おしゃぶりと歯並びの関係。長期使用が及ぼす影響や使用時の注意点

おしゃぶりと歯並びの関係。長期使用が及ぼす影響や使用時の注意点

2020.12.25

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坂部潤

坂部潤

医療法人社団スマイルベア 小児歯科専門医 キッズデンタル

歯学博士(小児歯科学)。日本大学歯学部兼任講師(小児歯科学)。日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。日本歯科矯正学会会員。元UCLA小児矯正歯科客員研究員。大学病院での小児歯科専門医療の実践、米国UCLA小児矯正科への留学経験を経て、キッズデンタル代表に就任。医療法人スマイルベアの理事を務める。専門は小児歯科、矯正治療。現在は4児の父。

子どもの歯並びに影響が出ないか気になるおしゃぶり。定番の育児グッズですが、いつからいつまで使用してよいのか迷うこともあるでしょう。今回は、おしゃぶりが歯並びに与える影響や効果、使う際の注意点、卒業の仕方について詳しく解説します。

おしゃぶりの長期使用が不正咬合の原因に

子どもがなかなか泣き止まないとき、おしゃぶりを使いたいと考えても歯並びに問題が出ないか不安になることもあるかもしれません。日本小児歯科学会の見解や、歯並びへ具体的にどのような影響があるのかについてご紹介します。


将来の歯並びに悪影響を及ぼす

日本小児歯科学会によると、おしゃぶりを長く続けたり間違った使い方をした場合は、永久歯の歯並びに悪い影響を与える可能性があるとされています。

歯が生えてくる時期におしゃぶりの使用が習慣化していると、前歯が生えるのを妨げたり、押し出したり舌を正しい位置に収めることができず、開咬(オープンバイト)や、生えてくる前歯を押し出してしまい上顎前突になることも。

ほかにも、上下の奥歯が横にずれ、きれいにかみ合わない交叉咬合(こうさこうごう)といった不正咬合になるケースもあります。

子ども
iStock.com/Lolkaphoto

開咬(オープンバイト)とは、奥歯をかみ合わせているのに、上下の前歯がきれいに噛み合わず、すき間ができている状態のこと。前歯で食べ物を噛み切りにくい、奥歯に負担がかかったり、食べ方に悪い癖が出る場合もあるため注意が必要です。

また、上顎前突(じょうがくぜんとつ)、いわゆる出っ歯が悪化すると、ものが上手く飲みこめない、前歯の間に舌を押し込んで飲みこむ癖がつくなどの恐れもあります。

交叉咬合は、おしゃぶりによる頬の力で上アゴが狭くなることでアゴが左右にずれ、正面から見たときに前歯の正中線がずれてしまいます。

これらの不正咬合は、虫歯や発音のしにくさ、嚙む力が弱くなる原因になることもあり、場合によっては、矯正治療が必要になるケースも。子どもの矯正治療の開始時期は、歯並びやあごの状態によって異なるため、適切な治療ができるよう専門医を必ず受診しましょう。


おしゃぶりの習慣化は発語に影響も

1歳をすぎると、少しずつ言葉を話し始めるようになりますが、おしゃぶりの長期使用による不正咬合や舌運動の異常などで結果的に発音が悪くなるケースが考えられます。

おしゃぶりの使用によって言葉がけやふれあいなどの親子のコミュニケーションが減少しないように注意しましょう。

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おしゃぶり使用時の注意点

おしゃぶりを使うときは、どのようなポイントに注意するとよいのでしょうか。


おしゃぶり使用の推奨時期

おしゃぶりの使用は、歯が生え揃う前であれば悪い影響を与えることはほぼありません。

新生児期から2歳頃までの子どもは、唇に触れたものを反射的に吸う「吸啜反射」が備わっているため、個人差はありますが、おしゃぶりを吸うと母乳やミルクを吸っている感覚になり、気持ちが落ち着いたり安心して眠れたりする子どももいます。

赤ちゃん
iStock.com/katleho Seisa

現在は、歯並びが悪くならないよう歯やあごの発達を阻害しない工夫が施されている歯科矯正型のおしゃぶりも多数発売されています。


月齢に応じたものを選ぶ

おしゃぶりにはS・M・Lなどといったサイズがあるため、子どもの月齢に合わせて選ぶことが大切です。サイズが合わないものだと、子どもが吸わない可能性も。

サイズ展開だけでなく、乳首の形や材質もメーカーによって異なるため、購入時には必ず確認しましょう。

おしゃぶりは赤ちゃんが直接口にするものなので、使用の際は衛生面にも注意が必要です。1度使用したおしゃぶりは細菌が繁殖しやすくなっているため、こまめな消毒を心がけましょう。

消毒
iStock.com/PierreOlivierClementMantion

消毒の際は哺乳瓶と同様に、煮沸やつけ置き、電子レンジ消毒などを行うことが重要です。

また、おしゃぶりの使用が習慣化していると、おしゃぶりがないと落ち着かない、精神的に不安定になるといった「おしゃぶり依存症」になる可能性も。さらに、卒業がスムーズにいかない場合もあるため、子どもがどうしても寝ないときや泣き止まないときの対策として一時的に使うようにしましょう。

おしゃぶりに頼らず、子どもがしたい・して欲しいことを汲み取ってあげることもとても大切です。

卒業は2歳~3歳頃を目安に

おしゃぶりは、子どもから自然に卒業することもあります場合もあれば、なかなか卒業できない場合も。子どもによって個人差がありますが、およそ2~3歳頃を目安に卒業するとよいでしょう。

突然使えなくなると子どもが混乱し兼ねないため、例えば、おしゃぶりを卒業させたい日を決めたら、その1カ月程前から「この日が来たらおしゃぶりとバイバイしようね」などやさしく子どもへ言い聞かせたり、少しずつ使用時間を短くしたりと工夫しましょう。

親子
iStock.com/damircudic

ときには、子どもが嫌がり、卒業がスムーズに行かない場合もあるかもしれません。その場合、おしゃぶりの先をカットして吸いにくい不快感を与えることで、子どもが自分から卒業したいと思うように促すという方法もあります。

また、卒乳などの場合と同様に、母親が強い意志を持ち、周りの家族にも協力してもらうことも必要でしょう。抱っこや背中トントンなどのスキンシップを積極的にとりいれながら、子どもの様子やペースにあわせてすすめていきましょう。


監修:坂部潤(医療法人社団スマイルベア 小児歯科専門医 キッズデンタル)

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坂部潤

坂部潤

歯学博士(小児歯科学)。日本大学歯学部兼任講師(小児歯科学)。日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。日本歯科矯正学会会員。元UCLA小児矯正歯科客員研究員。大学病院での小児歯科専門医療の実践、米国UCLA小児矯正科への留学経験を経て、キッズデンタル代表に就任。医療法人スマイルベアの理事を務める。専門は小児歯科、矯正治療。現在は4児の父。

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