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子どもの習い事としての「日本舞踊」気になる費用と習うメリットは?
礼儀作法や美しい所作が習得できると言われる「日本舞踊」。日本固有の伝統文化であることから、グローバル教育の一環として子どもに習わせたい気持ちはあるものの、敷居が高いイメージがあり「やってみない?」と積極的に声かけできない親御さんも多いのではないでしょうか。そこで、今回は日本舞踊を習うための気になる費用や実際に習った方の体験談をご紹介します。
日本舞踊とは
「日本舞踊」の起源は、日本神話にあると言われています。
太陽の神「天照大神」(アマテラスオオミカミ)が立てこもった天岩戸を開けようと、天鈿女命(アメノウズメノミコト)が踊った神に捧げる祈りの一つである「踊り」。それが日本舞踊のルーツと言われています。
しかしこれはあくまでも原点とされる話。
現在の「日本舞踊」は、能の舞いと歌舞伎踊りをルーツとし、大正時代に女性による舞踊が加わって一つのジャンルとして独立。現在はプロの日本舞踊家が多数誕生し、活躍をしています。
また昨今は、訪日外国人向けの着付けと日本舞踊体験が人気で、稽古を通した立ち振る舞いを通して日本らしさを味わう特別感があるようです。
子どもの習い事としての「日本舞踊」のイメージ
そこで、子育て中のママに「日本舞踊」を子どもに習わせることについて伺ってみました。
Aママ
Bママ
「伝統芸能」を継承する特別なおうちの方が習うものというイメージがあります。
Cママ
「習わせてみたい」と思うものの、月謝や稽古にかかる舞台参加などの費用面が気になって正直、躊躇します。
Dママ
祖母が「日本舞踊」をやっていたので発表会を見に行って「化粧が濃いなあ」と子ども心に思った記憶があります(笑)。
顔の「白塗り」は、江戸時代の明かりがろうそくだったこともあり、暗い中でも顔をきれいに見せるために白化粧が盛んになったからだと考えられています。
いずれにしても、日本の「伝統芸能」ということから特別な人の習い事としての敷居の高さを感じると同時に、費用に関する不安があるようです。
しかし、「日本舞踊」は他の伝統芸能と異なり、男女を問わず誰でも習うことができ、修行次第でプロになることが可能です。だからこそ、決して特別な人が行う習い事ではないのです。
日本舞踊を習うメリットとデメリット、そして気になる費用
そこで、子どもが「日本舞踊」を習うメリットについて体験談をまとめてご紹介します。
また逆に、気になる月謝をはじめとする費用のほか、着物や小道具購入の有無、発表会参加についてもお知らせします。
体験談
子どもに「日本舞踊」を習わせた経験を持つEママに話を伺ってみました!
Eママ
子どもが小学生のときに三味線を息子に、筝と日本舞踊を娘にそれぞれ半年ほど習わせました。
理由としては、私が仕事で伝統芸能に触れる機会があり、将来その道に進むことがなくても、グローバル時代を生きる子どもたちに「日本の文化を経験記憶として残してあげることはとても大切」なことだと思ったからです。
ーー「日本舞踊」を実際に習わせてよかったことは?
Eママ
日本舞踊は、「舞い踊る」との言葉通り、着物を着て舞い踊る美しさが魅力的です。
でも、それ以上に基本にある美しい所作を知って学べたことが最も大切だった気がしています。「礼にはじまり、礼に終わる」との言葉通り、礼儀作法を学ぶことができます。
正座をして挨拶をするだけでなく、玄関に入った際の靴の揃え方や和室での戸の開け方、着物の畳み方や風呂敷の包み方などの礼儀作法も教えていただきました。
これらは、大人でもわかっていないことが多く、子どもと一緒に学べたことは親にとっても良い経験となりました。また、子どもと一緒に学べたことが良い思い出にもなっています。
しかも、子どもは自分で浴衣が着られるようになりましたし、私も子どもに帯を締めてあげられるようになりました。
ーー気になるのが費用の問題です。いくらくらいかかりましたか?
Eママ
みなさん、そこが一番気になると思うのですが、実は「伝統芸能」は次世代への継承を目的に文化庁が「伝統文化親子教室事業」として予算を設けています。
つまり、「日本舞踊」だけでなく、華道や茶道などをはじめとする伝統⽂化を体験・修得できる機会を提供する事業者に対して⽀援を⾏っているんです。
だから、実は「日本舞踊」も気軽に経験することが可能なのです。
費用ですが、確か、息子が習った三味線では、バチを自分で購入した以外に実際に支払ったのは1万5千円程度だったと思います。娘に限っては、最後の発表会のときに親の方が気張ってしまい、着物の着付けとヘアを外でお願いしたのでその費用がかかりましたが、それ以外はなかったと記憶しています。
Eママ
ーーその後、お子さんは三味線や琴、日本舞踊を続けられているのでしょうか?
Eママ
残念ながら辞めてしまいました。
息子は三味線をその後も続けたかったようですが、高学年になり塾通いがはじまったことに加え、学校の課外活動として金管バンドに入ってトランペットを吹くようになったこと。
教室が遠方で送迎が必要だったことも辞めてしまった理由のひとつです。
娘の方も特に「その後も続けたい」とは言わなかったので強制することでもないと思い、辞めてしまいました。
ただ、その後何度か学校で琴のほか、茶道などを授業で行うことになり、少なからずとも「日本舞踊」を習ったことは役に立ったようで、今も習ったときのことは覚えているようです。
親としてはこの経験を覚えていてくれて、何かしら将来の肥やしになってくれればいいと思っています。
「日本舞踊」を習うメリット
そこで、子どもが日本舞踊を習わせることで身につくメリットをご紹介します。
●礼儀作法が身につく
「日本舞踊」の稽古は「礼にはじまり礼に終わる」と言うように、お辞儀の仕方も「会釈(15度)から最敬礼(45度)」まであることを学びます。
また、目上の方やお弟子さんと接するため言葉遣いや配慮の仕方など、基本的な礼儀作法を身につけることができます。
●浴衣が自分で着られるようになる
小学生であれば低学年のお子さんでも一人で浴衣が着られるようになり、帯も基本と言われる「文庫結び」ができるようになります。夏祭りなどに行く際も自分で着ていけるので、お友だちに自慢できます。
●姿勢がよくなる
お稽古は、着物を着て行うため姿勢を良くしないと着崩れを起こし、だらしなく見えてしまいます。また、きれいな踊りをするには重心と呼吸を意識しながら正しい動きを練習することで、体幹が鍛えられます。
●人前に立つことが怖くなくなる
「日本舞踊」は舞台で多くの人の前に一人で立って踊りをすることもあります。そのため、度胸がつき、日本舞踊の美しい所作を磨くことで「表現力」も身につきます。
●集中力がつき、自信や自己肯定感をあげることにつながる
「日本舞踊」は音を聞きながら、心の描写を加えた動きを全身で表現します。想像以上にたくさんの事を同時に行うために「集中力」が自然と養われていくと考えます。
また、発表会に挑戦することで、自分に自信を持つきっかけになります。集中力を高めるトレーニングからお稽古の継続など小さな成功体験が子どもの「自信」につながります。
●歴史は日本文学の学びにつながる
踊りの歌詞には和歌の一説が出て来たり、歴史的な人物が登場し、「日本舞踊」が能や歌舞伎の流れを汲んでいることからも日本の伝統や文化を知り教養も身につきます。
また今後、海外留学をしたり、外国の方と仕事をすることになった際にも「日本舞踊」を習っていたことは大変役立つことでしょう。
さらには、グローバル化のなかで子どもたちの「創造力」を豊かにすると考えられます。
但し、幼稚園や保育園のお友だちの習い事は、水泳やサッカー、体操教室といった運動やピアノなどの音楽が多いのではないでしょうか。
また幼少期は、「●●ちゃんがやっているから私もやりたい」と言ったことも多いので、「日本舞踊」を習い始めても“同年代のお友だちがいない”といった状況があるかもしれません。
特に男児のママやパパは、「日本舞踊は女の子の習い事」と思っている方も多いかもしれません。
「日本舞踊」を習うデメリット
では、逆にデメリットとして考えられることにはどんなことがあるのでしょうか。
●費用がかさむ場合がある
稽古費用は、通う教室(カルチャーセンターから個人レッスンまで)によって約5,000円〜50,000円くらいと幅があります。また、日頃の感謝としてお中元やお歳暮として月謝の一ヶ月分の金額相当をお渡しする慣習もあるようです。
その意味でも、最初は、先に明記した文化庁の「伝統文化親子教室事業」に登録されている教室に参加してみるのが良いでしょう。
●親の負担が大きい
「日本舞踊」お稽古は、袖の扱いを練習するため、浴衣か着物が必要です。そのため、購入するだけでなく、クリーニングなどのメンテナンスが必要です。さらに子どもの成長に合わせて、着物や浴衣を買い直したり仕立て直したりする必要も出てきます。
また、発表会のときは子どもの着付けや髪結い、舞台道具の準備などが必要になる場合もあります。
でも、発想を変えればこれを機に、ママとパパが着付けと髪結いをマスターできるチャンスとも言えるのではないでしょうか。
国際社会を生きる子どもたちの自覚と誇りを養うために
社会や経済のグローバル化が進み、子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。
国際社会で活躍する日本人の育成を図るためにも、我が国の郷土と伝統、文化を受け止めてその良さを継承・発展させるための教育を充実することが重要です。
このことは教育基本法第2条(教育の目標)第五項に「伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(略)態度を養うこと」と規定されているように学校教育における重要な課題にもなっています。
「表現力」や「創造力」を育む日本舞踊の魅力
「日本舞踊」は、能や歌舞伎の流れを汲む一方で、小さな子どもから男女問わず何歳までも続けることができます。
そして、女性が男役を踊るかっこよさも、男性が女役を踊る美しさも、どちらもあるのが「日本舞踊」です。
踊りの題材は、日本の偉人の活躍や歴史的事件をテーマにしたもの、日本の自然や風物を取り上げたもの、恋愛など人々の喜怒哀楽など様々で、「歌舞伎」「能」「狂言」「人形浄瑠璃」など、日本の他の伝統芸能の演目からアレンジしたものもあります。
また役には、吹く風や木、山に出る月など自然の一部の表現もあります。人が風景描写をすることは他の舞踊にはあまり見られない特徴です。
何より、「日本舞踊」をきっかけに自身のアイデンティティと日本文化を知るきっかけになるのではないでしょうか。
ただし、「日本舞踊」は、スポーツ競技のように勝敗が付くわけでもなく、成果がわかりにくい一面があります。また、できるようになったことが生活ですぐに役立つわけでもありません。
しかし、経験を重ねることで「礼儀マナー」だけでなく「表現力」や「創造力」など、結果的に子どもが成長する上で多くのことを身につけていることに気づくでしょう。
また幅広い年齢層の中で行うので、幼少期から行うことで「社交性」を育むこともできます。
子どもの習い事の選択肢として、ぜひ検討してみてください。
日常生活で触れる機会がなく、子どもだけでなく私自身が舞台そのものをきちんと見たことがないと思います。