韓国発、楽しみながらSDGs・消費社会について考える絵本が登場
ダンボールで早く安く届けられるのが当たり前という便利さの裏側で、梱包材や容器のゴミ、配達する人たちの劣悪な労働環境などが世界問題に。過剰な消費がなにを引き起こしているのか、いま少し立ち止まって考えるときが来ているのかもしれないと伝える絵本
「ことばをあそぶ」をコンセプトに今年6月に設立した「TOY Publishing」から、出版第1作目として、絵本「ダンボール」が12月16日(木)より発売。
韓国で発売後、半年で1万5千部を超えたヒット作の日本語翻訳版となっている。
文は、作家のユン・ヨリム氏、絵は絵本作家、アニメ監督として活躍のイ・ミョンハ氏、翻訳は「韓国語多読の会」などを通して韓国の絵本を日本に紹介している、わたなべなおこ氏が務めた。
コロナ禍で通信販売の利用が増え、さらに大活躍の“ダンボール”。しかし、使い終わった後のダンボールは一体どうなるのか。
今回の本は、そのダンボールが主役の絵本。ユン・ヨリム氏がある日、家にたまったダンボールを見て「ああ、こんなに木を切り倒して生きているんだ」と申し訳なく感じ、ダンボールたちが世界を食い尽くす話を思いついたところから誕生した。
イ・ミョンハ氏の絵は、そのときユン・ヨリム氏の頭の中に思い描いたイメージを完璧に再現してくれるものだったという。
「ダンボール」に登場するのは、感情をもった無数のダンボールたちと、ものを過剰に消費し、ぽいっと捨てることに無感覚になりすぎてしまった私たち。
今日もトラックは何百個ものダンボールを積んで荷物を届ける。
“ピンポーン”「きたぞ きたぞ」ワクワクしながら中身を確認、いらなくなったダンボールはポイっ。
それぞれの部屋から捨てられたダンボールは積もりに積もり……いつの間にかビルよりも高くなる。
すると突然「からっぽだー!」と叫び、世界のすべてをむしゃむしゃと食べはじめたーー!?
果たして、世界を飲み込んだダンボールたちがなりたかった夢とは?
そして食べられてしまった人々と世界はどうなるのだろう?
人の際限のない欲望をほんのいっとき満たすためだけに使い捨てられたダンボールたちは、虚しさを埋めるかのようにバリバリ、むしゃむしゃと街を食いつくしてしまうが、それでも心は満たされない。
もう1度木になろうと力を合わせて重なり合うダンボールたちに対して、人間たちは変わることができるのか。
この絵本が生まれた韓国は、世界トップクラスの配達大国として知られ、あらゆるものが早く安く届けられるのが当たり前という便利さの裏側で、梱包材や容器のゴミ、配達する人たちの劣悪な労働環境などが問題に。
韓国だけではなく、コロナ禍の世界でいま同じことが起こっている昨今。私たちの過剰な消費がなにを引き起こしているのか、いま少し立ち止まって考えるときが来ているのかもしれないと伝える。
また、この絵本にはあえてお話の結末がない。この絵本を読んで「無感覚」から目覚めた読者たちが、それぞれに作っていってくれることを願ってのことだ。
さらに、今回の発売にあわせて「ダンボール」購入者を対象とした「みどりをそだてようキャンペーン」も実施。
生産→消費→生産を続ける社会のスタイルについて、考えるきっかけになればとの想いが込められており、応募者全員に植物のタネがプレゼントされる。
コミカルな内容のなかにずっしり大切なものがつまった1冊。この機会にぜひ、親子で読んでみては。
ダンボール
文/ユン・ヨリム
絵/イ・ミョンハ
訳/わたなべなおこ
TOY Publishing刊 1,980円(税込)
問い合わせ先/TOY Publishing
tel.03−3565−6865
info@toypublishing.com