ゴッホは生きている間に「絵が1枚も売れなかった」ワケではない…アルル時代の傑作を40万円で買った社長令嬢

ゴッホは生きている間に「絵が1枚も売れなかった」ワケではない…アルル時代の傑作を40万円で買った社長令嬢

ゴッホ展が東京や神戸で開催され、行列ができる人気になっている。アートに詳しいライターの村瀬まりもさんは「現在の大人気に比べ、ゴッホは生前まったく絵が売れなかったというが、1枚だけ購入した女性がいたという記録が残っている」という――。

「大ゴッホ展」が来場30万人突破

2025年から2026年にかけて、日本にかつてないほどたくさんのゴッホの絵が集まる。東京都美術館では「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」が12月21日まで開催され、2026年は愛知県美術館に巡回(1月3日~3月23日)。神戸市立博物館では「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」が始まっており、2026年には福島、東京などに巡回する。

さらに2027年には「大ゴッホ展 アルルの跳ね橋」がスタートし、なんと2028年まで続くのだ。美術展のチケットが2000円超になった今、そんなにゴッホの絵を見に行く人がいるのかとも思うが、これまでも毎回50万人近くを動員してきたゴッホ展は、やはり美術展企画の鉄板でありドル箱。あの名作「夜のカフェテラス」が約20年ぶりに日本で見られるとなれば、現在の神戸市立博物館のように平日でも長い行列ができるのだ。

すでに「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」は開始から3カ月弱で30万人を入場を記録した。

それだけの吸引力がある画家なので、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~90年)のわずか37年の生涯については、ゴッホ展に行かない人でもだいたいのところをご存じだろう。

「生前は無名だった」伝説は本当か

「今は世界の有名美術館に絵が所蔵されているが、生前は無名で絵がほとんど売れなかった」「無収入で弟のテオに死ぬまで仕送りしてもらっていた」「南仏アルルで同時代の画家ゴーギャンと共同生活を始めるも、彼と衝突し、自分の耳を切り落とした」「精神のバランスを崩して療養施設に入院し、退院後に麦畑の中でピストル自殺した」

ゴッホ展には必ず行く! というほどのファンになると、もう少し詳しい。

「従姉妹や下宿先の女性など、身近な人をすぐ好きになり、熱烈アピールしては嫌われていた」「自画像が多いのはモデルを雇うお金がなかったから」「有名なひまわりの絵はゴーギャンをアルルの“黄色い家”で歓迎するために何枚も描いた」「切り落とした耳たぶをゴーギャンのなじみの娼婦に渡した」「弟のテオもゴッホの死の半年後に病気で亡くなった」「死後にゴッホの絵の評価を高めたのはテオの未亡人ヨーである」

ということは知っている人も多いのではないだろうか。筆者もそのぐらいの知識はあったのだが、「ゴッホの生前に売れた絵」については、ほとんど何も知らなかった。

だが、「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」の公式図録にはこう書いてある。

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