不登校の解決策は原因探しより居場所作り【高濱正伸】
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これまで以上に不確実な時代を生きる子どもたち。長年教育現場に携わり、多くの親子を見続けてきた花まる学習会代表・高濱正伸先生に、親子が直面するさまざまな課題に対し、親としてどう考え、どのように子どもと関わっていくべきか語っていただきます!今回のテーマは「不登校」です。
高濱先生:不登校と一言にいっても、理由はそれぞれ違うため一概にはいえませんが、小幡和輝くんの『学校は行かなくてもいい』(エッセンシャル出版社)は、リアルな長い不登校から立ち直った人たちの声が載っていて、すごく説得力がある一冊です。
その中に、「親というのは原因を探りたがるもの」と書かれていました。
「どうしてうちの子だけ学校に行くことができないのか?」と悩み、「誰かに叩かれた」「先生になにか言われた」と聞けば、それが原因と安易に決めつけてしまう。
もちろん悪気があるわけではありませんが、原因を知りたいのは親自身が安心したいからなんです。
それに対し、不登校の人たちが異口同音に言っているのは「ひとつの原因があって不登校になるのではなく、なんとなく行かなくなる。その感じを分かってほしい」ということ。
リアルだし、経験した人にしか言えない言葉だと思いました。
最近では選択的不登校も増えていて、語学から数学まで、世界中でよいといわれているさまざまなオンライン教育を実践しているご家庭や、ホームスクーリングですごい結果を出しているご家庭もいくつも知っています。
とはいえ、学校に行くことで得られる「さまざまな人に触れる」ことは、重要な教育機会です。学校に行かない場合は、習い事やボランティアなど、なんでもよいので誰かと一緒にわいわいする時間と場所を作ってあげましょう。
勉強以上に大切なのがこの「目が輝く居場所」です。
小幡くんはゲームがすごくうまいことから「学校には来ないけど、あいつまじですげーんだぜ」と周囲から評価されていて、みんなにゲームを教えていたそうです。
腫れもの扱いや配慮ではなく、「認められている」と感じられることがどれだけ大切か分かるエピソードですね。
そして、小幡くんのもうひとつの居場所が、近所に住む、なんでも話を聞いてくれる従兄弟のお兄さん。この二つの居場所があったことがとてもよかったと話してくれました。
不登校には「居場所」が重要なキーワードで、逆に、事が深刻になった事例を分析すると、家以外にどこも行く場所や気持ちを打ち明けられる相手がなく、親も子も行き詰ってしまったようです。
サッカー、剣道、野球などの習い事でもいいし、小幡くんのように近所のお兄さんでもいい。とにかく、「そこにいるときは幸せ」と感じられる場所があることが、人間の根源ではないでしょうか。
これは教えていただいた話ですが、児童養護施設で育ち、その後大活躍している人たちの共通点は、たった一人でいいから「自分を贔屓してくれる大人がいたこと」だといいます。
要するに、「ここだけは絶対に間違いない」というものを掴みながらしか、人は生きていけないんです。
母校、郷里など、大人になってからも、自分が帰ることのできる「居場所」というのはキーワードです。
家族以外と交流ができ、楽しかったりほっとできたりする場所があれば、随分状況はよくなるでしょう。
もうひとつ、専門家が言っているのは「朝はちゃんと起きること」。
居場所がちゃんとあり、生活リズムを崩さなければ、不登校でもチャンスは何度でもやってくるし、大人になって活躍している人はたくさんいます。
親としては「みんなと同じところに戻さなきゃ」と考えるでしょうし、やればやるほど原因を探してなにかの責任にしたくなってしまいます。
ですが、学校に行くも行かぬも「試練とはあるもの」なので、そこは運命と受け入れましょう。
「この人が分かってくれていれば大丈夫」「この人は自分をかわいがってくれる」というものを掴むことができれば、どんな試練も乗り越えることができるでしょう。
もうひとつ、これにつけ足すとしたら「親自身のつながり」です。
不登校の親同士の自助組織では、同じ悩みを共有したり、不登校後に社会に出た人たちの話も聞いたりすることができます。
不登校の親御さんは「私のせいで…」と自分を責めがちですが、お子さんと自分が笑顔になれることを考えましょう。
2022.02.24