男性育休取得率100%企業のヒミツ!パパの育休取得に欠かせない「賃金・取組・上司」

男性育休取得率100%企業のヒミツ!パパの育休取得に欠かせない「賃金・取組・上司」

男性の育児休業取得を促進する「育児・介護休業法」が改正、順次施行。性別を問わず、育児と仕事を両立させる社会の実現が今、望まれています。そこで、試行錯誤をしながら早くから育休制度の設計や運用を実施。6年連続で1ヶ月間の男性育休取得率100%を実現するピジョン株式会社の取り組みとその軌跡を紹介します。

なぜ、男性は育児休業を「取得」しない・できない?

「育児・介護休業法」が2022年4月より順次改正されています。今回の法改正の焦点は、男性主体ではありますが、育児者を支える企業や職場は支援体制の整備を行う必要があります。特に働き方や育児スタイルが多様化する時代だからこそ、性別の隔たりなく育児をする・できることが重要です。しかし、思うように社内制度や支援体制の整備が進まない企業が存在するのが現状です。


育児休業取得率の推移

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厚生労働省発表の「令和3年度雇用均等基本調査」(令和4年7月29日発表)によると、男性の育児休業の取得率は、過去最高の13.97%(令和2年度 12.65%)となり9年連続で上昇していますが、女性の取得率85.1% (令和2年度 81.6%) に比べると「2025年までに男性の育休取得率30%」を掲げる政府目標は遠い状況です。

なぜ、男性は育児休業を取得しない、取得できないのでしょうか。


男性の育休取得の壁と課題

育児用品のトップブランドであるピジョン株式会社は、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にしていくため、男性が積極的に育児に関わることができるようにするための育児制度の整備や、その制度を使いやすくするための職場の風土・雰囲気づくりが欠かせないと考え、「育児・介護休業法」の試行に関連した意識調査や社会状況の把握を目的とした企業ヒアリングを実施。その結果、男性の育休取得の壁となっている課題を発表しました。


そこで、育児休業の取得に立ちはだかる壁が見えてきました。

 
 

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ここで見えてきた3つの課題に対し、ビジョンが実際に行っている取り組みをご紹介します。


1. 経済的不安を解消する取り組み

●男性でも取得しやすい「ひとつきいっしょ」

有給による1ヶ月間の育休制度を導入。1ヶ月間の育休の半分は、会社が付与する「特別休暇(有給)」を利用し、残りの半分は、失効年休を積立てた「積立休暇」を利用します。

「積立休暇」が無い社員は、会社から無給の休暇を特別に付与し、雇用保険の「育児休業給付金」を活用します。そうすることで、1ヶ月間育休を取得しても経済的な不安を抱えずにすむよう制度を設計しました。

 
 

●「個別フォロー」

育休取得を検討する際、漠然とした経済的不安を感じる男性社員のために、出産予定日の報告を受けた時点で育休制度の詳細な説明を個別に実施

また、育休を取得する場合の「雇用保険育児休業給付金の受給額」や「社会保険料の免除」等の仕組みを各社員のケースに沿って、給与額の試算等も交えながら個別説明を行います。

さらには会社からの説明後に、「どのタイミングで育休を取得するか」「里帰り出産の有無」などの家庭状況や、「夫婦以外の育児サポート体制」など、具体的な内容についても詳しく聞きながら、育休取得への相談に乗っています。

社員によって状況が異なりますので、全て個別対応を行っています。


2. 制度の社内浸透と活用促進 ―育児休職取得対象者の意識を変える―

●育休取得のための発信と強いメッセージ

育休取得対象者の中には「本当は取得したいけれど上司や同僚に迷惑をかけてしまう」「本当に取得していいものか」という後ろめたさを抱える社員が多くいました。

そこで、育休取得対象者の意識改革のために、「男性も当たり前に育児をする会社でありたい」「積極的に育児をしてほしい」というメッセージを、トップから全社的に発信。

トップによる発信で、社員全員が共通の意識を持ち、また、育休取得に対して不安や後ろめたさを感じていた取得対象者本人も安心して育休が取得できるようになりました。

●プライベートも自己申告

業務状況や社員自身が考える今後のキャリアを年に一度会社へ申告し、さらに申告内容に関する上長との面談の機会を設けています。

 
 

申告時には、「プライベート・家庭状況について会社に伝えておきたいこと」についても自由に記載できるようになっており、会社への公式な申告の中に、今後の(本人・配偶者の)妊娠・出産予定や介護の可能性などの情報も組み込むことで、社員が実際に育休取得申請をする際の心理的ハードルを下げることが出来ています。

また、育休取得対象者の「迷惑をかけてしまう」という心配軽減の一助とするために、妊娠を会社へ早期に報告してもらえるよう、人事側も窓口を整備。


3. 企業風土の醸成 ―育児休暇取得対象者の上司や同僚に働きかける―

●育休を取得“しない”場合の社長への報告ルールを導入

男性社員が育休取得をしたいのに取得しない理由の上位には、経済的不安の他、「休暇期間中の業務に対する不安」や「上司や同僚へ迷惑をかけるのではという心配」があるため、『育児休暇を取得“しない”と申し出た社員が出た場合は、所属長から社長へ理由とともに報告する』というルールを導入期には実施。

その結果、送り出す側も「きちんと育休を取らせ、育児をしてもらおう」という意識へ大きく変わり、その後は育児休暇取得率100%を維持しています。

●制度を知り、愛着を持ってもらう“仕掛け”

育児休暇の取得対象者以外の社員にも、制度を知って愛着を持ってもらうため、2006年の制度導入時には、制度のネーミングを社内公募で決定しました。

●「育休」だけが特別にならないようにするための「働きかけ」

育休だけを特別扱いすることで、育休以外の理由での休みを取得しづらくなってしまわないよう、「Smart & Smile!Work」と名付けた全社的な取り組みを実施し、働き方の最適化や休みを取得してのリフレッシュ等を推奨。全社員に対して「誰もが休みを取れる・取りやすくなる」ための働きかけを実施。

これらの様々な取り組みの結果、育児休暇取得者は、不在の間フォローしてくれる同僚に対して感謝の気持ちを持ち、育休へ送り出す社員は、温かい気持ちで送り出してあげようという心遣いが根付き、現在の企業風土が醸成されました。

ピジョンの育児制度全体像(赤枠は今回の改訂対象)

ピジョンは、今年3月に「ひとつきいっしょ」を軸とした制度を再検討し、「はじめていっしょ休暇」や「配偶者の出産サポート休暇」等を増やすなどの改定を実施しています。制度改訂で、従来よりも細かな部分にも行き届いた制度設計となり、各社員の家庭状況や育児スタイルにもフィットしやすい制度となりました。

 
 

男性が育休を取得しやすくなることで、女性にとっても働きやすい良好な職場環境が実現し、生産性が向上することが期待できます。また、少子化対策にもつながることになります。

内閣府が発表した世界経済フォーラムの「2022年のジェンダー・ギャップ指数」(世界各国の男女平等の度合いを指数化したランキング)によると日本は146か国中116位(前回は156か国中120位)と、前回と比べほぼ横ばいの順位であり、主要7カ国(G7)のなかで最下位です。

「教育」の順位は146カ国中1位(前回は92位)にもかかわらず「経済」の順位は146か国中121位(前回は156か国中117位)、「政治」の順位は146か国中139位(前回は156か国中147位)と男女間の不平等さが明らかになってと言えます。

ピジョンのような取り組みが、多くの会社で検討されて広く社会に共有されることで社会全体が育児をしやすい環境へと変わるのではないでしょうか。

2022.10.11

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