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【なみそさん】「とことん肯定し続ける」が育んだ、己の道を極める子どもたち
家族の日々を綴った、楽しく癒されるSNS投稿が人気のなみそさんが、小学2年生クリエイターNEKO KENこと、KENさんとともにリモートでのインタビューに応じてくださいました。
お子さんの「好きなこと」を全肯定し、長男は小学生にしてクリエイターデビューを果たしている、フォロワー11万人超の3児の母、なみそさん。
ご自身の子育て観や、確固たる「自分軸」をもってすごすお子さんたちの姿を通し、「好き」を育み、自分らしさを楽しむことの大切さについてうかがいました。
猫の色に、決まりはない。「僕が思ってる猫やけん」と言った息子
――なみそさんの「息子よ、その感性をそのまま大切に育てていこう。君の描くネコは世界で一番愛しい。」というツイートが話題になりました。子育て世代のみならず、多くの人の心に響いた結果かと思いますが、なみそさんのツイートやKENさんの切り絵作品に対する反響に対し、どのように感じられましたか。
その作品の猫は、顔がオレンジ、体が青で、普通の色使いではなかったのですが、本人がそれを見た友達から「なんでこんな色しとうと?」と言われることがあったんです。
そのとき一回だけ、「いいやん。僕はこれが可愛いと思う。僕が思ってる猫やけん」って言っていたのを聞いて、うわあ~(泣)ってなりました。
――自分の芯があって、それを友達にしっかりと伝えられたのですね。お子さんがそのように育ったことに、ご家庭での関わり方が影響していると実感することはありますか?
私の両親も、私と同じような子育ての仕方をしていたんです。
たとえば、私が猫や犬を描こうとすると「色も自分の想像でいいよ。自由、自由~!決まりはないよ」と言われて育てられてきました。
両親は宮崎県で家具を作る仕事をしているのですが、自分の想像したものを形にするという仕事なので、私が何か作ろうとしたときに「もっと遊んでいいんじゃない?そんなもん、がちがちにせんでいいよ!」と言うんです。
私が「こういうものを作る!」と目的を決めていても、突拍子もない素材などを提案してきて、「これも使おう、これもやってみたら」と、どんどんアイディアを持ってきてくれる両親でした。
だから私も同じように、何かを作るとき、子どもたちに「この道具使ってみる?」「色をこういうの使ってみると、一気におもしろくなるよ」「見たまんまじゃなくていいんじゃない?」と話をしていますね。
「小学2年生でクリエイターデビュー」長男KENさんがNEKO KENへ
――KENさんのクリエイターとしてのデビューは、Twitterでのリプライがきっかけだったかと思います。
KENの切り絵をグッズにして欲しい、とリプライしてくださった方がいて、カワチ画材さんがそれに対し「うちで作りましょうか」と手を挙げてくださったのが始まりでした。
――グッズ化のオファーを受けて、KENさんはどんな反応をされましたか。
最初は全く実感がなかったようです。「マグカップができるよ」と言っても、「なんそれ?」みたいな反応でした。
SNSを知らないので、自分が周りから多くのサポートを受けながらすごく盛り上がってきている、Twitterでバズっている、ということが分からなくて。
それから去年の夏休みになって、カワチ画材さんでNEKO KENの個展をさせてもらうことに。これだけすごいことをしてるよ、これだけの人が集まって来てるよ、というのを直に見せたいと思い、KENと一緒に大阪の会場に行きました。
今もいっぱいグッズを作ってもらっていますが、本人は有頂天になるような、そういう変化は全くなくて。「周りにほめてもらえたからやる」のではなくて、本当にやりたいからやる、といった様子です。
グッズ収益は「見える形」にして伝える
――NEKO KENとしての活動は、KENさんにとって「自分の好きなことが仕事に、お金になる」という経験でもあると思います。
KENの切り絵のグッズ化が決まったとき、その売り上げ全額を受け取る勇気がありませんでした。ネットで「子どもの絵で儲けてるんじゃないか」というような言葉を投げかけられる未来も想像できてしまって。
そこで家族会議を開き、どうせやるからには、人の役に立つことに使おうと決めて、
売り上げの9割を猫の保護団体へ寄付することを始めました。残りの1割は、色紙や厚紙などの制作費へ。今のところ、寄付は、毎月欠かさずやっていますね。
――KENさんの反応はいかがでしょうか。
はじめは振込での寄付もしていたのですが、見えないものだと本人は自分の稼いだお金がどういう風に使われたかがわからないんですよね。
これはまずいなと思い、実際に見える形にしようと、全てキャットフード等の物資での寄付に変えたんです。
近くのホームセンターで大量に買って、必ず自宅に持って帰り、KENに「今月はこれだけ寄付するよ」と見せてから、宅配便に持っていく、というのが毎回の流れになりました。
好きなもの、楽しいことを「徹底的に」
――長男KENさんには、同じく切り絵が好きなお姉ちゃんと、扇風機が好きな弟さんがいますね。3人全員が「好きなこと」をどんどん追究している現在に至るまで、なみそさんがどう関わったかをうかがえますでしょうか。
3人とも、もともと集中力が特別強いということもなく……KENの場合はとにかく甘えん坊でぐずることが得意だったんですよ(笑)。
でも、切り絵を始めた頃からちょっとずつ手が離れ出したと思います。乳児期からこういう教育に力を入れた、などは特になくて。
でもその頃から、子どもたちがやりたいと言ったことは止めないようにはしているんですよね。大けがをすることや、人に迷惑をかけるようなこと以外は、何でもとりあえずやらせよう、と。
家で手にいっぱい絵の具をつけて、床一面に模造紙を広げてべたべた塗る、というような遊びも、服が汚れるから嫌だとか、後片付けが大変だとかいろいろ思うところはありますが、もう「やるからにはとことんやりな」というスタンスです。
画用紙も小さい画用紙じゃなくて、「今からでかい模造紙買いにいくよ!」と言って何メートルもあるものを買うとか、段ボールハウスが作りたいということなら、段ボールの工場を営んでる友人の所まで行って「一番でかいやつをくれ~!」ってお願いするとか。
――お正月の頃、猫の毛で作った福笑いをされていましたね。日々、豊かな発想で遊んでいる印象です。
うちは白い猫や茶色い猫などいろんな子がいるので、ブラッシングをしていたらいろんな色の毛が集まって。「これで猫もう一匹作れるんじゃない?」と作り始めたら顔がズレて福笑いみたいになったので「おもしろいね~」と。
何かを新しく買って遊ぶというよりは、身近にあるもの、普段だったら捨てるようなもの
を使って新しく作って遊ぶ、ということをよくしています。
切り絵も、他の工作などで使ったいろいろな色紙の切れ端がたくさん出たので、その端切れを再利用できないか、と考えたことがスタートでした。
最初はちぎり絵をしてみたんですが、ちぎり絵は完成までにすごい時間がかかってしまって、心が折れて途中でやめました(笑)。
「自分らしさ」を持つ子どもたち
――KENさんとお姉ちゃんはどちらも切り絵をされていますが、同じ猫をテーマにしていても、表現の仕方が違っていてそれぞれ魅力的です。姉弟間で影響し合っていることはあるのでしょうか?
KENが切り絵を始めて、Twitterでこれだけ話題になったことで、お姉ちゃんも『私もしてみたい』と言ってきて取り組むようになりました。
KENに寄せたような絵を描くのかと思っていたら、年齢が2歳離れているからか、そのへんはちゃんと分かっているようです。「KENに似ないように、私らしいものを描く」と言って、ちゃんと作風も色もかぶらないんです。
いつの間にか子どもたち全員、「自分は自分」として、意識し合わない“己の道”を持っていて。
刺激は受けるけれども、寄せるようなことは誰もしないですね。
――3人のお子さんが好きなことをしているとき、関わり方に気を付けていることはありますか。
3人子どもがいると、みんながいっせいに話しかけてくることがあるんですよね。
その時は多少順番待ちがあるとしても、ちょこちょこと必ず一言はツッコミを入れて、どんなに忙しくても返すようにしています。
お姉ちゃんと話をしている時にKENが何か話かけてきたら、「何してますの~!」という感じでちょっとツッコミを入れて、「あなたの話も聞いてるよ」というのを伝えて。3人それぞれ、別方向からいろいろと話しかけられますけど、必ず全員、話を聞くようにしていますね。
――このインタビューの間、KENさんが終始いろいろなネタを披露してくれていましたが、そのたびにひとつ残らず、なみそさんが即座にツッコミを入れていたので、その徹底ぶりを見ることができました。お子さんにとって、「受け止めてもらっている」という安心感がとても大きいと思います。
やっぱり大変なときもありますけど(笑)。ツッコミのスピードを上げていかないと、3人一人ひとりにかまう時間がなかなか取れないんです。
――端的であっても必ずお子さんの行動や発言に触れているツッコミでしたが、そうした努力も親子の信頼関係を深め、お子さんの自己肯定感につながっているんですね。
3月8日(火)配信予定の【後編】は、好きなことをきっかけにSNSを通して広がった縁や、なみそさんが子どもたちの好きなことのために、具体的にどのような環境を作っているかを伺います。
<取材・執筆>KIDSNA編集部 <写真提供>なみそ
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