「教える」より「学ぶ」。主体性のある子どもを育てる環境の作り方

「教える」より「学ぶ」。主体性のある子どもを育てる環境の作り方

2018.09.17

Profile

吉村直記

吉村直記

社会福祉法人みずものがたり 理事/おへそグループ統括園長

社会福祉法人みずものがたり 理事・おへそグループ統括園長。 1985年8月11日佐賀県生まれ。5歳の時交通事故で父を亡くし、母に兄弟3人の真ん中として女手一つで育てられる。ロータリー財団の親善大使として派遣されメキシコ合衆国へ一年間留学。大学在学中に幼児教育に興味を持ち、関東の保育コンサルティング会社に入社。1年半で50件以上の保育園の立ち上げや運営に関わりながら乳幼児教育を学ぶ。 25歳でおへそ保育園園長に就任。現在、0歳~12歳までの子どもたち、障害を持つ子どもたちが共存する“おへそグループ” を統括。執筆・講演活動、また、一男一女の父として子育てにも奮闘中。

子どもの主体性を伸ばすにはどのようなことをしていけばよいのか、考えているママやパパは多いのではないかと思います。おへそグループ統括園長の吉村直記さんに学ぶ環境の作り方や意欲的に子どもが主体性を持つために必要なことを教えてもらいました。

学ぶ構えを育てる時期

おへそ保育園の園児_04

幼児期は、「教える」という視点よりも、子ども自身が「学ぶ構えを育てる」時期と言われています。

興味関心を広げ、主体性を持って、子ども自ら遊び、学びを楽しむ姿を大切にしていく必要があります。

その姿があればこそ、次の学びへの意欲、関心が沸いてきます。

私の方針として、子どもたちが好きな遊びを見つけ、遊び込むことを大切にしているのですが、たまに、保護者様より「自由な生活をしていて、小学校に行くようになると決められたことをしなければならないので、子どもが対応できるか不安です」といった質問をされます。


熱中する力が次へのステップ

おへそ保育園の園児_05

しかし、自分の好きなことにも熱中できないようでは、好きではないことに興味を見出すことなど出来ないのではないかと思います。目の前の好きな遊びに時間も忘れるほど熱中する力が、次の世界に進むステップだと私は思っています。

楽しい体験は意欲、学びにつながる

おへそ保育園の園児たち_01

体験こそが背中を押す

楽しい体験を積み重ねた子どもや、何かに没頭するような体験がある子どもは、新しいことへの意欲が高く、新しいチャレンジもスムーズです。


「これをやってみても楽しいかもしれない・・・」
「前も新しいことへチャレンジして面白かった」


など、過去の楽しい体験が背中を押してくれるのでしょう。


楽しい体験=伝えたいに変わる

おへそ保育園の園児_06

週末に楽しい思い出をつくってきた子どもは、保育者にニコニコしながらお休みの様子を教えてくれます。旅行みたいに大きなイベントだけでなく、お母さんと公園に行った話や、お父さんが『大きなオナラ』をした話などを詳細に教えてくれます。

楽しい体験の積み重ねが、子どもの心を揺り動かし、誰かに伝えたいという意欲に変わり、それを言葉として表現することで、言葉の発達や思考力の向上などの大きな学びにつながっていきます。

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「教える」より、子どもの「学ぶ」を大切に

おへそ保育園の園児_02

学ぶ環境作り

私の園では、先生が「何を提供するか」よりも、子どもたちが学ぶ環境をどれだけ作っていくかということを大切にしています。

例えば、年長さんのほとんどの子が将棋に取り組んでいます。世間で将棋ブームだったこともあり、将棋を環境として準備し、それに併せて保育士たちは、子どもでも分かるような説明書を作成してくれました。 子どもたちは、その説明書を解読し、将棋が少しずつ分かるように学びを得るようになってきました。

また、家にかえって、お父さんやおじいちゃんに将棋の話をすると、親身になって教えていただけるようで、子どもたちは一所懸命に学んで、日に日に上達していきました。

今では、保育士は誰も勝てないほどに年長さんたちの腕前は上がっていっています。


見て学ぶ、真似して学ぶ

その年長さんたちを見た年中さんたちは、年長さんへのあこがれがありますから、見て学ぶ、真似をして学ぶ、ことを実践していきます。

「さあ、将棋を教えます」と言っても興味を持たない子どもたちも、環境ひとつで、主体的に学ぶことが促されていきます。

「やれ」より、子どもたちの「やる!」

おへそ保育園の園児_03

ドイツの有名なサッカーコーチが、日本の高校の監督に就任し、最初に驚いたことは、「明日はオフだ」と伝えた時の高校生たちが歓喜だった、という記事を読んだことがあります。高校生たちが普段の練習で「やらされている」と感じていたことが要因かもしれません。ちなみにドイツの高校生のチームは、突然のオフの宣告をすれば、「なぜ明日は練習ができないのか」という質問が最初に出るそうです。

人が自主的に何かに取り組んでいる時は、「やらされている」という感覚はないので、子どもたちにとって「オフ」はご褒美ではないのでしょう。当園の年長さんに、「明日、将棋はできませんよ」と言えば、「なんで?」という質問になることが容易に考えられます。ドイツの高校生も同じ気持ちなのでしょう。

周りからの「やれ!」という言葉より、子どもたちの「やる!」という意欲を大切に、主体性のある子どもを育んでいきたいものです。

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吉村直記

吉村直記

社会福祉法人みずものがたり 理事・おへそグループ統括園長。 1985年8月11日佐賀県生まれ。5歳の時交通事故で父を亡くし、母に兄弟3人の真ん中として女手一つで育てられる。ロータリー財団の親善大使として派遣されメキシコ合衆国へ一年間留学。大学在学中に幼児教育に興味を持ち、関東の保育コンサルティング会社に入社。1年半で50件以上の保育園の立ち上げや運営に関わりながら乳幼児教育を学ぶ。 25歳でおへそ保育園園長に就任。現在、0歳~12歳までの子どもたち、障害を持つ子どもたちが共存する“おへそグループ” を統括。執筆・講演活動、また、一男一女の父として子育てにも奮闘中。

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