子育て×脳科学⑤自学自習・スパルタ・早期教育…わが子に最適な教育法とは?【てぃ先生×瀧教授】

子育て×脳科学⑤自学自習・スパルタ・早期教育…わが子に最適な教育法とは?【てぃ先生×瀧教授】

子育てや教育テーマをお届けする動画記事コンテンツKIDSNA TALK。第5弾は、現役保育士のてぃ先生と脳科学者である瀧 靖之教授、KIDSNA編集長・加藤による対談が実現!今回は、子どもに最適な教育法を見つけるために必要な「親の関わり方」についてお話いただきました。

 
 
 
 
加藤
加藤

これまでのお話で、子どもの脳の発達は個人差があり、「男の子だから、女の子だから」とステレオタイプで決め付けることは、脳科学の理論上からも実践論からも避けるべきであること。また「天才」「遺伝」といった「生まれながらの素質」と思ってしまうことも実は「後天的要因」が大きいなどのお話をしていただきました。

今回は、子どもに適した教育法を見つけるために必要な「親の関わり方」について伺いたいと思います。その上で、子どもの「脳の発達状況」を見極める方法はあるのでしょうか?

瀧 教授
瀧 教授

子どもが成長する上で「この時期にこういう発達が起きる」ということはありますが、繰り返しになってしまいますが、大事なことは「個人差」です。

実は私も別の先生に、「それは個人差があるので、それほど気にするな」と言われたことがあります。私もそうですが、誰でも自分の子どもの事には色々心配してしまうものです。

ですから、あまり神経質にならないことです。自戒を込めていうと、「ネットに書かれていることがすべてではない」ということです。

加藤
加藤

私は子どもの7カ月検診のとき、チェック項目ができていないことで焦った覚えがあります。でも検査に行って、先生に「個人差」のことを言われてとても安心した経験があります。

てぃ先生
てぃ先生

以前、看護協会の方とお話をしたときに、1歳6カ月児健診の発達テストで「積み木をつめるかどうか」を見るのですが、検診でひっかからないようにとパパやママたちが練習をさせてくる人が増えているという話を聞きました。

そもそも、練習してきたら意味がないし、個人差があるので気にしなくていいんですよね。

瀧 教授
瀧 教授

でも、そのパパたちの気持ちはわかります。心配になっちゃうんですね。

加藤
加藤

情報が多いからこそ、不安もいっぱい入ってくるんですよ。

瀧 教授
瀧 教授

私たちの不安の大きな要素は、将来に対する予期不安なんですね。いわゆる「取り越し苦労」です。だからこそ、何が不安なのかがちょっとわかっているだけで心配が減ります。

てぃ先生
てぃ先生

そこで、確信をもったことがあります。私は保育士さんが持っている0〜5歳の発達に関する本を購入しておくことをおすすめしているんです。

例えば、自分の子どもが今、1歳1カ月だったら1歳2カ月なのを見ておくことで、いざその発達がきたときに「あぁ、あれだ」って思えます。だから例えば「イヤイヤ期がくる」ということがわかっていれば、「あぁ、きたな」って思えるけど、「イヤイヤ期」がくることを知らないと辛いと思うんです。

だから育児も、先を見て予習することが大事なんだな、と思います。

 
 
瀧 教授
瀧 教授

すごくいいですね。私たちも先を知っていると安心できますよね。それは必要ですね。

加藤
加藤

余裕がないと今だけになってしまうけれど、少し先を見ることは重要ですよね。

 
 
てぃ先生
てぃ先生

家庭と保育園の関わり方で何が違うかをよく聞かれるのですが、私が決定的に違うと思うのは、家庭の子育ては「後追い」であることだと思うんです。

親は子どもの成長に後からついていき、問題が起きたときに「どうしよう」と思いながら対応されると思うんです。一方、保育園では、当然知識がありますから「あの子、そろそろこういう時期だよね。だからこういう準備をしておこう」という感じで、子どもたちの問題は後からやってきます。

そこが家庭と保育園で決定的に違うことなんだろうな、と思います。

加藤
加藤

確かにそうですね。一人目のときは何もかもはじめてだから驚くことも多いけれど二人目、三人目になるとある程度わかっているからこそ慌てないですよね。

てぃ先生
てぃ先生

病気もそうですよね。熱痙攣とかはじめて見たときは「えぇ」って思いますよね。

瀧 教授
瀧 教授

私も初めて見たときは、本当に一瞬頭の中が真っ白になりました。百聞は一見に如かずで、本で見ていても実際に起こったときにはびっくりしました。

てぃ先生
てぃ先生

初見の衝撃はすごいですよね。しかもわが子で起きたら見ておいたことも吹っ飛びますよね。

加藤
加藤

そういう意味でも難しい時代ですね。情報がいっぱいあって便利なこともありますが、逆に情報によって不安を煽られたりします。

瀧 教授
瀧 教授

だからこそ、気になったときには専門家に相談にいくのが一番です。

 
 
てぃ先生
てぃ先生

子どもたちの可能性を引き出すための教育として「自学自習」「スパルタ教育」や「早期教育」など、瀧先生はどう思われますか?

瀧 教授
瀧 教授

私は肯定も否定もないです。どちらもありだと思いますし、いろんなやり方があると思います。そして教育は、褒めるだけではどうにもならないときもあります。

大事なことは、「努力したことでこれができた」という成功体験です。逆に、自己肯定感を下げてしまったら、厳しいこともダメだと思います。

 
 
てぃ先生
てぃ先生

確かに厳しいことが自己肯定感を下げることの要因ではないですね。

瀧 教授
瀧 教授

一番悪いのは「無関心」です。無関心こそが一番自己肯定感を下げることだと思います。だから、度が過ぎない厳しさも、度が過ぎないやさしさも両方必要です。究極は「愛情」です。愛情があればいろんな困難も乗り越えられます。

自己肯定感と愛着(アタッチメント)があることでどんどん積みあがっていきます。だから生まれてきたことに常に感謝ですよね。愛情をかけることが大事です。

加藤
加藤

でも愛情をかけすぎで周りから「過保護じゃない?」って言われることもあるかな、と思うのですが。

瀧 教授
瀧 教授

愛情と「過保護」は違って、研究では「過保護」は上から親が「あれやっちゃいけない」「これやっちゃいけない」ということであると言われています。だからこそ、愛情そのものは、どれだけかけてもいいと思います。

ただ、大事なことは、社会的なルールを逸脱するときにはしっかり怒ることが大事だということです。愛情とは、やさしさだけではなく「友達に嘘をつく」とか「時間を守らない」など何かあったときはしっかり、厳しくきちんと伝えること。それが一番大事です。

てぃ先生
てぃ先生

その大切さを伝えるために、そもそも愛着関係が必要だということですね。

瀧 教授
瀧 教授

てぃ先生がおっしゃるように、子どもたちには「味方である」という前提を伝えた上で、話をすることでちゃんと聞いてくれると思います。

てぃ先生
てぃ先生

よかった!保障されました。笑

瀧 教授
瀧 教授

そして、早期教育を行う、行わないはどちらでもいいと思いますが、少なくとも勉強に必要なことは、前にもお話ししましたが、「究極の好奇心」です。だから子どもの「好奇心」を少しだけ優先させてあげるといいと思います。

加藤
加藤

早期教育についてはやってあげたいと思っていても、仕事の関係などでできない方もいると思います。実は、私もできず、仕事で幼児教室に行ったときに自分の子どもと差があるのかもしれない、と思ったときがありました。

瀧 教授
瀧 教授

もちろん、小さいときからスタートするメリットもあると思うのでいいと思います。しかし、できなかった経験に対して、失望する必要はまったくありません。何より興味を持つ好奇心を育むことが大事です。

 
 
てぃ先生
てぃ先生

早期教育とは少し違うかもしれないですが、学生時代に「勉強」って予習をしておくと面白くなるな、って思ったときがあったんです。

中学生のときに塾に通っていたのですが、それまで英語がすごく嫌いだったんですが、そこの塾で学校で習うよりも1〜2週間早く習っていたんですね。そうすると授業でわかるので、わかると面白くなり、勉強する気になったんです。そういう意味では、無理やりやらせる早期教育が必要か、と言ったらそこは否定的なんですが、自信につながる早期教育もある、とは思うんです。

加藤
加藤

予習復習は基本的に大事といいますものね。

瀧 教授
瀧 教授

てぃ先生が予習のことを話された通り、予習はすごく大事です。チラ見でいいのでちょっと先を見ておく予習はとても大事です。

脳は「単純接触効果」といって「すでに見たことを好きになる」という性質があります。ですから、ちらっとでも見ておくことで心のハードルがぐっと下がります。だからちょっと先を見ておくことは大事です。

そして、私たちはどんどん忘れていきますので、常に見返していくための「復習」が大事になります。だから25分の勉強時間だったら、最初の20分を昨日今日の「復習」に使い、明日の分をチラッとみる「予習」という勉強法がいいです。

加藤
加藤

確かにチラ見はいいですね。全部見てしまうのは大変だけど、なんとなく「こんなことやるんだな」って思って興味を持てればいいですね。

瀧 教授
瀧 教授

だからこそ、好奇心があればなんでもできるようになります。勉強も運動も楽器も、芸術も。嫌なことではなく、楽しめることを突き詰めることから始めればいいと思います。そうすれば難しいと考えることすらバカバカしくなります。

てぃ先生
てぃ先生

逆を言えば瀧先生、0.5%くらいは才能が影響するかもしれないけど、あとの95.5%はが好奇心っておっしゃっていましたものね。つまりは、その0.5%の才能があっても、好奇心がなかったらその才能も無駄になっちゃうってことですよね。

 
 
瀧 教授
瀧 教授

まったくその通りです。どんなにいい才能があっても使わないと何もならないです。いろんな方を見てきましたが、才能に溢れているのに「もったいないなぁ」と思う人も正直いました。

加藤
加藤

好奇心がいろんな才能を伸ばすことはわかりますが、一方で難しいことであると思いますよね、正解がないだけに。

瀧 教授
瀧 教授

いや難しくはないんです。嫌なことは突き詰められないですから、自分の興味を持ったことを楽しく突き詰める練習をすればいいんです。そうすれば、難しいと考えていたことも「なんだそういうことか」とばかばかしく思えてくるはずです。

 
 
てぃ先生
てぃ先生

“子どもは親を選べない、生まれてきた環境で人生が左右される”ことをゲームにたとえた「親ガチャ」という言葉が最近言われています。本人のせいではない、家庭環境でできないことに対して瀧先生はどう思われますか。

瀧 教授
瀧 教授

この問題は、「生物学的要因」というよりも「社会学的要因」が大きいと思います。

私たち、生物学的な研究が目指すのは、すべての子どもたち一人一人の自己肯定感を高めることが、結果的に日本全体の自己肯定感を高めることになり、サステナビリティにつながる、と考えます。そして、それが私たちの研究テーマであり、考え方です。

“親を選べない”という問題は、脳科学的には難しく、簡単に解決できませんが、私たちがやるべきことは、発信だと思っています。つまり、保護者自身が「自分は変わることはできない」「自分はどうせこうだから仕方ない…」と思うのではなく、「努力することでプラスに働くことが多い」「今日からの積み重ねで、いろんなことが変わる」ことを知ってほしく、そのことを伝えていくのが私たちの役目だと思っています。

てぃ先生
てぃ先生

今日強く感じたのは、「毎日変わることの重要性」ですね。子育てに関して「もう遅い」なんて思わずに、今からでもできることはいっぱいあるってことですよね。

瀧 教授
瀧 教授

結局は保護者です。子どもの自己肯定感を高めるためには、保護者が「自分なんて」とは思わずに、壁を取っ払うことで子どもも変わっていきます

加藤
加藤

子どもも重要ですが、親も変化し続けることが大事なんですね。

てぃ先生
てぃ先生

それこそ、コロナ禍も相まって「何歳までにやらないといけない」とか「マスク時代に育った子は言語能力が劣る」とか不安に思う人がたくさんいると思いますが、そんなことは決してないということがわかりました。

瀧 教授
瀧 教授

マスクをしていると共感性をつくる機会が減るということはあるとは思いますが、コミュニケーションは言葉だけでなく、半分以上が非言語的情報で伝えている、といいます。家庭内ではちょっと気を付けてあげればいいのだと思います。

てぃ先生
てぃ先生

どちらにしても「今できないから」と言って、これから先もずっとできないわけではないですものね。

瀧 教授
瀧 教授

その通りです。私たち、保護者自身が人生を楽しむことが重要です。

てぃ先生
てぃ先生

今日、わかったことは好奇心の重要性だな。2022年は親も子も好奇心を育てよう!ですね。

 
 
加藤
加藤

全5回にわたってお届けしてきた、てぃ先生と瀧教授とのKIDSNA TALK。

子育てを行う上で知っておきたい「脳」に関する様々な疑問と俗説について「理論と実践」、それぞれの立場でお二人にお話しいただきました。

子どもを伸ばすために大切なことは「好奇心」を育てること。その時期に「手遅れ」などなく、今からはじめればいいそうです。

そして、興味を持った学習や経験で得た学びを次の活動に反映させることで、子どもはもっと楽しくなり、スキルがあがります。そして世界が広がることで、さらに好きになっていく。結果、どんどん子どもが伸びていくのです。

今日からお子さんと一緒に楽しめることを見つけて一緒にやってみてはいかがでしょう。

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