認知症の義父は汚物を床に塗りたくった…「地獄の介護」を終え、最期を看取った女性が漏らしたひとこと
親の老いは子どもへの「最後のレッスン」
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苦しみや絶望を感じずに生きることは可能なのか。福厳寺住職の大愚元勝さんは「お釈迦様は、人は生きる苦しみ、老いる苦しみ、病気の苦しみ、死の苦しみという『四苦』を宿命として持っていると説いた」という――。 ※本稿は、大愚元勝『絶望から一歩踏み出すことば 大愚和尚の答え一問一答公式』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
介護と子育てを1人で背負った女性
人生を謳歌しているとき、「さあやるぞ!」というとき、突然やってくるのが親の老いです。優しく朗らかだった母、若々しく尊敬できた父が衰え、病気になり物忘れをするようになる。目を背けようと背けまいと、誰だって年を取るんです。
故人がお年寄りの場合、介護を経て亡くなられたケースも珍しくありません。
先日亡くなったのも、寝たきりだったおじいちゃん。喪主は息子さんのお嫁さんでした。彼女は夫に先立たれて、女手一つで二人のお子さんを育て上げました。朝は新聞配達、昼はパートをしながら子育てをし、認知症の義父の介護をしていたんです。子どもたちが育って家を離れた後は、やはり負担はお嫁さんにのしかかります。
義父は泣きながら「殺してくれ」と言った
意思疎通も怪しいのに、義父は気にくわないことがあるとお嫁さんに当たったそうです。
最初はお茶碗をひっくり返すくらいでしたが、エスカレートして自分の汚物をベッドや床に塗りたくるように。彼女は寝る時間を削って働き、それでも生活は苦しく、心身ともにクタクタだったんでしょうね。そして帰宅すれば家中がトイレ状態。
「気がついたら私、お義父さんの上に馬乗りになって、首を絞めていました。そのときにお義父さんが私の顔を見て涙を流しながら『殺してくれ』って言ったんです」
認知症が相当進んでいるはずの義父が、彼もつらかったのでしょう、真顔で殺してくれと言った。お嫁さんは我に返って手を離し、その後ずっと震えていたそうです。