「1.4億の借金で一度は死んだ」100人いた社員を3人に削減した不動産会社社長が"準グランプリ"に輝いたワケ

「1.4億の借金で一度は死んだ」100人いた社員を3人に削減した不動産会社社長が"準グランプリ"に輝いたワケ

「俺は失敗したやつと組みたい。1回死にかけたやつやから信頼できるんや。なんとか生きとけよ」。まちづくりを主眼とする30代の不動産会社社長は自腹の負担を含め最大1億4000万円の借金地獄に。だが、そのどうにもならない窮地を救ってくれる人物が現れた。フリーランスライターの野内菜々さんがまちづくりに執念を燃やす社長を取材した――。

なぜ、150年の歴史を持つ「醤油工場跡地」を買ったのか

「僕は、これを(総額)8000万円で購入したんですよ」

赤レンガに「ゐ」の白文字が浮かぶ煙突が空にそびえる建物を見ながら、畑本康介さん(42)は言った。
150年の歴史を持つ兵庫県たつの市のカネヰ醤油の工場跡地。畑本さんは同市の不動産会社・緑葉社の代表だ。

跡地がある龍野地区は“播磨の小京都”と呼ばれ、おしゃれな創作料理店、パン店など古き良き町並みに溶け込んでいる。この地区が「重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建)」に選定された2019年、カネヰ醤油の事業譲渡が決定。敷地面積は800坪。その姿で歴史を伝える建物群を、畑本さんはおおかた“自腹”で買い取った。

なぜ、個人で数千万円借金という巨大なリスクを背負ったのか。取材すると、それは過去の苦い経験に基づいた行動であることがわかった。

NPO活動を経て、不動産会社を承継

畑本さんは中学時代から参加する和太鼓チームを通じて地域イベント企画運営に善意で携わっていた。大卒後に就職した会社(通信系など)で働きながらも自主的にまちづくり活動を続け、仲間たちとNPO法人を設立した。2007年のことだ。

「いつもがんばってくれているから」と格安の月3万円で事務所として借りることができた。三軒長屋の特徴である黒光りした梁や柱を活かして内装改修したところ、「なんてモダンなデザインなんだ」と古民家活用の先進的な取り組みがメディアで大きな話題になった。

その後、新規出店希望者から多数問い合わせが舞い込み、2013年からは物件所有者とのマッチングをする活動も始める。

2014年、NPO事業に専念するため会社員を辞めたある日、地区内で銭湯跡地が売りに出されているとの情報を得る。

「レトロな建物を活かして保育園とかできたらおもしろいねと、仲間と話しました」

でも、どうせ誰も買わないだろうと高を括っていたところ、想定外に買い手がついた。構想は泡と消え、銭湯は解体された。「美しいまち並みを残せなかった」。後悔に苛まれ「不動産の知識があれば、まちを残せる。まちづくりのための不動産会社を作らなければ」という考えに至った。

まちづくりは住民主体で行うべきというスタンスを貫くため、まちづくりで関わりのあった人に声をかけ出資を募った。そのうちのひとりが今、代表を務める緑葉社の初代代表だった。初代は畑本さんにこう言った。

「あいにく出資はできないが、君のような志ある若者に会社を引き継いでもらいたい」。予期せぬ言葉に驚いたが、すぐに承諾。2015年、33歳で2代目に就任した。

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https://kidsna.com/magazine/article/entertainment-report-240910-12822730

2024.11.11

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