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【産婦人科医監修】妊娠中の薬の服用や注意点。漢方や胃薬、点鼻薬、下剤、睡眠薬などの薬剤使用について
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田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
妊娠中のママが薬を服用するときの注意点を産婦人科医、田園調布オリーブレディースクリニック院長の杉山太朗先生監修のもと解説します。漢方や胃薬、点鼻薬、下剤、睡眠薬などさまざまな薬剤の使用について、市販薬の使用について、いつから胎児への薬の影響はあるのか、使用してよい薬と、使用できない薬などを詳しく解説します。
妊娠中に薬を使用しても大丈夫?
妊娠中に薬を使用しなくてはならないときに、赤ちゃんへの影響が心配になるママも多いと思います。基本的には医師から処方される薬を飲むのが安心ですが、市販薬も服薬可能か気になるママもいるでしょう。
妊娠中の薬の使用について、いつから赤ちゃんに影響するのか、薬剤を使用する時の注意などを解説していきます。
薬が赤ちゃんに与える影響と時期
妊娠中に薬を使ったら赤ちゃんに影響が出ると聞いたことがあるけど本当?いつから赤ちゃんに薬の影響が出るの?と不安なママもいるかもしれません。妊娠初期に妊娠に気づかず、薬を服用してしまったという人もいるでしょう。
赤ちゃんはママの体から栄養などをもらって育ちます。ママが薬を飲むと、薬の成分が胎盤を通して赤ちゃんに届いてしまうことがあります。妊娠の時期によって薬が赤ちゃんに与える影響も変わってきます。いつからどのような影響が出るのか詳しく見ていきましょう。
妊娠4週未満
妊娠4週未満の時期は、無影響期ともよばれ、薬剤による赤ちゃんへの影響は生じない時期です。この時期は赤ちゃんの器官形成はまだ始まっておらず、ママが薬を飲んだ場合、影響がないとされています。
ただし、受精の時期に重なると受精卵が着床しなかったりといった報告もあるようです。妊娠を望んでいたり、可能性がある場合はこの時期から服薬に気をつけたほうがよいでしょう。
妊娠4週~7週まで
妊娠4週~7週までの時期は絶対過敏期とよばれます。赤ちゃんの器官形成が始まる大切な時期で、薬剤による影響を最も受けやすい時期でもあります。
そのため、薬の服用、投与は病気などの治療で必要不可欠なものだけにし、催奇形を起こす危険性が低い薬を選ぶなどの配慮などが必要となります。妊娠の可能性がある場合は安易に薬を飲まないよう、気をつけましょう。
妊娠8週から15週まで
妊娠8週から15週までの時期は、赤ちゃんの器官形成が終了し生殖器や口蓋などが形成され始めます。薬剤が赤ちゃんに与える影響は徐々になくなってきますが、薬の使用は変わらず慎重に行なったほうがよいでしょう。
妊娠16週から分娩まで
妊娠16週から分娩までの時期は、薬剤による赤ちゃんの形態的な異常はほぼ起こらないとされていますが、臓器の機能や発育などへの影響が懸念される時期になります。
薬を飲んでしまったあとに妊娠に気づいたとき
常備薬や風邪薬など、普段から使用している薬を服用したあとに、妊娠に気づいたときは、すぐにかかりつけの医師や産婦人科の医師に相談しましょう。
その際には、服用した薬やお薬手帳などを持参し、いつからどのような薬を飲んできたのかなどを詳しく説明できるようにしておくのも大切です。
持病がある場合はどうする?
持病のあるママで妊娠が分かったときは、お薬手帳を持参し、すぐにかかりつけの医師に薬の使用などについて相談しましょう。
ママに持病がある場合、妊娠中に薬の影響が心配でも、自己判断で薬を止めてはいけません。一方、今まで飲んでいた薬が、赤ちゃんに影響を与える可能性もあるため、妊娠を望んだり可能性がある時点で、服薬について医師に相談することが大切です。
医師が、妊娠中でも薬の使用を継続したほうがいいと判断された場合は、医師から指示された用法用量を守って、正しく使用しましょう。
薬の使用中に体調の変化や副作用など、心配な症状があらわれた場合はすぐにかかりつけの医師に相談しましょう。また、持病の担当医と、産婦人科の担当医が異なるときは両者と連携することも大事です。
妊娠中の使用に注意が必要な薬
妊娠中のママは薬の使用について特に慎重にならなくてはいけません。一般的によく使用される薬をピックアップし妊娠中の使用について説明します。
胃薬
つわりの時期は、吐き気や胃の不快感などさまざまな症状があらわれ、胃薬などを使用したいと思うときがあるかもしれません。自己判断で市販薬などを使用せずに、まずは産婦人科の医師に相談し薬を処方してもらうとよいでしょう。
また、妊娠中期になると、つわりなどでご飯が食べられなかった時期も落ち着き、つい食べすぎたりして胃もたれなどを感じるママも少なくありません。
胃薬には、さまざまな種類があり、市販薬の中でも成分などの違いで妊娠中に服用してもよい薬と、服用してはいけない薬があります。数ある市販の胃薬で、どの製品はOKで、どの製品はダメと一概にはいえませんので、医師から処方された薬を服用するのが安心でしょう。
漢方薬
漢方薬は副作用などの心配が少ないということから、妊娠中のママなども安心して服用できるものとして知られています。しかし、漢方薬は効果効能が多種多様で、妊娠中に適さない種類もあるので注意が必要です。
特に注意が必要な漢方薬として、「発汗作用のあるもの」「排泄を促す作用のもの」「利尿を促す作用のもの」などは服用してはいけないとされています。その他にも慎重に服用しなくてはならない漢方薬もあります。必ず医師に処方された漢方薬を使用しましょう。
睡眠薬
妊娠中は、ホルモンや体調の変化が激しくなかなか寝付けないという症状を訴える妊婦さんも珍しくありません。また、妊娠前に市販の睡眠薬を習慣的に服用していたことがあるママもいるかもしれません。
睡眠薬には作用時間の違いで、短時間型や長時間型などさまざまな種類がありますが、どの睡眠薬も「妊娠中は投与しないほうが望ましい、持病の症状などによって、睡眠薬を使ったほうがよいケースに限り使用すること」のように説明されていることが多いです。
妊娠中に睡眠薬を服用したいときは、必ず医師に相談し、処方された睡眠薬のみ、用法用量を守って正しく使いましょう。また、常用している市販の睡眠薬がある場合なども自己判断で服用せず、医師に相談しましょう。
下剤、便秘薬
妊娠中に下痢や便秘に悩むママは多いです。整腸剤や下剤、便秘薬の服用は赤ちゃんに影響があるのか心配ですよね。整腸剤や下剤、便秘薬は成分によっては妊娠中に服用できる薬もあります。ただし、効果が強すぎると、身体に負担がかかる可能性があり注意が必要です。処方薬は医師の指示をよく聞いて、用法用量どおりに服薬してください。
整腸剤や下剤は産婦人科などで相談すると、妊娠中でも安心して服用できる薬を処方してもらえるでしょう。市販薬を使用したい場合、一度かかりつけの医師に相談しましょう。
外用薬(目薬、点鼻薬、シップ、塗り薬)
湿布などの貼り薬、塗り薬、目薬、点鼻薬などの外用薬は、妊娠中に使用しても大丈夫なのか気になるかもしれません。
まず、貼り薬や塗り薬のような皮膚から薬の成分を吸収させるものに関して、非ステロイド抗炎症薬が含まれるものは特に注意が必要です。抗炎症、鎮痛、解熱作用をもつ薬剤などを使う場合は必ず成分を確認し、医師の判断に従い使用しましょう。
次に、目薬ですが、基本的に赤ちゃんに影響を与えるほどの量を使うことがないため使用しても大丈夫とされています。ですが、成分にプラノプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬にあたる成分が含まれる場合は、念のため医師に相談の上、用法用量を守り使用しましょう。
妊娠中は自律神経の乱れなどから、妊娠性鼻炎、とよばれる鼻炎を起こす人が少なくありません。さらに花粉症などで悩む妊婦さんは妊娠中の点鼻薬の使用も気になると思います。
点鼻薬は目薬と同じく薬の成分が血液中に入りにくく、赤ちゃんへの影響も少ないので基本的には安心して使うことができます。ただし点鼻薬でも用法用量を守って使用し、つらい症状があらわれたらすぐに医師に相談しましょう。
妊娠中は必ず医師の判断で薬を使用する
妊娠中に薬を使用する場合は、自己判断で市販薬などを使用せず、医師から処方された薬は用法用量を守って使用するようにしましょう。
妊娠に気づく前に、薬を使用してしまったなどで不安を感じたときは、服用した薬やこれまで服用していた薬がわかる、お薬手帳などを持参し、すぐに病院ヘ行き医師に相談しましょう。
医師から処方された薬の場合、基本的には使用しても問題ありませんが、副作用などの症状があらわれたら、念のためすぐに医師に報告しましょう。
また、妊娠の経過時期によっては使用できたり、できなかったりする薬もあるので、妊娠経過をよく把握している産婦人科の医師にも相談すると安心かもしれません。とくに持病などがある場合で薬を使用しなければならないときは、妊娠前から持病の主治医と産婦人科の主治医の両者とよく話し合うことが大切です。
妊娠中に薬を使用することが、お腹の赤ちゃんにいつからどのような影響を与えるのかを知り、不安なことや分からないことがあれば、一人で悩まずにまずは医師に相談することを心がけましょう。
監修:杉山 太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
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杉山太朗
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。