教えて、てぃ先生×高濱先生!遊びが育む21世紀型教育

教えて、てぃ先生×高濱先生!遊びが育む21世紀型教育

子育てに関するママパパのさまざまなお悩みに、現役保育士のてぃ先生とKIDSNA編集長・加藤が赤裸々にトークするKIDSNA TALK。スペシャルゲストに花まる学習会代表の高濱正伸先生を迎え、これまで4回にわたってお届けしてきた対談もついに最終回!フリーテーマで、「外遊びの重要性」「食育」「勘所の育て方」などについて、てぃ先生と熱くトークします。

KIDSNA TALK
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加藤
今回の最初のテーマは「遊び」です。屋外での遊びで五感を発達させることが、教育のためにどう役立つのか、高濱先生のお考えを教えてください。
高濱先生
外遊びについては講演会でも3時間は話せます(笑)。

今回は要点だけお伝えしますが、たとえば「発達障害の子どもたちを森の中に連れて行くと、問題行動は起こらない」という報告もあるように、自然というのは「こうだから価値がある」という理屈以前に、もっと芯の部分で、われわれが考える何倍も力があります。

たとえば、頭のよさのひとつが、文章や問題を解くときに、自分なりに補助線をひき、要点が見える、本質が分かるといった、そこに直接は書かれていない答えを導きだす力。

補助線は本人が嫌々していることでは伸びず、やる気を持ってイキイキ取り組んでいるときにこそ見えてくるもの。
加藤
たとえばどんな状態なのでしょうか。
高濱先生
たとえば、サッカーでパスを出すとき「今この瞬間は誰にパスを出すのが最善か?」と考えますよね。サッカーをしている間はずっと補助線を描きっぱなしの状態になります。

かくれんぼなら、「いつもここに隠れるから、裏をかいて逆側に隠れよう」と想像するだけでもいいですね。

野球もサッカーも4人しかいなければ4人でなんとかやろうとするし、整ったサッカー場がなくても、「じゃあこっちの木と、この門柱の間がゴールね」と決めてやり始めます。うまくいいかなければ、ルールを変えようと、完全じゃない場所でも想像力と工夫で見立てていく。

自由に外遊びをさせると、頭がよくなる課題が山ほどあるので、工夫する力、発想力、やり遂げる力が育ちます。今世の中で大事と言われている、21世紀型教育が全部入っているといえるでしょう。
てぃ先生
大人にとっては単純に見える「遊び」が、子どもの成長に重要なんですよね。
高濱先生
外は「感性」を刺激される出来事に満ち満ちている。台風が過ぎたあとは空がいつもよりきれいだということや、冬の朝は空気が澄んでいるということに気が付くかもしれない。ひとつの木をずっと見ているだけでも五感を刺激する発見は毎日あるんです。

川遊びや秘密基地を作ることなど、屋外で自分たちのクリエイティビティを発揮させることは、机の上では学べない勉強です。
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加藤
仰る通りですね。小さい頃は何もないところでも、自分たちで見立てて、全部作って遊んでいたなと思いました。そこでルールを作ったり、何もないなりにどう遊ぶかを考えたりする力がすごくありましたが、すでに整ってるところでしか遊んでないと、その思考はできないですよね。

しかも、都内では整備された公園以外で遊ぼうとすれば「そんなところで遊んじゃダメ」となってしまうでしょうね。
てぃ先生
大人は自然の中での楽しみ方を忘れてしまっているから、子どもに付き合うのがめんどくさいと思うんですよね。

でも、いわゆる「勘」と呼ばれるものってそこから生まれると思うんです。たとえば僕が以前受け持っていた男の子が、「もうすぐ雨が降るよ」と言うと、その後雨が降るんですよ。

その子は常に意識して空を見ていたのか、もしくは雨のにおいがわかっていたのかな。半分勘ともいえるし、屋外でさまざまな経験をしてきたからこそ、得られるものもあったと思います。

たとえば「あの葉っぱ落ちそう」というのも、勘のようにみえて、実はいつもよく見ているからそう分かるのかもしれない。こういうことは屋外じゃないと経験できないですよね。
高濱先生
夕立前の感じとかも、経験があれば「あ、降る」と分かるよね。
加藤
自然っていろんな事があって予測できないですもんね。そのなかで自分が経験したことや、日々の積み重ねたものでできあがっていく感じですよね。
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加藤
勘の話が出ましたが、成長していったときに「勘所」、つまりものごとの肝心な点を押さえる力が大切だと思うのですが、大人でもすごく個人差がありますよね。これは何で決まるものなのでしょうか。
高濱先生
ひとつは経験の総量です。「ここまでは大丈夫だけれど、それを過ぎてしまうとダメ」みたいな勘は、どうなるか分からない状況で、ふり幅の大きい経験を何回してきたかにかかっている。

自然の中では天気が急に変わることや、「まさかこれがこうなるとは…」という予想外のできごとがたくさんありますよね。でかい石を水に落としたら、衝撃で水が思い切り跳ねて、自分の想像以上にものすごいことになってしまうとかね。

そういう体験を何度も積み重ねると、「これくらいでやめておこう」とか「ここまでやっても大丈夫だろう」とか、どんなことをするにしても予想をすることができる。
加藤
最近の親御さんは最初から子どもに判断を任せず、「これはダメ」「これはOK」と制限しがちですが、そうすると機会は失われますよね。
高濱先生
失敗をしなければ、自分で気付くことはできません。

あるとき、花まるの野外体験で、森の中に張ったタープの上に水が溜まってしまい、子どもたちは水をなんとか流したいけれど、あっちに流れてこっちに流れて、いつまでも下に流すことができなかったんです。

そのとき、地元の優しいおじいさんが来て、「こうすればいいんだよ」とタープを斜めにしてジャーっと水を流してしまった。

これは一見とても親切に感じますが、子どもなりに一生懸命考えてやることに意味があったのに、教育の機会を失ったんですよ。

ちょっと痛い目にもあいながら、なんとか世界を分かっていく。その試行錯誤の時間を奪って、さっさと成功する道を教えちゃう。これは、今のお母さんたちにきわめて多いです。
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加藤
以前、てぃ先生とお話しした、「すべてのことは親が待つことができれば解決する」という話にもつながりますよね。結局、すぐできることを求めてしまって、子どもが試行錯誤する時間を待てない。こういう取材をたくさんしていて分かっていても、実際なかなか「待つ」ことができなくて。
てぃ先生
結局、お父さんとお母さんが時間と気持ちの余裕をどう作るかですよね。でも、「時間を作りたい」という意識はしていても作れない現実があるわけで、その時間を作るために、自分たちには何が必要か、何が不要かを考えたほうがいいですね。
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加藤
次は、「5歳の子どもが食への興味がなく、なにか食べたいとも言わない」というもの。たとえば「ご飯を食べなさい」と言っても、数口食べて「いらない」と言うそうです。
「どうやったら食に興味を持ってくれるのか、いろいろなものを食べさせていないことに罪悪感があり、健康面でも不安」というお悩みです。
てぃ先生
僕はよほど栄養失調とかのレベルじゃなければ、そこまで気にしなくてもいいと思いますけどね。
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高濱先生
結局、お母さんの中で「これとこれとこれは〇〇な栄養素が入っているから食べて欲しい」と理想ができているんだよね。「食育」という言葉が盛んになり、さまざまな情報が入ってきますから、「こんなふうに食べさせなければ」というお母さんの理想も高くなっているのでしょう。

でも、子どもって案外必要なものは食べているんですよ。私も体重が標準よりよほど少なくなければ問題ないと思います。
加藤
その子の場合、保育園や幼稚園でどうなのかも気になりますね。園では食べているのであれば、あまり気にしなくてもいいかもしれない。
てぃ先生
どうしても食に興味を持ってほしいのであれば、子どもって自分が関わる物事には興味を持つから、お料理の手伝いをさせるだけでもいいかもしれませんね。

野菜を洗ったり、レタスをむいたり、5歳でもできることはたくさんありますからね。
加藤
家庭菜園で野菜を育てるとかもいいですね。
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加藤
最後の質問は「ママと離れるのをとにかく寂しがる5歳の息子。愛情が伝わってないのでしょうか」というものです。
てぃ先生
愛情が伝わっているからこそ、「大好きなお母さん」と離れることが寂しいのでしょうね(笑)。
高濱先生
われわれから見ると真逆なんですよね。なぜそう受け取るのか本当に不思議です。

私のこれまでの経験で考えられる原因として多いのは、こうおっしゃるお母さんに「弟か妹はいますか?」と聞くとだいたい下がいることが多かった。つまり嫉妬ですね。

お子さんが「〇〇だから保育園に行きたくない」といろいろと理由を言っても、それは全部言い訳で、自分が保育園や幼稚園に行ってしまえば下の子が母親を独占するでしょ。

「本当は自分もママを独占したい」というのは強烈なエネルギーです。下の子が小さければどうしても親の目はそっちにいきますからね。

そのほかにも、お母さんが不安定だったり、子どものことをものすごく心配したりしているときは、子どもにもそれが伝わっています。
てぃ先生
保育園で朝お別れするときもまさにそうですよね。心配している親御さんほどやっぱり子どももすごく不安定。だって子どもからしたら、親が心配するような場所に自分が連れていかれるわけですから(笑)。それは泣くしかないでしょう。
高濱先生
子どもってお母さんをよく見ているから、そのお母さんの目がどんどん緊張していったら、「どうなるの?」「まさか置いてくの!?」となりますよね。
てぃ先生
大人でも「あそこに連れてって大丈夫かなー」とブツブツ言いながら連れて行かれたら、絶対置いて行かれたくないですよね。
加藤
逆の立場で考えたら分かりやすいですね。
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てぃ先生
こういう時、保育園の場合は、必ずしもご家庭やお父さんお母さんとの関わりになにか問題があるとは考えません。

たとえば、それまで楽しそうに保育園に通っていたのに、ある日突然保育園を嫌がるパターンもあります。そういう時は保育園側に何かあることも多い。

別にお友だちや先生になにかされたとかではなくて、たとえば、「いきなり保育園でリトミックが始まって、あまりうまく出来なくて、途端に保育園が嫌になる」というパターンもあります。

だからお母さんたちはなんでもかんでも家庭の中に問題があるという風に考えすぎなくて大丈夫です。
加藤
なるほど。そう言ってもらえると少し気が楽になりますね。ありがとうございました!
全5回にわたってお届けしてきた、てぃ先生と高濱先生とのKIDSNA TALK。

長年教育現場で多くの子どもと接してきているからこそ分かる、お二人の時に厳しく、時に優しい言葉は、子育てで悩んだ時、何度でも読み返したいヒントがつまっていました。

完璧な子育てを目指すのではなく、親側の子どもを見る視点を変えるだけで、毎日の子育てが少しラクになるのではないでしょうか。


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2021年10月13日

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