スラムダンク映画のクライマックスで分かる…アニメ制作の「中の人」が解説する"手抜き"と"省略"の違い

スラムダンク映画のクライマックスで分かる…アニメ制作の「中の人」が解説する"手抜き"と"省略"の違い

背景、音、映像もあえて省略する場合がある

アニメはどのように作られているのか。アニメ演出家の鈴さんは「作品のクオリティを保ちつつ、納期内に映像を完成させるため、現場は試行錯誤を繰り返している。たまにキャラや背景が細かく描かれていないことがあるが、『手抜きだ』と決めつけないでほしい」という――。 ※本稿は、鈴『アニメ鑑賞が爆爆爆爆爆発的におもしろくなる演出の話』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

「作画崩壊」はノイズになるだけ

「作画の手抜きがひどい……」

アニメ好きの方なら一度は抱いたことのある感想だと思います。よく言われるのは、キャラが遠くに配置されていて顔が描かれていないケース。しかし、こうした例をはじめ、それ以外のシーンでも、実際には手抜きではないことがほとんどです。単に「省略」をしているのですね。少し背景を説明しましょう。

よく混同されがちですが、作画の「手抜き」(=作画崩壊)と「省略」はまったくの別物です。

作画崩壊とは、キャラの顔が原作と似ていない、頭身が話の途中でいきなり変わっている、動きがおかしい――などといった“狙っていない作画ミス”を指します。

作画崩壊を起こしている作品を見ていると違和感を覚え、ただのノイズとなってしまいますよね。残念なことです。

しかし、省略であれば話は別。省略とは、「あえて狙って細かく描かない」手法のこと。つまり、意図があって行っていることです。

「引きサイズのキャラ」は描くのが難しい

ではなぜ、あえて細かく描かないことがあるのか――。まずは単純に、絵のサイズが小さくなればなるほど、描きにくくなることが挙げられます(画像1参照)。

極端なたとえになりますが、米粒に絵を描くことを想像してみてください。

……いかがでしょうか?

少し考えるだけでもむずかしそうに感じますよね。繊細過ぎる作業です。

アニメは、数々の異なるサイズの絵で構成されています。中でも、引きサイズのキャラを描くのが最もむずかしい。

なぜなら、絵が小さければ小さいほど、わずかな線のズレでも全体の絵のバランスが崩れてしまいやすいからです。だからこそ、あえて細部を落とす(=細かく描かない)ことで全体のバランスを保っているのですね。

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https://kidsna.com/magazine/article/entertainment-report-250718-78991271

2025.08.02

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