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【天才の育て方】#06 廣津留すみれ ~ハーバード首席卒業のバイオリニスト
Profile
KIDSNA編集部の連載企画『天才の育て方』。 #06は廣津留すみれにインタビュー。幼い頃から英語とバイオリンに勤しみ、ハーバード大学とジュリアード音楽院を首席で卒業。教育支援団体やエンターテインメント関連会社を設立するなど起業家としても活躍する彼女は、どのように育ちその才能を開花させたのだろうか。
「受験勉強期間は11カ月間」
「学校以外では勉強しない」
こう語るのは、2歳からバイオリンを始め高校時代に国際コンクールでグランプリを受賞、ハーバード大学とジュリアード音楽院をともに首席で卒業した異才、廣津留すみれさん(以下、敬称略)。
ハーバード在学中も全米最古のオーケストラのコンサートマスターを務めるなど複数の舞台で活躍。その後はジュリアード音楽院修士課程に進み、音楽部門の最優秀賞を受賞し卒業する。
社会起業家としても活躍をする彼女の、目標を定め細分化したタスクをこなし突き進む才能はどのように育まれたのだろうか。彼女の育ちを背景に紐解いていく。
二兎追って二兎とも得る
何かを極めようとするとき、ほとんどの人は1つのことに絞り注力するのが定番のスタイルだろう。しかし彼女は同時進行で複数のことを高める道を選び、目標を確実にクリアしてきた。
その思考の元となる幼少期からの取り組みと転機となった大学受験について聞いた。
バイオリンを軸に、4歳で英検3級合格
「バイオリンは2歳から始め、生活の一部であり常に一番に考えてきました。小学校3年で初めてコンクールに出場し、小学校6年からはオーケストラと共演したり日本全国での演奏活動をスタートしました」
ーー英語も小さい頃から始められていたそうですね。
「小さい頃から母が英語の絵本を読んでくれていたので自然と興味を持ち、4歳のとき英検3級に合格しました。英単語記憶や面接の練習はゲーム感覚で楽しかったです」
高校1年の頃にはバイオリンの国際コンクールでグランプリを受賞するなどバイオリンの技術を着々と身につけつつも、県内屈指の進学校に進むなど学業においても手を抜くことはなかったという。
塾に行かずに11カ月でハーバード合格
バイオリンと学業を両立し続けてきた彼女。高校時代に演奏ツアーで訪問したハーバード大学で、学業と課外活動に全力投球する学生たちを目の当たりにし衝撃を受けたという。
両立できる大学の環境に魅了され、ハーバード大学の受験を決意した。
ーーハーバード大学受験に向けた勉強期間はどれくらいあったのですか?
「11カ月ですね(笑)」
ー1年未満ですか?!無理かもしれないという不安はなかったのですか?
「もちろん思いましたが、オンラインで願書手続きができ面接もSkypeでできると知って、タスクさえこなせば希望はあると思いました。
必要な勉強は何か、どの科目で何点取ればよいか、必要な時間などのタスクを細分化してスケジュールを立てるなど、現実的に考えていたのだと思います」
ーージュリアード音楽院にも進まれていますが、高校卒業時なぜ音楽大学を選ばなかったのですか?
「音大に行くと、どうしても音楽優先になりがちですよね。大学進学によって学業を続ける道が断たれるのは自分の人生として違う気がしました。
音楽だけにとらわれず、バイオリンも学業も全力で続けるために、ハーバード大学を選びました」
二兎得るための勉強方法
11カ月という短い準備期間の中でどのように受験勉強を進めたのか、小学校から続けてきた彼女の勉強スタイルから紐解いていく。
授業の内容は時間内にすべて吸収
ーー勉強とバイオリン、どのように両立をしていたのでしょう?
「学校以外の時間をバイオリンの練習にあてられるように、授業の内容は必ず授業中にすべて吸収するように癖づけていました。それができれば、放課後塾に通う必要もありませんよね」
ーー授業以外の時間を毎日バイオリンの練習に充てていたのですか?
「そうですね。友だちと遊ぶ時間はありませんでしたが、学校に行けばみんなに会えるし遊べる。なので特に不満はありませんでした」
幼い頃からの友人は今でもコンサートなどに遊びに来ているという。バイオリン、勉強、友人と、自分にとって大切なものを大事にする術を、彼女は小さい頃から身につけていたのかもしれない。
1時間を5分区切りで12個のタスク設定
ーー忙しい毎日の中で、両立のための時間確保はどのようにしていたのでしょうか?
「タイムマネジメントを大切にする考え方は小さい頃から母に教えられ身についていました。『5分あったら何かできる』というのが母の教育スタイルで、1時間を5分で区切ったら12個違うことができる、という考えをずっと言われていました。
この習慣のおかげで、モチベーションを細かいコマで持つようになり、達成する成功体験をいくつも重ねることができました」
ーー時間管理が思う通りに進まないときの対策は?
「前のタスクが途中でも諦めて次のスケジュールに移るようにしています。次のタスクをスタートさせることが大事。
母に教わったTODOリストは小さな頃から活用していて、付箋を壁に貼ってできた順から剥がしたりリストを消したり、結果が目に見えることをゲーム感覚で楽しんでいたら、予定通りに進むことが多かったです」
隙間時間の活用で英単語20000字習得
ーーハーバード大学の受験に向けて、11カ月という短期間でどのように勉強を進めたのでしょうか?
「SAT Subject Testsでは化学と世界史と数学を受験し、すべての科目において英語で理解し直す作業をひたすら進めました。
例えば化学だと元素記号や化学反応式、世界史なら歴史上の人物の名前をすべて英語で覚えなおしたり、数学では微分積分の英語表現から調べたり。
自分が既に知っていることを英語で覚えなおす作業は、思っていたよりも大変でした」
ーーもう一つの試験SAT Reasoning Testの対策は?
「20000語レベルまで英単語を覚える必要があったので、単語帳をプリントアウトしていつでも見られるように持ち歩き、食事前の5分や通学中の5分など、隙間時間を使ってボキャブラリーを増やしていました」
天才ができるまでのルーツ
ハーバード大学合格のカギとなった時間管理術は、母からの教えが基盤にあるという。グローバルに活躍する彼女のマインドが育ったルーツを聞いた。
勉強に時間を割かない
「中学校の時、宿題に時間をかけていると母に『早く宿題を終わらせて勉強とは違うことしなさい』と怒られたことがあります。『なぜ勉強にそんなに時間を使っているの?』とよく言われました(笑)」
ーー宿題を早く終わらせる、具体的な対策はありますか?
「宿題の答えを最初に写して、その問題の法則を丸暗記するようにしていました。
例えば、数学のテキストには計算式を応用する例題が載っていますよね。応用方法の解説とともに答えも書いてある。
それと同じで、英語や国語の穴埋め問題も、答えを写して穴を埋めてからその単語が入る法則を応用できるよう理解すれば、短時間で宿題の目的は果たせます」
ーー時間の効率化を徹底し、学校の勉強と家庭での学びをきっぱりと分けられていたのですね。
「そうですね、自分でも切り変えしやすかったです。
小さい頃は週末にホームパーティを開いたり、人とコミュニケーションを取る時間も母はとても大切にしてくれていました。体力づくりのために長時間、母と散歩をすることも多かったです」
家族で見つめる先は世界の舞台
「両親はすごくサポーティブで、やりたいことは何でもやらせてくれたし、『世界を舞台にできたらいいね』という考えを教えてくれました。
ポジティブなところも母譲りで、とりあえずやってみて、うまくいったらラッキー。悩んでる時間があったら何か行動していますね」
ーーやはり時間が大切なんですね(笑)。
「この考えが身につくと、取捨選択が得意になります。いらないと思ったら潔く切り捨てて、その時間をもっと大事なものに使う。頭の中での判断がどんどん早くなっていきます」
自分のニッチでバリューをだす
ハーバード大学在学中に母親と共同設立している「SIJ」は、毎年ハーバード大学生を教師として集め、全国から集まる子どもたちに1週間、英語でプログラミングや演劇などを教えている。
現在では小中高校生がアメリカやカナダ、ヨーロッパやアジア諸国などからも集まり、ますますグローバル化するその活動の他にも新たに事業をスタートしたりと、動き続ける彼女が目指す先を聞いた。
ーー今後、さらに実行していきたい目標などはありますか?
「エンターテインメント業界での活動を考えています。
自分は英語も日本語も話せるしパフォーマーとしての視点も持ち合わせています。ハーバード大学とジュリアード音楽院を卒業した点でも、同じ経歴の人はあまりいません。
人と被らない複数の視点を持っていることは、私の強みでもあります」
ーー起業においても、自分の中の特異や特長を分析しているのですね。
「そうですね。これからもスキルをどんどん身につけて、それを掛け算していけば、自分のニッチを見つけ出し、バリューを出していけるのだと思います」
天才にきく天才
時間管理の徹底を常に意識し幼い頃から続けることができたからこそ、自分の強みを増やし「自分だけのニッチ」を作り出せているのだろう。
彼女自身はその才能をどのように捉えているのだろうか。
天才が思う天才の人とは
ーー身近で天才だなと思う人はいますか?
「ハーバード大学は天才だらけですね(笑)。なかでも、すごいことを『普通だよ』とやってのける人を見ると『天才だな』と思います。
すごいと思える人が多い環境にいると、周りの高いレベルにキャッチアップしようと頑張る。そしていつの間にかみんなのレベルが上がっている。
そのループが、ハーバード大学の内部では起き続けているのだと思います」
ーーみんなで引き上げ合う、その環境に身を置くことが大事なのですね。
「そうですね。高いレベルの中にいるとさらに上を見たくなります。だからこそ目の前にあることを淡々とこなしてきました。
同じように続けることができれば、誰もが秀でるものだと思っています」
廣津留すみれはなぜ天才なのか
ーーすみれさん自身はなぜ天才になれたのだと思いますか?
「私は自分を天才だとは思っていませんが、天才だと思ってもらえるのだとしたら、目標を一度決めたらそこに向けての努力はためらわずに進めるから、だと思います。
タスクを細分化し今この5分間で何ができるのかを常に考えていて、無駄のない生活で突き進むので、目標に向けて進むパワーは人よりも強いと思います」
編集後記
彼女の学歴や活動歴は学業や芸術、起業人としての優秀さを十二分に示しているが、その背景には、きっと人並み以上の努力があったのだろう。
それを感じさせず、楽しかった思い出として明るく語る姿はまさに、すごいことを何でもないことのように成し遂げる天才のように感じた。
KIDSNA編集部
【廣津留すみれ関連情報】
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