【小児科医監修】ビタミンD欠乏症とは?赤ちゃんに出る症状とくる病との関係性

【小児科医監修】ビタミンD欠乏症とは?赤ちゃんに出る症状とくる病との関係性

近年、乳幼児の患者が増えている病気のひとつにビタミンD欠乏症があります。ビタミンD欠乏症とはどのような病気か気になるママに、今回はビタミンD欠乏症の症状、原因、小児科医に相談するポイント、治療や診断方法、赤ちゃんや子どもに増えつつある「くる病」と「骨軟化症」の関係性などについて詳しく解説します。

ビタミンD欠乏症とは

ビタミンD欠乏症とは、人間の成長に必要な栄養素の1つであるビタミンDの摂取不足、もしくは体内でうまく作られないことなどにより不足する状態です。

食糧事情が悪かった太平洋戦争直後に、日照時間の短い地域でよくみられた病気の1つでした。

しかし、現代では、日光浴の制限や菜食主義、食物アレルギーに対する過度の食事制限などにより、紫外線の少ない冬季や地域では、乳幼児のビタミンD欠乏が起こりやすくなっています。特に母乳栄養では母乳中のビタミンD含有量は少ないためビタミンD欠乏には注意が必要です。

乳幼児に出やすいビタミンD欠乏症の症状とは

ビタミンD欠乏症になると、どういった症状が出るのでしょうか。乳幼児に出やすい症状を調べてみました。


脚の変形

ビタミンD欠乏症の乳幼児のほとんどにみられる症状の1つです。O脚になり、同じ月齢の子どもに比べて歩き方がたどたどしかったり、歩き始める時期が比較的遅いことやまた歩行時に痛がるなどのケースがあるでしょう。


脊椎などの変形

骨の成長が芳しくないため、脊椎が変形してしまうこともあるようです。脊椎などが曲がることで、首や背中に痛みが出たり、猫背など姿勢に影響を及ぼすこともあるでしょう。


頭蓋骨の軟化

乳児期にビタミンD欠乏症の診断基準となる要因のひとつに頭蓋骨の軟化があります。特に頭の大泉門(頭頂部より少しおでこよりのところにある、ひし形のやわらかい部分)が大きく広がっていたり、閉鎖が遅れたりすることも症状のひとつです。

また、頭を指で押すと軽い力でもへこんだ状態になってしまうこともあります。


けいれん

ビタミンD欠乏症が重症化すると、カルシウムの吸収が低下し、低カルシウム血症という状態に陥り、それが原因で稀にけいれんを起こす場合があります。


おすわりやハイハイを始める時期が遅い

ハイハイする赤ちゃん
iStock.com/Konstantin Aksenov

骨や筋肉が十分に発達できないため、同じ月齢の子どもに比べて、おすわりやハイハイを始める時期が遅い子どももいるようです。多くの赤ちゃんが、歩きはじめの時期はたどたどしい歩き方だったり、あんよより抱っこを好んだりするものです。

しかし、ママが歩き方に違和感を覚えたり、不安がある場合には、かかりつけの小児科医に相談してみましょう。

ビタミンD欠乏症とくる病、骨軟化症との関係

ビタミンD欠乏症とセットで語られることが多い病気が、くる病、骨軟化症です。

それぞれの関係性について解説します。


ビタミンD欠乏症の症状が進むとくる病や骨軟化症に

ビタミンDは、腸からカルシウムやリンを吸収するのに重要なビタミンです。ビタミンDが欠乏するということは、必然的にカルシウムとリンも不足の状態につながります。その症状が進行した場合、小児だとくる病、成人の場合は骨軟化症になり、脚の変形、歩く際に痛みを生じる、骨がもろくなり骨折しやすいなどの症状がみられます。

ビタミンD欠乏が進行し、くる病になってしまった場合の診断について、ご紹介します。

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くる病の診断とは

くる病かどうかを調べる主な方法は、主に2種類あります。

1つめは血液検査です。血中のカルシウムやリン、活性型ビタミンDなどを測定します。
2つめはX線写真(レントゲン)です。骨の変形具合を確認します。

いずれの検査をする場合でも、まずは「ママがくる病やビタミンD欠乏を疑う理由」を医師に説明し、検査が必要かどうかも含めて相談してみましょう。

ビタミンD欠乏症の治療方法とは?

栄養の摂取不足によるビタミンD欠乏症では水酸化ビタミンDを内服します。また、ビタミンDを豊富に含む食べ物を積極的に摂取することも大切です。

どういった方法で治療をすすめるか、投薬が必要かは、きちんと診断をしてもらい、そのうえで医師と相談して決めるようにしましょう。

ビタミンD欠乏症の予防法

日常生活の中でできることを中心に、ビタミンD欠乏症にならないための方法をまとめてみました。ぜひ今日から心がけてみてください。


程よく日光浴を

ビタミンDは日光を浴びることで形成されます。紫外線による赤ちゃんの肌へのダメージが心配なママもいるかもしれません。長時間や炎天下での日光浴ではなく、定期的に短時間、快適なレベルで太陽の光を浴びることができるとよいでしょう。特に気候的に年間を通して日照時間が短い地域の人は、晴れた日を上手に使って、意識的に日光浴をさせてあげましょう。4月下旬〜10月までの紫外線が多い時期は、お出かけする時間帯によって服装を変えるのもポイントです。

1日のうちで紫外線量が多くなる、10時~14時に外出する際は、帽子やベビーカーの幌を使って上手に紫外線対策をしましょう。それ以外の時間帯にお出かけする場合は、適度に日光浴をする目的でおでかけするといいでしょう。


バランスのよい食事を心がける

魚、バター、卵黄
iStock.com/happy_lark

食事からもビタミンDを摂取できます。

魚(魚肉、ウナギ、しらす干し、アンコウの肝など)やきのこ、卵黄、バターなどにビタミンDが多く含まれているので意識して摂取しましょう。母乳で育てている赤ちゃんの場合は、ママがバランスの取れた食事をするようにしましょう。ママがしっかりビタミンDを摂取することで母乳中のビタミンDも増加することが、確認されています。

ビタミンD欠乏症の主な症状をチェックし、早めに診断を 

ママとあかちゃん
iStock.com/RichLegg

ビタミンD欠乏症は、赤ちゃんが成長するうえで欠かせないビタミンDが不足している状態のことです。ビタミンD欠乏症は、小児特有の病気であるくる病や、大人がかかる骨軟化症などの病気の原因になります。

「頭が柔らかいな」や「O脚や歩き方が気になるな」などの違和感を覚えたらかかりつけの小児科医に相談しましょう。また、ビタミンD欠乏症は、普段の生活で予防することができます。適度な日光浴や魚やきのこなどのビタミンDを豊富に含むバランスの良い食事を心がけてください。


監修:千葉智子先生(上高田ちば整形外科・小児科 副院長)

Profile

千葉智子(上高田ちば整形外科・小児科)

千葉智子(上高田ちば整形外科・小児科)

上高田ちば整形外科・小児科 副院長。 小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。

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