動においては個人差が生じるので、かかりつけの医院にてご相談ください。

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