子育て×脳科学①ジェンダーレス時代の男女脳と考え方【てぃ先生×瀧教授】

子育て×脳科学①ジェンダーレス時代の男女脳と考え方【てぃ先生×瀧教授】

子育てや教育テーマをお届けする動画記事コンテンツKIDSNA TALK。第5弾は、現役保育士のてぃ先生と脳科学者である瀧 靖之教授、KIDSNA編集長・加藤による対談が実現!男女脳や天才と遺伝といった「脳の疑問」をテーマに理論と実践、それぞれの立場で熱く語っていただきます。

KIDSNA TALK
220202

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男の子脳と女の子脳の違いは「性別」より「個人差」
加藤
ジェンダーレス時代ではありますが、脳科学の視点で「男の子と女の子の特徴が顕著になる」のはいつごろからでしょうか。
瀧教授
まず、大事なことは「男の子だから」「女の子だから」とステレオタイプに決めつけることは脳科学的にも大きな問題があります。

確かに、「男の子と女の子それぞれ100人ずつ」のグループで見たときには、いくつかの脳の領域と機能に差があり、幼少期に脳の形態や血流に違いが見られると言われています。

但し、重要なのは「個人差がとても大きい」ということです。
てぃ先生
さまざまな本に「女の子の方が言語発達が早い」と書いてありますが、それは事実ですか?
瀧教授
グループで見たときに女の子の方が概ね1〜1歳半頃の発達が少し進んでいます。そのため、女の子は言語発達が早いと言われるのだと思います。
てぃ先生
よく、「女の子は本当におませさんだよね」と言われることがありますが、ある意味、脳科学的には正しいと言えるのですね。
瀧教授
そうです。私たちの研究結果でわかっていることと、てぃ先生が現場で見て感じていることはほぼ同じだと思います。
てぃ先生
そういう意味で、男の子は電車や動物の名称を覚えるのがとても得意ですよね。
瀧教授
女の子は、「共感性」や言語に関する「コミュニケーション能力」。それに対して男の子は、「論理性」。例えば、「なぜ、車が動くのか」を考えたり、順番や分類をしたりするシステマティックに考える能力に優れている傾向が見られると言われています。

だからと言って、このグループで見た傾向をひとりの子どもに対し、「女の子だからコミュニケーション能力が高いはず」とか「男の子だから人の気持ちがわからない」といった、決めつけはよくないです。
てぃ先生
どっちが優れているということではないですもんね。
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子どもが伸びるのは「苦手克服」より「得意を突き抜けさせる」
加藤
個人差があるという前提のもとに、男の子と女の子で声かけは変えた方がいいのでしょうか?
瀧教授
女の子の「共感性」と男の子の「論理性」という観点から考えれば、意識として持っておくことは大事だと思います。

ですが、それ以上に大事なことは個人差なので、男の子で共感性の高いコミュニケーション能力の高いお子さんには、たくさんのコミュニケーションをとった方がいいです。

少なくとも「あなたはこうだからこうあるべき」といった決め付けは絶対によくないです。そういう意味でもこれからの教育は、個別化が深まっていくと思います。
加藤
あるべき論はよくないですね。
瀧教授
例えば、子育てをする上で「苦手をなくそう」という考えがある一方で、脳科学の視点では「得意なことを突き抜けさせる」ことが自信につながる教育になると考えます。

ただ一方で、教育現場は「規律を伝える」ということも大切なので、なかなか難しいことではあります。

それでも、男女という性差に関係なく「あなたはこれが得意だから、これを伸ばしていきましょう」という一人一人に合わせた声かけが大事です。
てぃ先生
得意なことを伸ばしてあげることで、自己肯定感も高まりますし、苦手なことにも挑戦する気持ちがわいてきますよね。
瀧教授
脳科学的には、ワクワクする楽しいことに時間を割いてから、苦手なことをすることが良いとされています。
てぃ先生
なるほど!順番が大事ということですね。

でも、保護者にしてみれば、「得意なことを伸ばしてあげたい」と思う気持ちがある一方で「30点を60点にしたい」という願望もあると思います。
加藤
親の願望としては、苦手なことも平均点を採った上で、得意なものが突き抜けてあったらいいなとは思いますよね。

学校やルール上で、できないこともあると思うのですが、そう言った場合に親ができるコミュニケーション方法はありますか?
瀧教授
難しい質問ですね。私を含めてすべての親が悩むことだと思います。人に迷惑をかけないようにと思う一方で、親としてはやはり順番にもこだわってしまいます。

そういう意味でも親は心の余裕を持っていなければならないと思います。本当に難しい問題です。
2
てぃ先生
そのバランスは難しいですね、やはり。
加藤
自分に言い聞かせます。苦笑
脳の多様性の時代「生物学的な性 ≠ 心の性」
加藤
てぃ先生にお聞きしたいのですが、お子さんの得意な部分を見つけて伸ばしてあげたいと思ったときに、保護者の方から「それはやめてください」といった話をされることはありますか?
てぃ先生
昔よりは少なくなったと思いますが、どうしても「女の子らしい遊び」「男の子らしい遊び」って求められがちです。

極端な例で言えば、男の子がおままごとをしているだけで「大丈夫でしょうか」と心配されることがあります。

その場合も、保護者の方の価値観は否定せずに、柔軟にお伝えしていくようにしています。もちろんお子さんに対しては、楽しんで行っているわけですから、悪いこととは決して言いません。
加藤
まだそういう考えは、根強く残っているんですね。
てぃ先生
そうですね。もちろん悪いことではないのですが、そういう考えもあるんだな、と思っています。
加藤
そういう意味では、性別にかかわらず脳の多様性はありますか?
瀧教授
最近の脳科学の知見からも、生物学的な性と心の性は必ずしも同じではないことがわかっています。つまり、身体的には男性らしい人であっても脳が女性らしさを兼ね備えていたり、逆に女性らしいと言われてる人が格闘技が好きだったりして必ずしも一致はしません。

私たちの脳は、形もネットワークの走り方もひとりひとり違いますので、考え方も異なります。だからステレオタイプでいう「男らしさ」「女らしさ」という枠組みは、モザイクになっています。

つまり、性別で区別されている男女が融合しています。だからこそ事実を受け入れることが大事です。
てぃ先生
服やおもちゃがジェンダーレスになっても、椅子に座るときに男の子は足を広げて座ってもOKでも、女の子だと「ちゃんと座りなさい」となりますよね。そこは変わらない気がします。
瀧教授
男女という性別的な考え方は100%なくならないと思います。但し、個性を大切にすることが大事である、ということを常に念頭において置く必要があります。
加藤
子どもになぜ?と聞かれたら答えに困りますよね。
瀧先生
私たちは子どもに聞かれたらすぐに答えを出そうとしますが、実はその答えをあえて子どものうちから一緒に考えて探すことが大事だと思うんです。それでいいんではないでしょうか。

答えの出ない答えを一生懸命探すこと、モヤモヤした感情を持ち続けることは学業成績につながるんです。だから、そういう親が答えに困る問題にぶつかったときには、一緒に考えるのがいいのだと思います。

その前提を頭に置いた上で、「女の子だから」「男の子だから」という言い方は避けなければいけませんし、価値観も変わっていくと思います。それに合わせて私たちの脳もどんどん変わっていくことでしょう。
てぃ先生
家庭によっては、「ママとパパがそうしている方が見ていて嬉しいから」という答えでもいいんですよね。社会的な答えではなく、その子が納得する答えを見つけていく。
加藤
子どもの話を聞いてあげることが大事ということですね。
瀧教授
トランスジェンダーについても、保護者の方が最初から理解していれば違和感を持たずに接することができます。
てぃ先生
僕もとても気を付けているつもりではありますが、自身がランドセルひとつとっても、「男の子は黒や紺、女の子は赤」という環境の中で育ってきたので、抜けきれていない部分がどうしてもあります。やはり大人の意識は大事ですよね。
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加藤
根付いちゃっていることがあるので、難しいですよね。
てぃ先生
最近はおもちゃを扱うお店でも「男の子用・女の子用」といった区分けを無くしていますよね。
瀧教授
洋服もユニセックスのものが増えて少しずつ変わっていっていますよね。
加藤
子どもの洋服売り場はまだ分かれている傾向がありますが、いずれ変わっていくのでしょうね。これからはいろんなタイプの子どもと接していく時代になっていきますね。
てぃ先生
教育者は日々アップデートしないといけませんね。
加藤
学校もその変化に合わせて変わっていく必要がありますね。
てぃ先生
アメリカの話になりますが、男性が娘のおむつ替えのために女子トイレに入ることについての記事を読んだのですが、多くの方が賛同しているそうです。
ひと昔前なら「おむつを替えるためとはいえ、男性が女性のトイレに入るなんてありえない!」と批判的なコメントを含めて議論になっていたと思いますが、だいぶ変わったのだと思います。

最近は、公共の施設でも「子ども用トイレ」ができていますし、しくみがこれからもどんどん変わっていくのだと思います。
男女で「育児の向き・不向き」はない
加藤
今回、最後の話は保護者についてです。パパとママで育児の向き不向きはありますか?
瀧教授
そんなことは絶対ないと思います。

脳の可塑性の観点からも私たちは常に変わる力を持っています。また、子どもを持った以上は「自分は不向きだから」といった考え方は、可塑性からも逸脱ています。
加藤
難しいですよね。やっている方もいらっしゃる一方でまだまだお手伝い感覚の方も多いと聞きますし。
瀧教授
「子育ては共育」とよく言いますが、本当に自分の忍耐力を養い、不自由さを知ります。
てぃ先生
いつも思うけれど、人間力を試されている感じがしますよね。
加藤
自分が育った環境も大きいですよね。視野の広げ方や考え方は、親に植え付けられていることもあります。
てぃ先生
イメージ的には「男性も子育てしてあたりまえ」という考えが浸透してきましたが、まだまだ社会制度やしくみがまったく追いついていないという問題があると思います。

パパの育休率があがってきたとは言え、まだまだ低いですし、子どもが急に熱を出したときにもしくみとして帰れるのは女性の方だったりすると思うんです。
だから、パパたちも「やらなきゃ」って思っている反面、できないことで苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。
加藤
おっしゃる通りだと思います。今の社会的しくみとどう向き合うかは大きな問題ですね。
瀧教授
父親、母親という分け方もそもそもどうなのかなとは思いますが、共に参加していくことで社会が追いついていくのだと思います。
てぃ先生
直接的な育児でなくても間接的な育児でもいいですよね。例えば、ママが負担に思っていることを代わりにやってあげることでもいいですよね。
瀧教授
まさにそうなんです。究極なことを言うと私たちはもっと奥さんに気を使うべきなんですね。それが一番大事なんじゃないかと思います。

脳科学の観点から見ると、人は変わらないように思いますが日々刻刻と変わっているんです。10年前の自分と今の自分は大きく異なり、実は一番わかっているようでわかっていないのが配偶者でもあるんです。わかっていると思い込んでいるために今を知ろうとしないのです。
てぃ先生
面白い!確かにそうですね。
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加藤
確かに相手のことを最初は知りたいから知ろうとするけれど、ある一定期間を過ぎると知ろうとする気持ちは止まりますよね。
瀧教授
「知っているつもりバイアス」が一番世の中的にも問題なんです。
だから、私たちは常に無知であるということをもっと理解したうえで、相手と接することが大事なんだと思います。
てぃ先生
胸に刻みます。なぜならこれは職場でも一緒だと思うんです。
瀧先生
親しくなればなるほど、「知っているつもりバイアス」が大きくなるので、それを避けるために一番良いことは「日常のたわいない会話」です。コミュニケーションを採ることで相手のことを知ろうと思うので、ある種当たり前のことなんですが、それが大事です。

わかっているからなんでも「子ども優先」ってなりがちです。私も偉そうに言っていますけど、なかなかできていないことです。苦笑
てぃ先生
パパママたちの話を聞くと二人の会話が、子どもに関することばかりになっていてお互いのパーソナルについて話さない、とよく言いますよね。
加藤
夫婦二人の時間を設けることは大変、大事なんですね。意識してそういう場を作らないといけませんね。

そして私たちの考え方もそうですが、社会のしくみも常にアップデートが必要なのだとお二人のお話を聞いていてつくづく思いました。
次回のKIDSNATALKは2/9更新予定!お楽しみに!

2022年02月02日

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