SDGsを100年前に先取りした、歴史的名著のビジュアル版が刊行
ヨーロッパを旅した南の島のツイアビが語る、「よく生きる」ための考えとヒントを記した、子どもたちだけでなく大人も必読の1冊
「学研プラス」から、児童書『パパラギ』が刊行。100年間愛され続けてきた歴史的名著のビジュアル版となる。
約100年前のドイツで出版された『パパラギ』は、「南国サモア島の族長が西洋文明について語った演説集」という形式で、“文明社会が人間にもたらすもの”に警鐘を鳴らした内容。ほのぼのとした雰囲気の中にも、強い寓意性とメッセージが込められている。
『パパラギ』は、時代を越えて、世界中で読み継がれてきた。日本でも1981年に翻訳出版されたが、今回、やさしい文章と親しみやすいイラストで再構成された「児童書版」が発刊。
未来を生きる子どもたちに伝えたい、多くのメッセージが込められた児童書版の『パパラギ』は、子どもだけでなく、大人たちにも強いメッセージを伝える内容になっている。
タイトルとなっている『パパラギ』とは「白人」を指すサモアの言葉。文明社会で生きる人々を意味している。
この本で語られるのは、サモア島の族長であるツイアビが、ヨーロッパを旅しながら見てきたパパラギの生活。ツイアビの分身的な少年が登場し、読者である子どもたちの視点に立って、パパラギたちを見つめる。
文明社会でのさまざまな“当たり前”は、彼の目にどう映っているのか。その様子が「パパラギの住むところ」「丸い金属と強い紙」「にせものの暮らし」と、シンプルな言葉で分けられた項目ごとに描かれていく。
この本の原著が発売されたのは約100年前。そのため、パパラギたちの文化や暮らしぶりは、20世紀初頭のヨーロッパを描いたものになっている。
しかし、環境破壊や経済格差など、ここで語られていることはすべて現代と変わらぬ問題。パパラギたちの言動に、「自分のことでは」と身に覚えのある現代人も多いはず。
折しも今、日本を含む国際社会は、そうした諸問題に取り組むための「SDGs(持続可能な開発目標)」達成に向けて動き出している。安全な生活環境と豊かな自然の保護、そして、貧困や差別がない社会。
「SDGs」が提唱していることは、すでに100年前の『パパラギ』に書かれている。そういった意味では、「SDGs」的な考えを先取りした内容と言える。
この本の冒頭でも語られているが、文明と物質が生活を豊かにすると信じる人々を『パパラギ』と呼ぶのなら、私たち日本人もパパラギと言える。現代人が生きる今の物質主義社会も、自然のままに生きるツイアビから見れば不可思議な世界だろう。
しかし、その中でも「SDGs」のような目標を立てることで、人々が協力し合い、共に暮らしやすい世界を作っていくことは可能。この本で語られていることには、そうした“よりよい生き方”のヒントが詰まっている。
100年前の世界から届いたメッセージは、子どもたちだけでなく、親である大人たちにも読んでほしい内容と言える。
全ページ描き下ろしイラストで、絵本のように楽しみながら、いま話題の「SDGs」がわかりやすく理解できる1冊。この機会に『パパラギ』を通して、親子で社会や生き方について考えるきっかけにしてみては。
パパラギ
訳/岡崎照男
絵/早川世詩男
学研プラス刊 1,430円(税込)
問い合わせ先/学研プラス