授乳中にチクチク感じる胸の痛み。考えられる原因と対処法

授乳中にチクチク感じる胸の痛み。考えられる原因と対処法

赤ちゃんへの授乳中に胸がチクチク痛む。そんな経験をしたことがある方も少なくないのではないでしょうか。なかには病気かもしれないと不安に感じる方もいるかもしれません。授乳の時間が快適なものになるよう、胸が痛む原因と対処法を正しく知っておきましょう。

河井恵美(エミリオット助産院)

授乳中に胸が「チクチク痛い」原因

出産後、多くのママたちが経験するさまざまなおっぱいトラブル。なかでも、胸がチクチク痛むという声は多くのママから聞かれる症状です。

本来赤ちゃんとのスキンシップとして、授乳はママにとって至福の時間のはず。ですが、胸に痛みを抱えていると、授乳自体がつらいことになってしまう場合もあります。

そのような胸の痛みの原因には、どのようなことが挙げられるのでしょうか。痛み別に解説していきます。

生理的な痛み

授乳開始後、最初に感じる胸の痛みのひとつに、母乳が作られることによって感じる生理的な痛みがあります。

母乳が作られ始めると、乳腺が発達することによって胸が張り、それが痛みにつながってしまうのです。これは乳房への血流やリンパ液が増すことで起こる症状で、母乳が作り出されている証拠でもあります。
iStock.com/szeyuen
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さらに産後2週間くらい経ってくると、赤ちゃんにおっぱいを吸われたときに痛みや違和感を感じることもあります。これは、哺乳の刺激を受けて赤ちゃんが欲しがる量の母乳を一度に作ろうとするために起こる症状です。このような痛みは、特に母乳がたくさん出ているママに多いのが特徴です。

乳房のしこりの痛み

片側の乳房の一部に、触ると痛む、かたいしこりができることがあります。

これは乳腺の一部がつまっていたり、赤ちゃんが母乳をうまく飲めていないことなどが影響しています。たとえば、授乳間隔があいた、下着や洋服がきつい、ママの乳首が平らだったり陥没したりして、おっぱいの吸われ方が浅いということが挙げられるでしょう。

飲ませたあとの痛み

授乳をしっかりしたはずなのに、おっぱいが痛む。そのような場合には、母乳が多く作られすぎてしまうことが原因として考えられます。

赤ちゃんが飲む量よりも母乳の分泌量が多いことで、母乳がたまりがちになり、おっぱいが張ってしまうのです。こういったときの赤ちゃんにみられるのが、授乳を始める際にむせたり泣いたりすること。吸い始めは母乳の出かたに勢いがあり、むせてしまうと考えられます。

ママ自身が母乳があまり出ていないのではないかと不安に感じ、余分に搾乳をすると起こりやすいため、赤ちゃんの様子をみながら、判断することが大切でしょう。

痛みへの対処法

痛みの度合いや感じ方はママによってもさまざま。個人差や体質による部分もありますが、以下の対処法を参考に、自分にあった方法を見つけて、痛みの解消だけでなく予防にもつなげていきましょう。
New Africa/Shutterstock.com
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おっぱいマッサージをする

授乳中のママ、さらには妊娠中のママたちの中にも、おっぱいマッサージを行っているという方がいるかもしれません。

おっぱいマッサージとは、適切な方法で乳首周りやおっぱい全体をマッサージすること。これによって母乳の分泌がよくなる、赤ちゃんがおっぱいをスムーズに飲むことができるなどといったようなことが期待できます。また、血のめぐりがよくなり、母乳のつまりを解消することにもつながるでしょう。

こまめに授乳する

古い母乳を乳管の中に残さないために、頻回に授乳をすることも大切です。また、搾乳を行う場合は、ぬるめのお風呂に浸かりながら行うことで、血行がよくなり搾りやすくなります。

痛みがつらいときは、水で濡らしたタオルをビニールに入れて当てるなどし、適度に冷やしてみてもよいでしょう。

赤ちゃんの抱き方を工夫する

授乳中や授乳後に胸が痛む原因の多くは、授乳の体勢を工夫することで予防できます。

まずは赤ちゃんとママのおなかが向き合うようにして赤ちゃんをしっかり抱き、乳輪部まで口に含んで吸える体勢を心がけましょう。胸にしこりが確認できる場合は、しこりのある胸の方から授乳を行い、授乳中に空いている手でしこり部分をほぐすように圧迫します。そうすることで、少しずつしこりが小さくなっていくでしょう。

授乳時間を調整する

iStock.com/Yagi-Studio
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左右それぞれ5分などと、時間を決めて授乳をしているママも多いのではないでしょうか。

赤ちゃんに授乳したあとも痛みが続くようであれば、時間を決めることをやめ、片側ずつ赤ちゃんが満足するまで飲ませてあげましょう。乳首を深くくわえることができるように、下あごが乳房につくくらいママの体にしっかりと引き寄せることがポイントです。

片側授乳をする

母乳が多く作られすぎてしまうことによって起こる痛みには、「片側授乳」という方法を試してみましょう。これは、授乳の時間ごとに左だけ、右だけと交互に使い分ける方法です。

一方のおっぱいのみを吸わせ、次の授乳の際に逆のおっぱいを吸わせることで、母乳がたまる時間を確保でき、分泌量が少しずつ減っていきます。この片側授乳を1週間程度続けると、張りすぎて痛いという症状も緩和されます。

ただし、たくさん母乳が出ている方は、よけいに張りや痛みが増加する可能性があるため、注意が必要です。

また、張りすぎて痛い場合には、授乳していない乳房を少し搾乳してもよいでしょう。その場合は、搾りすぎることのないよう意識して、乳房が少し楽になったタイミングでやめておくことが大切です。

病気との関連性

授乳中に胸がチクチク痛むとき、病気との関連性を疑った方がよいケースもあります。

どのような病気の可能性があるのか、症状とともに見ていきます。

乳腺炎

授乳中におっぱいが痛む原因として多いのが、乳腺炎です。乳腺炎とは、乳房の中の乳腺が炎症を起こして痛みや腫れを感じる状態のこと。

この乳腺炎には大きく分けて2つのタイプがあります。

ひとつは、うっ滞性乳腺炎です。

なんらかの理由で母乳が乳管にたまった(うっ滞した)状態で起こる乳腺炎で、主な症状としては、下記のようなことが挙げられます。

・母乳がつまっている部分が腫れる
・ズキズキ痛む
・乳房全体が赤くなる
・しこりができる
・しこりを触ると痛む
・乳首に水泡が見られる
・触ると熱く感じる
・微熱が出る
iStock.com/bymuratdeniz
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二つ目は、急性化膿性乳腺炎です。これは、乳首や傷口から細菌が侵入し、うっ滞した母乳の中で繁殖すると起こるものです。赤ちゃんの口腔内細菌が傷ついた乳首から感染して起こる場合と、うっ滞性乳腺炎が進行して起こる場合があります。

主な症状としては、

・乳房が激しく痛み、腫れる
・高熱が出る
・発熱により全身の震えと悪寒が起こる
・血の混じった膿や母乳が出る
・しこりができる
・頭痛がする
・関節痛が起こる

などが挙げられます。

乳口炎

赤ちゃんに授乳しているとき、乳首あたりに痛みが出て、白いにきびのようなものができている場合は、乳口炎にかかっている可能性があります。

乳口炎とは、乳首にある母乳の出口(乳口)が炎症を起こした状態のこと。乳首の先に「白斑」と呼ばれる1~2mmくらいの白いにきびのようなものができ、母乳の出口を塞いでしまうのです。また、血液が入った水ぶくれ(血疱)ができることもあります。

乳口炎が起こる原因としてまず挙げられるのが、乳首が傷ついてしまうこと。たとえば、無理な体勢や添い乳で授乳をすると、赤ちゃんが乳首を浅くくわえてしまい、本来かかるはずのない負担が乳首にかかってしまいます。そうすることで、乳首の先を傷つけてしまい、その傷が炎症を起こすと、乳口炎になってしまうのです。

では、どのような症状から乳口炎と判断すればよいのでしょうか。

主な症状としては、下記のようなことが挙げられます。

・乳首に「白斑」ができる
・授乳時に乳首が痛む
・おっぱいにしこりができる

乳首に水泡ができ、次第に白くなるのが乳口炎の始まり。場合によっては、乳首が赤くなったり黄色くなったりすることもあります。しかし、こういった初期症状においては、一部の乳口だけがつまっていて、ほかの乳口は開通している状態のため、母乳の出にはあまり変化がなく、自覚しにくいのが特徴です。

また、痛みをそのままにしておくことで、乳腺炎へと進行してしまったり、繰り返し発症したりすることもあるため、原因を解消してきちんと対処していくことが大切です。

・痛い
・腫れる
・熱が高い
・症状がつらい

このような症状が出る場合は、無理せず病院を受診しましょう。

1~2日経っても痛みや腫れがよくならないことや、38度以上の発熱があることも受診の目安になります。異変を感じたら軽く見ずに、医師や助産師さんに相談しながら、適切な処置を行うようにしましょう。

「チクチク痛い」以外の胸のトラブル

我慢できる程度のチクチクした痛みや自分で対処して解消できる痛みであれば、病院を受診しないママも多いかもしれません。ですが、チクチク痛いという以外の胸のトラブルには注意が必要です。

症状別に、原因と対処法をまとめました。
Irina Polonina/Shutterstock.com
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ズキズキする

チクチクと痛かった胸が、次第にズキズキした痛みへと進行するケースがあります。そういった場合には、乳腺炎を疑うべきでしょう。

授乳後も乳房に母乳が多く残っている、締めつけがきつい下着をつけている、授乳間隔が空いているなどという場合になりやすく、赤ちゃんがまだおっぱいを上手に飲めずに、授乳のペースがしっかり定まっていない頃に起こりやすいことも特徴です。

ほかにも、同じ授乳体勢が続くことで、よく吸われる乳腺と吸われにくい乳腺が出てきて、吸われない乳腺に母乳がたまって起こる場合もあります。

乳房や乳首に症状があり発熱がある場合は、受診をおすすめします。そして、とにかく赤ちゃんにこまめにたくさん吸ってもらうこと。赤ちゃんの口に深く吸わせ、ママと赤ちゃんの体が密着するよう体勢を整えましょう。また、休息と水分補給を心がけることも重要です。

熱い・ほてる

乳腺炎の中でも、うっ滞性乳腺炎なのか、より進行した急性化膿性乳腺炎なのかを見分ける方法はあるのでしょうか。

うっ滞性乳腺炎の症状の特徴として挙げられるのが、熱い、ほてるといった症状です。

うっ滞性乳腺炎の原因は、母乳が乳腺や乳管内に溜まってしまうことです。赤ちゃんが必要とする哺乳量よりも多く母乳が分泌され、乳腺内に残ったままの状態が続くと起こります。また、母乳の分泌量自体は適量でも、赤ちゃんの哺乳力が弱い場合には、母乳のうっ滞につながる可能性もあります。

特に、初産のママに見られるのが、乳腺で作られた母乳が乳管を通って出されるとき、この乳管が十分に開いておらず、母乳の放出が妨げられるという現象です。これもまた、うっ滞性乳腺炎の原因になりえます。

うっ滞性乳腺炎の対処法としては、頻繁に授乳をして、たくさんの母乳が残らないようにすることです。授乳後も乳房が重く残った感じがあるようなら、搾乳をすることも必要でしょう。

硬いところや痛みが出たところから乳首に向かって流すイメージでマッサージしながら母乳を出してみましょう。自分でできない場合は助産院や母乳外来で診てもらうことをおすすめします。

さらには、日頃から食べすぎには注意し、栄養が偏らないようにバランスのよい食事を意識することも大切です。赤ちゃんの噛み傷などから細菌が感染しないよう、授乳の前には手指をよく洗い、授乳後も乳首を拭いて清潔に保つことも忘れないようにしましょう。
BarbaraGoreckaPhotography/Shutterstock.com
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発熱・震えがある

発熱や震えがある場合は、乳首や傷口から細菌が侵入し、うっ滞した母乳の中で繁殖する、急性化膿性乳腺炎を考えた方がよいでしょう。

前述したように、急性化膿性乳腺炎の原因には、乳首の小さな傷から赤ちゃんの口を通して細菌が入ることやうっ滞性乳腺炎が悪化することが考えられます。

この急性化膿性乳腺炎の場合は、細菌が混入していることで全身的に発熱することが多い傾向にあります。乳房や乳首の症状に加えて発熱している場合は、抗生物質の服用が必要になる可能性が高いため、産婦人科か産婦人科内にある母乳外来を受診することをおすすめしますが、助産院では薬の処方ができないため注意が必要です。

また、薬は授乳を中止しなくてもよいものを出してくれることが多いため、乳腺炎でも赤ちゃんが嫌がらない場合は、授乳しても大丈夫です。受診時に、授乳やケアについて教えてもらいましょう。

細菌感染の有無という観点から、うっ滞性乳腺炎とは区別されるものの、症状としてはほとんど同じなため、ママ自身がどちらの乳腺炎になっているかを判断することは難しいとされています。高熱が出る場合は、マッサージや入浴を避け、早めに受診するよう心がけましょう。

乳腺炎の体験談

乳腺炎に関するエピソードをママたちに聞いてみました。
30代1児のママ
母乳が作られているときにチクチクしたり、おっぱいが張ってきたときになかなか授乳できす、ズキズキと痛みを感じることがありました。痛いときは、マッサージをしたり、電動搾乳器を使って搾乳するとすっきりしたように思います。つまっている部分が解消されるように、授乳の角度を変えて体勢を調整したり、熱をもっているところを冷やしたりして、自分なりに対処していました。
30代3児のママ
子どもが1歳になってすぐ保育園に入園することになり、それまでに授乳をやめたので長時間離れて困るということも少なかったです。ただ、たまに仕事中に授乳間隔が空いて、胸が張ってくるとズキズキ痛み、搾乳器で搾ったり保冷剤をタオルにくるんで下着との間に挟んだりしていました。
30代1児のママ
ママ友の中には、チクチクする痛みを感じて受診したところ、乳腺炎と診断され、手術することになった方もいました。母乳は出るのに、赤ちゃんに飲ませてあげることができずに、とてもつらい思いをしたと聞きました。

授乳中に痛みが続いたら早めの受診を

iStock.com/FatCamera
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多くのママたちが経験する授乳中の胸の痛み。チクチクする痛みやズキズキする痛みなど、胸の状態によって感じ方もさまざまです。

自分で対処できる痛みであれば、病院を受診しないママもいるかもしれません。しかし、症状からどのような状態になっているか判断することが難しい場合もあるため、痛みが続くようであれば、早めの受診が安心です。

授乳はママと赤ちゃん、お互いにとって幸せの時間。ママ自身が気持ちよく授乳するためにも、日頃のケアを心がけてしっかり予防していくことも大切でしょう。

監修:河井恵美(エミリオット助産院)

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河井恵美(エミリオット助産院)

河井恵美(エミリオット助産院)

看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等、様々な診療科を経験し、助産師歴は25年。青年海外協力隊でコートジボアールとブルキナファソに赴任した後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在は、シンガポールの産婦人科クリニックに勤務し、日本人の妊産婦さん方のサポート。世界にいる親御さんを応援するため、インターネット上でエミリオット助産院も開設している。

エミリオット助産院
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2021年07月07日

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