12月27日の預金残高20万円、社員14名…絶体絶命の起業8年目の年の瀬、6歳娘の言葉に父は涙が止まらなかった
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フルカイテンCEOの瀬川直寛さんは、自ら立ち上げたECサイトで在庫に苦しむ中で独自の在庫分析システムを編み出した。これはニーズがあるに違いないとの妻の説得で事業化を決意。それまで14人で運営していたECサイトは大手企業に売却し、社員4人での再スタートとなった――。
上場という目標設定で、さらに本気モードに
(前編からつづく)
2017年2月、在庫分析システムの事業化を決意すると瀬川のスイッチがオンになった。
コンパックの時もそうだったように、瀬川は目標を手にするとがぜん力を発揮する。ソフトウエアを販売する以上、上場まで持っていくのが本気というものだと目標設定をすると、VCからの資金調達にチャレンジした。そして、事業化を決意してからわずか3カ月後の5月、VCから数千万円の資金を調達することに成功している。
この段階ですでに、瀬川の営業マンとしての才能が再起動し始めたと言っていい。
「VCとの接触は一般的に紹介ベースですが、当時の僕にはそういうコネが全くありませんでした。だから新規営業みたいにドアノックをするところからのスタートだったのです。でもさすがに『初めまして』とご挨拶しただけで、紹介のような与信のない僕に資金提供なんてしてくれるはずがありません。そこで、自分がVCだったら、与信のない相手に対して、いったいどんな条件のときに資金提供してもいいと判断するかを徹底的に考え抜いたのです。答えは、事業がどうこうではなく、瀬川という人間が投資に値する人間である場合、でした」
いくらビジネスのプランを詳細に説明したところで、それがまだ形になっていない以上、この先どうなるかなんて分からない。そのビジネスが成長するかどうかも、誰にも正確に判断することなどできない。唯一はっきりしているのは、そのプランを実行する人間が「誰か」ということだけである。であれば、VCが最も知りたいのは、その人間がどのような人間であるかだろう……。
こう考えた瀬川は、VCに対して「瀬川をどう売るか」ということだけを考えて、VCへのプレゼンテーションに臨んだのである。
従業員4人からの再スタート
「このFULL KAITENというソフトウエアを生み出すまでの、僕の絶対にあきらめない生き様、胆力の強さについて説明し、僕のような経歴の持ち主だからこそ生み出せたということは、他には絶対にマネができないものであること、つまり競合優位性が極めて高いこと、そして、潜在的に大きなマーケットがあることを力説したのです」
瀬川の作戦はみごとに奏功して、早くもプレゼンの翌日、VCから「資金提供をしようと考えている」という電話がかかってきた。
2018年9月、思い入れのあった「べびちゅ」の事業を従業員ごとある大手企業に売却すると、屋号を「ハモンズ」から「フルカイテン」に変更して、本格的にFULL KAITENを売り出すことになった。
ちなみに、ハモンズ時代の従業員数は14名、年商は約3億円あったが、フルカイテンは瀬川と宮本を含めてわずか4人でのスタートとなったのである。