子どもの便の量や頻度は人それぞれですが、子どもの便秘は放っておくと悪化して、治療が必要な慢性便秘症におちいることも。そこで今回は、子どもの便秘の原因と対策、さらには慢性便秘症になった場合の治療方法について解説します。
子どもの便秘は、体の発育に関するもの、食べ物の変化に関連するもの、環境や精神的な因子によるものなどが挙げられます。
個人差もありますが「うちの子便秘かも?」と感じる方は、以下の項目をチェックしてみてください。
0歳~6歳児の便秘になりやすい原因は以下のとおりです。
母乳育児の場合、母乳が不足しているときに便秘になる傾向にあります。
便とは本来、取った栄養の余剰分が便となって排出されるもの。生後4ヵ月~5カ月の赤ちゃんは、体が急激に発育するため、母乳やミルクが消化される際に余るものが少ないために便秘になる子もいます。
水分から固形の栄養に赤ちゃんの消化管が慣れるまでの間、食材が変化するため便秘になりやすいようです。
トイレトレーニングがきっかけで便秘になる子は少なくありません。親の声掛けやプレッシャー、排泄する場所(トイレ)の変化などの精神的な因子により便秘になることもあるようです。
集団行動が始まり、他の子どもとの関係やトイレの場所などにより、トイレに行きづらいと感じると便秘がちになる傾向があります。また、転園や引っ越しがきっかけで便秘がちになるケースもあるようです。
さらに、この状態が1か月以上続く場合、「慢性便秘症」となり、深刻な場合は数カ月から1年以上も治療が必要になる場合もあります。
大人の場合、体調不良やストレスなどで一時的に便秘になっても、一度詰まった便が出れば改善します。
しかし、子どもはそもそもの排便の仕組みが大人とは違うため、便秘になるメカニズムも異なります。
子どもが一生懸命いきみ、それでも便がでない場合は便秘の可能性が高いです。とくに小さい子はいきむ力が足りず便秘になるケースが見受けられます。
いつもよりおならが多いときも便秘かもしれません。なかなか便が出なくてガスが溜まっている状態です。「いつもよりおならが多いな」と感じたらよく様子をみましょう。
ふだんの排便の回数よりも極端に少ない状態で、おなかが張っているときも便秘のサインのひとつです。「便秘かもしれない」と疑わしいときは、おなかをさわって確認しましょう。
腸に便が残っていると胃の中の食べ物が流れず、消化されないため食欲が落ちることがあります。熱や病気ではないのに食欲がないときは要注意。
便秘だと便が硬くなり、排便の際に肛門が切れて便に血がつくこともあります。
現在は便秘ではない場合も、治療が終わった場合も、便秘になりにくいライフスタイルを心がけることは重要です。
毎日の生活でできる予防法を、ぜひ取り入れてみてください。
便秘の予防には、生活のリズムを整えることがとても重要です。
決まった時間に起床や食事をすることで、必然的に排泄の時間が整い、便秘予防につながります。
厚生労働省の乳幼児を対象にした生活調査でも、早起きの子どもは毎日便が出ている割合が多い、という結果が報告されています。
野菜嫌いの子どもは、どうしても繊維質が不足する傾向にあります。
便秘解消のためにも、繊維質が多く取れるよう、食事メニューを工夫しましょう。
おすすめは、繊維も栄養も豊富なおから。ハンバーグやクッキーを作る際にまぜて「おからハンバーグ」や「おからクッキー」などにすれば、子どもも喜んで食べてくれるでしょう。
また、麦芽とでんぷんを合わせて作った甘味料である麦芽糖は、前述したとおり赤ちゃんの便秘薬にも含まれている成分。
普段白砂糖で味つけしているものを麦芽糖に代えてみるなど、料理に取り入れてみてください。
便秘は精神的なストレスも影響しやすいもの。
小さな子どもは引っ越しや入園、入学など、生活環境が変わったことがきっかけで便秘になってしまうことも多々あります。
いつもよりこまめにコミュニケーションをとったり、子どもと寝る前に10分多くおしゃべりするなどしてあげてください。
とくに「おなかの『の』の字マッサージ」は、スキンシップをしながら便秘解消にもつながります。
子どもの日頃の生活のリズムや便の回数を把握しておくことで、便秘のサインをいち早くキャッチし、対応することができるでしょう。
もしも慢性便秘症になってしまったら、まずはかかりつけ医に相談し、治療が長期になる場合は便秘外来なども視野に入れて、就学前に治してあげたいですね。
保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。
2021年01月27日
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