ウクライナの領土割譲では割に合わない…プーチンが粘り勝ちしてもロシアが喜べない地政学的理由とは

ウクライナの領土割譲では割に合わない…プーチンが粘り勝ちしてもロシアが喜べない地政学的理由とは

プーチン大統領の人気は揺るぎないものに

ロシアがウクライナに軍事侵攻してから2年が経過した。前線の戦況は予断を許さないが、大局的には行く末が見えてきた。ロシアとウクライナ、両方が「敗戦国」になる未来だ。敗戦と言ったが、現在、ロシアのプーチン大統領は我が世の春を謳歌おうかしている。3月15〜17日に行われたロシア大統領選挙で、プーチン氏は7627万票を獲得。得票率は87.28%で、圧倒的な支持を集めて再選を果たした。

従来、ロシアの大統領は一任期が4年間で、務めることができるのは連続2期までと規定されていた。現に、ボリス・エリツィン氏の後を継いで2000年に大統領に就任したプーチン氏は、規定に従って08年に首相へ退いた。

しかし、プーチン氏は首相在任中に、傀儡のメドベージェフ前大統領を使って次期大統領以降の一任期を6年に変更した。そして、12年に大統領に再登板したプーチン氏は、20年に憲法を改正し、大統領を務めることができるのを通算2期までとする一方、現職者である自分は対象外としたのだ。

憲法改正の結果、プーチン氏は24年の大統領選挙の出馬が可能となり、先に述べたような大勝利を収めた。今回の任期は30年までで、次の大統領選挙にも出馬が可能であることから、もはや終身大統領である。

憲法さえも自由に改正するプーチン氏にとっては、選挙も思いのままだった。反プーチンの急先鋒だったアレクセイ・ナワリヌイ氏を獄中死に導いたうえに、政権に批判的な候補予定者の立候補を認めなかった。「圧倒的勝利」が力ずくで演出されたことは明らかだ。

ただ、下駄を履かせたからといって、本当はプーチン大統領に人気がないと考えるのは間違いだ。

ロシアは前身のソビエト連邦の時代から貧しかった。ゴルバチョフ氏の改革でソビエト連邦が解体したあと、エリツィン氏が大統領に就任。ロシアの市場経済への移行を目指したが、インフレの加速が止まらず、ルーブル紙幣の価値が紙くず同然になった。

インフレは、年金額が変わらない高齢者の暮らしを直撃する。その窮地を救ったのが、エリツィン氏に引き上げられて年金改革をしたプーチン氏だった。多くのロシア国民にとって、今のプーチン大統領は自分たちを貧困から救い出してくれた恩人なのである。

ただ、国内問題を解決したものの、西側諸国との経済格差は依然として大きかった。さらに子分のような存在だった中国が急成長して、ロシアの先を行くようになった。

そこで、00年に大統領に就任したプーチン氏は、ある決心をする。ロシア帝国繁栄の象徴であるピョートル大帝の「帽子」をかぶり、国民国家の枠組みを破壊して、版図を広げようとしたのだ。そのひとつが、14年のクリミア併合で、現在のウクライナ侵攻はその延長だ。プーチン大統領は、西側諸国に対する経済的な劣等感の裏返しでおかしくなったのだ。

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2024.04.19

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