定年時に退職金で住宅ローンを「一括返済」していいか…お金のプロが出した誰もが納得の"ファイナルアンサー"
フローチャートで簡単に判断できる
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定年時に住宅ローンが残っている場合、退職金で完済するのがいいのか。Money&You代表取締役でマネーコンサルタントの頼藤太希さんは「借りている住宅ローンが低金利であれば、返済を続けながら手元資金を投資に回したほうがいいケースもある」という――。
住宅ローンは退職金で一括返済すべきか?
定年後も住宅ローンが残っている場合、収入が減るにもかかわらず毎月のローンの返済が続くことになります。一般的には「定年前までに住宅ローンを完済したほうがいい」とされていますので、退職金で一括返済すべきと考える人もいることでしょう。
確かに、住宅ローン返済額は毎月の支出全体の3割前後などと、大きな割合を占めているでしょう。住宅ローンの返済を終わらせてしまえば、以後はその支出分が浮きますし、支払う利息もなくなります。また、変動金利で住宅ローンを借りている人が一括返済したら、今後金利が上昇したとしても、利息が増える心配がなくなります。
一方で、退職金を使って一括返済すると、手元の資金が減ってしまいます。住宅ローンは完済したものの、資金が少なくなってしまうようでは、老後の生活や万が一の際に問題が生じる可能性もあるのです。そもそも、住宅ローンは他のローンに比べてずっと低い金利で借りられるローンです。その返済をしてお金が少なくなったがために、他の金利の高いカードローンやキャッシングなど借金するようでは本末転倒です。
このように考えると、みなさんが借りている住宅ローンの金利が高い場合や、手元の資金が潤沢な場合は、一括返済をしてもいいかもしれません。また、変動金利で借りている場合、今後金利が上昇する局面を迎えたら返済するというのもひとつの考え方でしょう。
低金利なら退職金は投資に回したほうがベター
借りている住宅ローンの金利が低い場合、手元の資金が潤沢でない場合などは、むしろ一括返済をせずに退職金は生活費や投資に回すほうが断然いいでしょう。投資をする際はNISA活用がマスト。NISAは年齢上限なく、投資にかかる利益が一生涯非課税で運用ができます。
住宅ローンの金利は、以前よりも上昇してきてはいますが、本稿執筆時点では、変動金利が年0.6%前後、固定金利が年1.2%前後と低水準です。仮に金利1%の住宅ローンを一括返済しても、得られる利息の圧縮効果は1%です。しかし、そのお金で投資信託へ投資を行い、年4%で増やすことができたら、住宅ローンで利息を年1%支払ったとしても、差し引き3%ずつお金を増やすことができます。
もちろん、資産運用に元本保証はありません。しかし、世界の経済成長率はおおよそ平均3〜4%で推移していることを考えると、世界経済の成長に合わせて成長する投資信託に投資をすれば、決して無理な数字ではないと考えます。
なお、自宅のバリアフリー・省エネ・耐震性能などをアップさせる「特定の改修工事」を自己資金で行った場合にも10%の控除を受けられます(2025年末までに入居)。
耐震リフォーム・省エネリフォームは費用の上限250万円、バリアフリーリフォームは費用の上限200万円などとなっています。よって、特定の改修工事であれば、一部の退職金を使うのは問題ないでしょう。
介護保険の「高齢者住宅改修費用助成制度」では、介護が必要となった場合(「要支援」または「要介護」と認定された場合)に、手すりの取り付け、段差の解消、扉の取り替えといったバリアフリー改修工事にかかった費用20万円までの9割(18万円)を補助してくれます。また、これとは別に各自治体でも補助金が受け取れる場合があるので、確認してみましょう。