これを間違えると親子関係が悪化することが多い…FPは知っている「親の介護で絶対手を出してはいけないもの」
父の介護で正社員を辞めた50代女性が心に決めていたこと
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親に介護が必要になったときに気をつけるべきことはなにか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「介護については早めに親と相談しておくことが大切だ。そのときに、前提としてほしいことがある」という――。 ※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
団塊ジュニア世代が親の介護に直面
1947年から1949年に生まれた「団塊の世代」が今年、全員75歳を超え、後期高齢者が人口の5人に1人となる見込みです。医療や介護のお世話になる人が増える中、親の介護、そして自分自身の老後に不安を抱えている人が大半ではないでしょうか。
そこで今回は、親の介護に直面した方々が経験した落とし穴について、お伝えしたいと思います。
私もお客さまも順当に歳を重ねた結果、毎年、介護のお金に関するご相談が増えています。特に今、40代後半から50代前半となった団塊ジュニア世代が親の介護に直面しており、伊藤みかさん(仮名/52歳)もまさにそのお一人でした。
介護サービスや施設をすべて拒否する父
80代のお父さんとずっと二人暮らしをしてきた伊藤さん。地元の工務店で事務をしていましたが、ある日お父さんが転倒したことを機に、介護が必要な状態になってしまいます。「あまりに突然で誰に何を聞けばいいのかもわからなかった」という伊藤さん。病院のソーシャルワーカーに相談をし、地域包括支援センターのケアマネジャーとつながることができました。
そこでお父さんは要介護認定を受けたものの、介護サービスや施設での介助をすべて拒否。デイサービスに見学に行ってダンスなどのレクリエーションを見ると、「あんなの一緒にできるかい!」。入浴介護を頼もうとすると、「他人様に世話なんかさせられるか!」――。仕方なく、伊藤さんは介護と仕事を両立させるためにパートに切り替え、働く時間を大幅に減らすことになってしまいました。
伊藤さんのパート収入は現在、手取りで毎月13万円で、正社員だった時の半分以下になっています。お父さんの年金は月10万円ほどですが、今後介護サービスの手に頼るとなると、最低でも月5万円はかかることがわかり、生活にまったく余裕はありません。「自分がフルタイムで働くには介護サービスを使いたいけど、父の気が変わるのか……。でも、このままだと私も介護疲れで共倒れになりかねない」と、不安を募らせていました。