高額医療費を支払う際に心強い高額療養費制度について、妊娠や出産を機に初めて聞く方もいるかもしれません。帝王切開などの出産で支給の対象となるようですが、事前に申請方法がわかると安心ですよね。厚生労働省や全国健康保険協会の資料を参考に、計算方法や書き方、限度額などについてご紹介します。
高額療養費制度とは、医療機関や薬局で支払ったひと月分の金額が一定の上限を超えた場合、その超過金額を国が支給してくれるというものです。
限度額や条件などはありますが、出産で高額医療費になった場合には心強い制度ですよね。
基本的に「出産」は傷病扱いにならないため、健康保険の利用はできません。さらに高額療養制度は、健康保険の自己負担額を軽減してくれる制度です。つまり、治療となるような行為がない普通分娩で出産した場合、健康保険も適用されず、高額療養制度の対象となりません。
普通分娩で出産した場合であっても、「出産育児一時金」や「出産手当金」が支給されます。場合によっては一時金と高額療養費制度を合わせて利用できることもあるようです。
帝王切開や切迫早産などの異常分娩は「治療」が必要とみなされ、健康保険が適用されます。したがって、高額医療費となった場合は高額療養制度の対象になります。
ただし、入院中の食事費用や差額ベッド代は払い戻し金額に含まれません。心当たりがあれば、病院や加入している保険組合に確認してみましょう。
高額医療費となった場合、高額療養費は年齢や年収によって、支給される金額や負担限度額は変わります。
年収は社会保険などに加入している方は「標準報酬月額」、自営業の方など国民健康保険に加入している方は「年間所得」によって区分されます。年齢は70歳を境に変わりますが、今回は69歳以下の場合を参考にをご紹介します。
【年収約1,160万円以上】
標準報酬月額:83万円以上、旧ただし書き所得901万円越えの方
自己負担額:252,600円+(医療費ー842,000円)×1%
【年収約770万~1,160万円】
標準報酬月額:53万~79万円、ただし書き所得600万~901万円の方
自己負担額:167,400円+(医療費ー558,000円)×1%
【年収約370万~770万円】
標準報酬月額:28万~50万円、ただし書き所得210万~600万円の方
自己負担額:80,100円+(医療費ー267,000円)×1%
【年収約370万円未満】
標準報酬月額:26万以下、ただし書き所得210万以下の方
自己負担額:57,600円
【住民税非課税者】
35,400円
高額医療費になった場合いくらくらい戻るのか、全国健康保険協会のホームページでは簡易的に自動計算できるページもあります。
例えばひと月の自己負担額が15万円で【年収約370万~770万】を想定し入力したところ、高額療養費見込み額は6万7570円となります。試算結果はおおよその目安であり、加入している健康保険組合によって金額は異なる場合もあるようですが、自己負担額を入力し年収を選択すると自動計算してくれるので、気になる方は確認してみてはいかがでしょうか。
※過去12カ月以内に3回以上、4回目から利用できる「多数回」該当は省略
高額医療費となった場合、どういった条件なら高額療養費制度を利用できるのでしょうか。制度を利用する前に、押さえておきたいポイントと併せてご紹介します。
高額療養費制度は、毎月1日から末日までのひと月単位で計算されます。
例えば、帝王切開で月末に分娩し入院が翌月にかかる場合、分娩費用と入院費用は別々に計算しなくてはなりません。ママやパパの意志で分娩日を選べるわけではありませんが、覚えておくとよいでしょう。
高額療養費制度は世帯合算することが可能です。例えばママの自己負担額が2万2000円、パパの自己負担額が3万円の場合、世帯合算した5万2000円を自己負担額として計算できます。
ただし、69歳以下の場合は、1件あたり2万1000円以上が対象となるので注意しましょう。
1件とは、通院のため窓口で支払った金額と調剤薬局で支払った合計で計算することが可能です。
例えば病院での支払いが1万8000円でも、その後調剤薬局で4000円払ったら合計2万2000円となり高額療養費の対象です。病院や薬局でもらった領収書は捨てずに保管しておくのがよいかもしれませんね。
妊娠中に帝王切開をすることなどがわかったら、事前申請をしておくと便利です。
「限度額適用認定証」をもらうための手続きになるのですが、これが手元にあれば退院時の支払いを抑えることが可能です。
社会保険に加入している方は会社または社会保険で、国民健康保険に加入している方は各自治体で申請を行います。入っている保険によって異なりますが、「健康保険限度額適用認定申請書」を提出することが多いようです。申請書には保険番号や捺印が必要になる場合もあるので、「健康保険証」や「印鑑」を用意できるとよいでしょう。
申請書はホームページからもダウンロードでき、記入例などの書き方も掲載されている場合もあります。傷病名などは不明な点は、病院に問い合わせておくと安心です。多くの場合認定証は1年間有効ですので、使用後も大切に保管しておくとよいでしょう。
妊娠や出産はすべて予定通りとはいきませんよね。帝王切開に急遽切り替える場合もあるかもしれません。
「限度額適用認定証」が手元になく事後申請するときは、一度お金を支払った後に加入している健康保険窓口へ手続きをします。
「健康保険高額療養費支給申請書」を提出する場合が多く、「健康保険証」「印鑑」「領収書」や払い戻しを受ける口座の「通帳やカード」などが手元にあると、スムーズに必要事項を記入できるでしょう。
高額医療費の支払いが難しい場合、無利息の「高額療養費貸付制度」も用意されています。必要に応じて、健康保険窓口へ問合せをするのがよいでしょう。
申請後、「支給はいつごろ?」と思うママやパパもいるかもしれません。
厚生労働省では、申請してから実際に支給されるまで少なくとも約3カ月はかかると通達しています。手続きできているか不安になるかもしれませんが、焦らずに待てるとよいですね。
高額医療費を支払った場合でも、出産と子育てで忙しく申請できなかったママもいるかもしれません。
高額療養費制度は、さかのぼって請求することも可能です。申請期限は診療を受けた月の翌月初日から2年以内となっていますので、確認してみましょう。
妊娠中や出産は一時金など手続きする機会も多いですよね。面倒に感じることもあるかもしれませんが、帝王切開などでかかった高額医療費は、手続き1つで経済的な負担を減らしてくれる公的制度です。
限度額や事前申請などの申請方法を確認し、高額療養費制度を賢く利用してみてはいかがでしょうか。
※記事内で使用している参照内容は、2018年5月31日時点で作成した記事になります。
2018年06月12日
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