【産婦人科医監修】妊娠中のカフェイン入りの飲み物は注意が必要な理由

【産婦人科医監修】妊娠中のカフェイン入りの飲み物は注意が必要な理由

カフェインの作用や含まれる飲み物と選び方

2018.12.11

Profile

杉山太朗

杉山太朗

田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

妊娠中はカフェインの摂取は控えた方がよいと聞いたことがある人も多いでしょう。カフェインの作用や含まれる飲み物、妊娠中に摂取すると赤ちゃんにどのような影響があるのかを医学博士である田園調布オリーブレディースクリニック院長、産婦人科医杉山太朗先生の監修のもと解説します。また、妊婦さんの1日のカフェインの摂取量の目安と飲みたいときの対処法もご紹介します。

カフェインの作用

妊娠中はカフェインの摂取は控えた方がよいとされていますが、カフェインにはどのような作用があるのでしょうか。


覚醒作用

カフェインには脳や延髄などの中枢交感神経系を興奮させる働きがあります。交感神経が刺激されることにより思考力が早くなったり、眠気や疲労を取り除きます。運動機能を高める作用もあります。


利尿作用

カフェインを摂取したあと3~5時間程度は、腎臓を刺激して尿の出をよくします

血液のなかの余分な水分を減らして血圧を下げる効果もあります。


胃酸分泌促進作用

胃液の分泌量を増やし胃の消化活動を助ける働きがあります。

カフェインが含まれている飲み物

カフェインが含まれている飲み物はコーヒーだけではありません。カフェインが含まれる飲み物を、大体コップ1杯といわれる150mlにどれくらいの量のカフェインが含まれているのかについて解説します。


コーヒー

コーヒー
iStock.com/ma-no

挽いたコーヒー豆に熱湯をドリップして入れたドリップコーヒーは80~120mg程度、抽出したコーヒー液を乾燥させて粉末加工させたインスタントコーヒーだと50~60mg程度のカフェインが含まれています。


紅茶

紅茶
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紅茶には、60~80mg程度のカフェインが入っています。


ココア

ココア
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ココアには、20mg程度のカフェインが含まれています。ほかの飲み物と比べるとココアに入っているカフェインは少なめです。


緑茶

緑茶
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お茶にはカフェインが含まれているものと含まれていないものがありますが、お茶の中でも緑茶にはカフェインが含まれます。緑茶にはいくつかの種類があり、種類によってカフェインの含まれる量が変わってきます。

玉露には240mg程度のカフェインが含まれています。同じ緑茶でも煎茶には30mg番茶は15mgほうじ茶には40mgとカフェインの量には違いがあります。


ウーロン茶

ウーロン茶
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ウーロン茶の葉にカフェインが含まれているため、ウーロン茶1杯分には50mg程度のカフェインが含まれています。


コーラ

コーラ
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コーラは、コーラナッツ(コーラの実)から抽出したコーラエキスが原料になっています。このコーラナッツ(コーラの実)にカフェインが含まれています。コーラ150mlあたりで大体15mgのカフェインが含まれます。


栄養ドリンク

栄養ドリンク
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栄養ドリンクにもさまざまな種類があり、種類によって多少の違いがあります。栄養ドリンクは100mlサイズのものも多いので100mlで見ていくと、100mlで32~50mg程度のカフェインが含まれている場合が多いです。

妊娠中にカフェインを大量摂取したときの影響

妊娠中にカフェインを大量摂取すると、以下のような影響があります。


低酸素状態

カフェインには血管を収縮させる作用があるため、カフェインを摂りすぎると母体から胎盤に送られる血液が減ってしまう可能性があります。血液量が減ると赤ちゃんへの酸素や栄養素が十分に行き渡らず低酸素状態になる場合があります。


発達障害

妊婦さんの摂取したカフェインが胎盤を通してまだ内臓などが未熟な赤ちゃんにそのまま伝わると、赤ちゃんはカフェインを上手く分解や排出できないため身体にカフェインが溜まっていきます。身体に溜まったカフェインが発達障害を引き起こすケースもあります。


低体重児

食品安全委員会の資料でも以下のようにいっています。

一日のカフェイン摂取量が 300 mg を超える妊婦に対しては、流産や新生児の低体重リスクを低減するために、妊娠中はカフェイン摂取量を制限するように注意喚起している。

出典: 食品中のカフェイン/食品安全委員会

早産・流産

妊娠初期は赤ちゃんの胎盤が形成される大事な時期です。妊婦さんがカフェインを摂取して血管が収縮されることでお腹が張り、早産や流産につながる可能性があります。

妊婦さんの1日のカフェインの目安量

世界保健機関(WHO)によると、1日300mg(コーヒーの場合は2~3杯程度)であれば、妊娠中に摂取しても胎児に与える影響は少ないとされています。しかし、妊婦さんの体形や体質によってカフェインの影響具合には個人差があるため、300mgなら確実に大丈夫ということは明確には言い切れません。

専門家も以下のように言っています。

カフェイン量としては、すぐに害が出るものではないですが、知らないうちに、カフェインが含まれるものを摂取することがあります。カフェインレスのお茶などを楽しまれたらいかがでしょうか?カフェインは、コーヒー3杯までくらいなら大丈夫とか、9杯以上で害が出るなどが言われています。実際に人間で臨床実験はできないので、断定はできません。ココアやチョコレートにもカフェインは含まれています。お茶でも玉露などでは、コーヒーよりも多くカフェインが含まれます。また、ドリンク剤の一部や風邪薬などにも含まれます。カフェインは胎盤を通過して、胎児へも行きます。胎児は肝臓の働きが未熟ですので、母体よりカフェイン濃度が上がってしまいます。ですから、出来るだけ、少ない量にして楽しみましょう。

出典: AskDoctors

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毎日のようにコーヒーや紅茶などカフェインを摂取していたママだと妊娠中にカフェインの入った飲み物を一切控えるのは難しいかもしれません。どうしても飲みたくなったときの対処法をご紹介します。


量を減らす

妊娠中にカフェインに入っている飲み物が飲みたくなった場合、摂取するカフェインの量を減らすことが大切です。マグカップを小さいものに変えると自然と摂取量を減らすことができるのでおすすめです。


カフェイン入りに代わるお気に入りの飲み物を探す

コーヒーや紅茶、緑茶にはカフェインが含まれていますが、黒豆茶やルイボスティー、たんぽぽ茶などはカフェインが含まれていなくて、ビタミンや鉄分、ミネラルがとれるので妊婦さんにもおすすめです。今まで飲んでいたコーヒーや紅茶を妊娠中にほかの飲み物に切り替えてお気に入りの飲み物を探すのもよいでしょう。


カフェインを薄める

どうしてもコーヒーや紅茶、緑茶などカフェインが入った飲み物を飲みたくなったときは、茶葉を少なくしたり、ドリップコーヒーよりもインスタントコーヒーを選ぶなどカフェインの摂取量を減らす工夫をするとよいでしょう。

妊娠中のカフェインは少ない量で楽しもう

飲み物を飲む妊婦さん
iStock.com/imtmphoto

カフェインには覚醒作用や利尿作用などさまざまな作用があります。妊娠中のカフェインの摂取は赤ちゃんが低体重児で産まれてきたり、早産につながる場合もあるため赤ちゃんへの影響も考えてカフェインの摂取は控えた方がよいといわれています。

しかし、妊娠前にコーヒーや紅茶などを毎日飲んでいた人にとって妊娠中カフェインを完全に禁止して飲みたい気持ちを我慢することがストレスになるかもしれません。妊娠中でも飲めるお気に入りの飲み物を探したり、カフェインを薄めて飲んだり、大量摂取に注意して1日の摂取量を守って飲むなど飲み方を工夫することが大切です。


監修:杉山 太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

Profile

杉山太朗

杉山太朗

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

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