食用油の「コレステロールゼロ」には意味がない…糖尿病専門医が解説「動脈硬化を招くコレステロールの特徴」
「善玉」も「悪玉」も、じつは中身は同じ
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いつまでも健康で過ごすためには、どんなことに気を付けるといいのか。北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟さんは「21世紀以降、アメリカや日本の食事摂取基準では食事で摂取されるコレステロールの上限値は撤廃されている。古い健康情報を更新することが必要だ」という――。 ※本稿は、山田悟『脂質起動』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
「卵は1日1個まで」はもう古い
脂質をもっと摂りましょう、そう言うと、「コレステロールが心配だから」という声が聞こえてきます。
「コレステロールが高いと危険」「卵は1日1個まで」といった話を聞いたことがあるかもしれません。多くの方が、食べるコレステロールと血液中のコレステロールを区別せず、血液中のコレステロールのみならず、食べるコレステロールをも敵のように考えているようです。
しかし、これは古い情報に基づいた誤解なのです。
コレステロールは、私たちのからだに欠かせない大切な物質です。脂質(脂肪分)をしっかり摂っても、コレステロール値が問題になるほど上がることはありません。
むしろ、糖質を摂りすぎて脂質を控えすぎると、心臓病や脳卒中のリスクが高まる恐れがあります。
植物油の「コレステロールゼロ」は当然の話
「脂質」「コレステロール」「中性脂肪」――どの言葉も、似たような言葉のイメージがあり、いずれも「からだにとってよくないもの」という点で一致しているかもしれません。
まずは、よくゴッチャにされる「脂質」「コレステロール」「中性脂肪」の違いから、簡単に説明させてください。
脂質(脂肪分)は、食べ物や血液に含まれる脂肪分の総称です。バターやサラダ油、肉の脂身などが代表的な例です。
中性脂肪は、脂質の一種で、私たちが摂取する脂質の大部分を占めています。また、体内の脂肪の約90%が中性脂肪の形で蓄えられています。中性脂肪は主にエネルギー源として利用されます。
コレステロールも脂質の一種ですが、中性脂肪とは全く違う構造をしています。
コレステロールは卵や肉などの動物性食品に含まれていますが、植物油には含まれていません。食用油の商品パッケージに「コレステロールゼロ!」と謳ってあるものがありますが、あれはもともと当たり前のこと。植物油にはコレステロールはそもそも存在していないのです。
この「コレステロール」は、実はとても重要な役割を果たしていて、それが、「細胞膜の材料になる」「ホルモンの原料になる」「胆汁酸の原料になり消化吸収を助ける」「ビタミンDの材料になる」の4つです。
コレステロールは私たちの健康を維持するために欠かせない物質なのです。