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「小さな王子様」が増えている?教育研究家が考える幼児期のしつけについて
Profile
教育研究家/家庭教師集団「名門指導会」代表
教育研究家/家庭教師集団「名門指導会」代表
教育研究家。家庭教師集団「名門指導会」代表。中学受験ポータルサイト『かしこい塾の使い方』主任相談員。日本初の「塾ソムリエ」として、塾の活用法や塾選びなどの受験ノウハウを世に送る。テレビ、新聞、教育雑誌などで活躍中。おもな著書に『いちばん得する中学受験』(すばる舎)、『中学受験基本のキ!』(日経BP社)、『頭のいい子の育て方』(アスコム)、「中学受験は親が9割」シリーズ(青春出版社)など、20冊を超える著書がある。
教育研究家として数多くの子どもに接する西村先生は、最近「小さな王子様」が増えていると感じるそうです。幼児期では大人にやってもらって当たり前のことでも、小学校以降では自立が求められることもあります。そのために今から取り組めて、近い将来学習に役立つ「子どものしつけ」についてのコラムをお届けします。
専門家が考える幼児期のしつけ
こんにちは。「塾ソムリエ」の西村です。
私は長年中学受験の業界でお子さんとご家庭に関わっていますが、ここ十数年は塾ではなく家庭教師という形で、受験生をサポートしています。
塾という、いわばパブリックな場所で指導する場合と、家庭というプライベートな場所で指導する場合で、こんなにも違いがあるのかと、いまだに驚きの連続というのが家庭教師である私の毎日です。
今回は、学習、勉強面から私が感じる、幼児期に意識していただきたいご家庭でのしつけについてお話しします。
増えている「小さな王子様」
近頃、小学校高学年のお子さんに「小さな王子様」が増えているように感じます。
塾や家庭教師の授業の準備はもちろん、次の日の学校の準備から、下手をすると濡れた靴下の履き替え、箸の上げ下ろしまで親がやってしまうくらい「親まかせ」、そしてそれを当たり前のように感じているお子さんを、私は「小さな王子様」と呼んでいるのです。
ごくごく小さいうちは仕方がないとはいえ、さすがに小学校にあがったら自分で靴下くらいは履き替えなければなりません。
いつから?とお悩みの方も多いかもしれませんが、平均的には2〜4歳くらいで自分で洋服が着られるようになるようです。自分で洋服を着られるようになる時期が、少しくらい上記の年齢から外れても気にすることはありませんが、
重要なのは「なんでも親が先回りしてやってしまってはいけない」ということ。
これは子どもが悪いのではなく、親の責任でお子さん自身にさせなければならないことです。
このままだと、子どもは自分でものを考えられなくなってしまいます。
親がやったほうが早くても、ときには子どもに任せる
何かに限らずですが「子どもに任せる」というのは親としては不安なものです。
「ひとりでできるだろうか」
「怪我しないだろうか」
「時間がかかりそう...私がやったほうが早い!」
いろいろなことを考えます。でも、少しずつ子どもに任せていかなければ、できるようにはなりません。はじめはひとりでできなくても「次はがんばろうね」でよいし、怪我がないよう環境を整備したり、リスク管理することは親の仕事です。
ただ、意識しておきたいのが、親がやったほうが早いのは大人なのだから当たり前で、それを子どもに任せるのが重要だということです。
片づけができない、遅いからと親がやってしまうのではなく、例えば親が手を出さない子どもだけの空間を用意し(階段下でも部屋の隅でも、どこでもよいと思います)、「ここは◯◯くんが好きなようにしていいから、自分で片づけてみる?どうする?」と選ばせてあげるなどの工夫も考えられそうです。
その上で、親は少し離れたところで見守ってあげられるとよいですね。
リビング学習のほんとうの意味
私は昔から「勉強はこども部屋ではなくリビングで」と提唱していて、実際に家庭教師に伺うときもリビングやダイニングテーブルで授業をします。
ダイニングテーブルで勉強していると、親も子も目が届く範囲にいて、お互いにメリットがあります。
お母さんにとっては、お子さんがすぐそこで勉強しているので、はかどっているのかそうでないのか、あるいは体調はどうなのかなどがわかります。
またお子さんにとっては、わからないことがあったらすぐ聞ける、人の目があるので程よい緊張感で勉強できる、というメリットがあります。
でもリビング学習のいちばんのメリットは「お母さんが見てくれている」という安心感をお子さんが持てること。「お母さんが自分の存在を認めてくれている」という安心感は、子どもにとって何より大きなものです。
しつけ、ということを考える前に「認める」ということを意識すると、お子さんとのコミュニケーションはずいぶんスムーズになります。
しつけというと「なんだか親は責任重大」と感じるかもしれません。でも「認める」ということからスタートすると、子育てが少し違ってきます。
まずは親が見本を示す
最近は、小学校でも椅子に座っていられない子がいるのが問題になっています。でも「椅子に座って勉強しなさい」と言っても、うまく乗ってはくれません。
まずは、お母さんがダイニングテーブルで物書きをする姿を、お子さんに見せてはどうでしょう。
子どもは親と同じことをしたい、親といっしょに何かをしたいものです。親がよくダイニングテーブルで物書きをしていると、子どもも同じことをしたがります。そこで「◯◯ちゃんもテーブルで勉強(お絵かきからでもなんでもOK)してみる?どうする?」と水を向ければ必ず乗ってくるでしょう。
ここでも「〜しなさい」ではなく、「〜してみる?どうする?」と選択させてあげるのがポイントです。
選ばせてくれている、自分の自由を認めてくれている、というメッセージを常にお子さんに送ることが大切です。
「うちの子ぜんぜん本を読まないんです」
というご相談も多いですが、かなりの確率で成功する方法は、まずお母さんが本を読んでみることです。
毎晩ある時間帯はテレビを消して、お母さんが本を読むようにしたら、いつのまにかくっついてきて自分の本を読むようになった、というのはこれまでよくあったお話です。
子どもは親に認めてほしがっている
親と同じことをしたがっている
というキーワードはしつけに役立つだけでなく、お子さんが読書好き、勉強好きになるきっかけになるかもしれません。そして、お母さんの生活にも新しい風が吹くかもしれませんよ。
執筆:西村則康
Profile
西村則康
教育研究家。家庭教師集団「名門指導会」代表。中学受験ポータルサイト『かしこい塾の使い方』主任相談員。日本初の「塾ソムリエ」として、塾の活用法や塾選びなどの受験ノウハウを世に送る。テレビ、新聞、教育雑誌などで活躍中。おもな著書に『いちばん得する中学受験』(すばる舎)、『中学受験基本のキ!』(日経BP社)、『頭のいい子の育て方』(アスコム)、「中学受験は親が9割」シリーズ(青春出版社)など、20冊を超える著書がある。