残念ながら「第二の長嶋茂雄」は絶対に現れない…三振しても愛された「国民的スポーツ選手」が遺した大きな功績
スポーツが持つ本当の魅力は記録や数字には表れない
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「ミスタープロ野球」長嶋茂雄さんが亡くなった。なぜ長嶋さんは国民的なスター選手になれたのか。元ラグビー日本代表で成城大学教授の平尾剛さんは「たくさんの人が、長嶋さんとスポーツがもたらす喜びや悔しさ、感動を分かち合った。記録や数字には表れないスポーツの魅力を体現した人物だった」という――。(取材・構成=ノンフィクションライター・山川徹)
三振でもファンを沸かせた長嶋茂雄
記録ではなく、記憶に残る男――。先日、逝去された長嶋茂雄さんはよくそう評されます。
実は、ぼくも長嶋さんの現役時代を知りません。ただし、過去の映像を見ると、魅せることを強く意識した選手だったのはわかります。
たとえば、三振するにしてもヘルメットが飛んでしまうくらい大きな空振りをする。守備でも大げさなほどダイナミックな動きで、ボールを処理する……。観客やファンを常に意識して一挙手一投足に気を配ったからこそ、プレーだけではなく、立ち居振る舞いや言葉が、多くの人の記憶に刻まれ、人柄も愛された。観戦したファンは、巨人が負けたとしても長嶋さんの三振や、笑顔を見られれば、満足できた。
長嶋さんが現役を引退して半世紀以上が経ちました。
それでも、ぼくは、長嶋さんに匹敵するようなスケールの大きな国民的なスポーツ選手は登場していないと考えています。
そう話すと、大谷翔平選手はどうなんだ、と反論する人もいるかもしれません。もちろん大谷選手が国民に愛される偉大なアスリートだということに異論はありません。しかし多くの人が熱狂しているのは大谷選手の記録や成績に対してなのではないでしょうか。
のちの世に、大谷選手が語り継がれるとしたら、2年連続MVP、日本人初のMLBホームラン王、二刀流などの突出した記録や、実績なのではないかと思います。