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【産婦人科医監修】卒乳・断乳後の乳腺炎の予防や対処法。病院に行く目安や治療法など
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田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
卒乳時や断乳時は乳腺炎にかかりやすいといわれますが、なぜでしょう。乳腺炎の原因や具体的な症状を解説します、どのような症状が現れたら病院へ行った方がいいかや病院での治療法、処方される薬、卒乳・断乳時に乳腺炎にならないための予防法もご紹介します。
卒乳・断乳時は乳腺炎になりやすい
乳腺炎は一般的に、授乳開始から2~3週間の頃にかかるママが多いですが、もっと遅くに発症するママもいて発症する時期は人によって違います。乳腺炎は、授乳中になることが多いといわれていますが、卒乳・断乳時になる人も多くいるようです。
乳腺炎にかかると具体的にどのような症状がみられるのでしょうか。
乳腺炎とは
乳腺炎は、おっぱいに痛みや腫れなどさまざまな症状が現れる感染症です。母乳がつまって起こる「急性うっ滞性乳腺炎」と、細菌感染によって起こる「急性化膿性乳腺炎」の2種類があります。
急性うっ滞性乳腺炎
原因
急性うっ滞性乳腺炎は、授乳方法が正しく行われず、母乳がつまることで起こります。授乳回数が少なかったり、赤ちゃんが母乳をしっかり吸えていないと乳腺の出口で母乳が詰まって乳腺炎になります。
症状
・乳房のしこり
・おっぱいが赤くなる
・おっぱいがチクチク痛む
・おっぱいが熱っぽい
・発熱
・悪寒
・関節痛
・頭痛
上記のような症状が現れます。おっぱいの異変が現れてから発熱や関節痛などの全身に症状が現れる場合が多いようです。
急性化膿性乳腺炎
原因
細菌が乳頭から侵入し、乳管を通り、乳管や乳腺組織に菌が広がって炎症を起こします。急性化膿性乳腺炎は、黄色ブドウ球菌が原因となることが多いです。
症状
・高熱
・脇の下のリンパ節の腫れ
・乳輪付近から白や黄色の膿
・悪寒
・頭痛
・全身倦怠感
急性化膿性乳腺炎は、急性うっ滞性乳腺炎のように乳房にしこりができることはありませんが、乳頭から膿が出ることがあります。悪化するペースが早く、症状が強く出ることが特徴です。
卒乳・断乳時に乳腺炎にならないための予防・対処法
卒乳や断乳の時に乳腺炎になる人も多いようですが、乳腺炎を防ぐためにはどのような方法があるのでしょうか。
搾乳
卒乳・断乳のあとは、自分で搾乳することが大切です。卒乳・断乳が完了してから2日間はなるべく搾らず、3日以降に乳首が柔らかくなるくらいまで搾り、3日後に乳腺が詰まらないように再び搾ります。乳房全体を手のひらで包み込むようにし、おにぎりを握るように外側から内側へ母乳を搾ることがポイントです。
冷やす
乳房に痛みや熱があるときには、冷やしたタオルや氷で冷やすとよいでしょう。乳房や脇の下を冷やすと痛みや熱が和らぐかもしれません。手軽に手に入る冷却シートは、貼るだけで冷やすことができ、家事なども進めやすいところもよいですね。
お風呂に浸かる
お風呂で暖かい湯船に浸かると、血行がよくなり母乳の流れを妨げる分泌物を取り除くことができます。しかし、高熱や痛みなどの炎症を起しているときは症状が悪化してしまうことがあるのでお風呂は炎症が出ていないときに限ります。
おっぱいマッサージ
母乳がつまることで乳腺炎が起こるので、母乳がつまらないためにおっぱいをマッサージすることも効果的です。母乳外来などでは、マッサージの手順も教えてくれるので、マッサージ手順が分からなかったり、どのようにやればよいのか不安であれば、利用してみてもよいかもしれないですね。
乳頭を清潔にする
細菌が乳頭から侵入して起こる急性化膿性乳腺炎を防ぐためには、乳頭を清潔に保つことが大切です。断乳・卒乳後に乳頭に母乳が少量出ることがあった場合、タオルでふき取ったり、シャワーで洗い流すなどして乳頭を常にきれいにしましょう。
卒乳で乳腺炎かなと思ったら
発熱や頭痛、寒気などの症状を感じたら受診をしましょう。我慢をしたり、自分で治そうとすると症状が悪化する場合があります。
乳腺炎の治療には、抗生物質や鎮痛剤、解熱剤、漢方薬を処方されることが多いです。薬以外にも、乳房マッサージで乳腺のつまりをとったり、薬のみで症状が改善されない場合は、しこりがある部分に針を刺して膿を吸引する治療が行われることがあります。
・頭痛がする
・脇の下のリンパ節が腫れて手があげにくい
・風邪の症状はないが、高熱で関節痛がある
・乳首がチクチク痛い
・乳房の周りが赤くなる
・乳首から白っぽい膿が出ている
以上のような症状がある場合は、受診が必要です。乳腺炎にかかると、自分で治すことが難しいので、病院で診てもらうことが早く治すための近道です。
乳腺炎になる前に正しいケアをしよう
乳腺炎は授乳中に起こりやすいですが、卒乳や断乳時にも今まで赤ちゃんが毎日のように母乳を吸っていた状態から母乳を吸わなくなるため、母乳がつまり、乳腺炎になりやすいので注意が必要です。乳腺炎にかかると、おっぱいの部分的なしこり、痛みや腫れ、熱などの症状が現れます。乳腺炎で、ママの体調が崩れると育児をするのが大変になりますよね。
おっぱいが熱を持っているなと感じたら早めに冷やしたり、卒乳・断乳後もこまめに搾乳するなど乳腺炎の予防をすることが大切です。卒乳・断乳時も正しいケアで乳腺炎を防ぎましょう。
監修:杉山 太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
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杉山太朗
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。