解雇されないギリギリで働く…元マッキンゼー経営学者が「"働かないおじさん"こそ勝ち組」と言い切るワケ
英語よりITスキルより重宝される「働かないおじさん」のマインドセット
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なぜ「働かないおじさん」は解雇されないのか。『働かないおじさんは資本主義を生き延びる術(すべ)を知っている』(光文社新書)を上梓した侍留啓介さんは「大企業の安定性と悪くない収入を確保した上で、解雇されないギリギリのパフォーマンスを発揮し、人生を楽しむのが『働かないおじさん』である」という――。
「働かないおじさん」こそ「勝ち組」モデル
昭和のサラリーマンたちが、令和の企業社会からは姿を消してしまったかというと、そんなことはない。現在においても、とりわけ大企業には、「働かないおじさん」と呼ばれる種類の人々が、少なからず棲息している。毎月従業員にお金を振り込まないといけない身となった私からすれば、ある意味で、「働かないおじさん」こそ理想的な職業人なのではないかと思うことすらある。
たしかに「働かないおじさん」――つまり、一定以上の規模の企業で悪くない給料をもらっていながら、仕事へのモチベーションも低く、仕事のパフォーマンスも悪いような人たちは会社にとって厄介者だ。
しかし従業員個人の立場からすれば、昭和時代を彷彿させる彼ら「働かないおじさん」こそが、資本主義社会における「勝ち組」のひとつのモデルなのではないだろうか。
「働かないおじさん」とは、大企業の安定性と悪くない収入を確保した上で、解雇されないギリギリのパフォーマンスを発揮し、人生を楽しむ生き方である。個人の生き方として、これ以上のものがあるだろうか。
熱血サラリーマンは自己顕示欲が強い
逆に考えどころなのは、『サラリーマン金太郎』(本宮ひろ志、集英社)の矢島金太郎のような熱血サラリーマンである。
金太郎のように結果を出せればいいが、こうした熱血サラリーマンタイプはスタンドプレーまがいのものが多く、かえって会社に損害を与えかねない危険な存在である。
良かれと思ってとんでもないミスを犯したりもする。また、単に熱意があるだけの社員は自己顕示欲が強く、時として会社全体の和を乱す存在ともなりかねない。あるいは周りを疲弊させる。さらに個人のキャリアから見ても、熱血サラリーマンは中途で燃え尽きてしまう恐れがある。
社長になれるかどうかは、運によっても大きく左右される上に、仮に社長まで上り詰めることができたとしても、大企業の場合、創業家や歴代社長、株主など睨にらみを利かせる存在が目白押しで、好きなようには振る舞えない公算が高い。熱血サラリーマンの辿りつく先として、こうした状況は厳しいだろう。「坂の上に雲があると思っていたら、雲は見つからなかった」といった結果に終わる可能性が高い。
むしろサラリーマンとしては、なまじの出世などを考えずに、いかに楽をしながら会社に居座るかを画策していく方が得策である。そういう意味で「昭和のサラリーマン」は、E(employee=従業員)にとってロールモデルとなりうる。