「真面目でバカな日本人を使え」が合言葉になっている…元刑事が明かす「高校生を狙う海外高収入バイト」の正体
ノルマを達成できなければスタンガンを当てられる
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「外国で仕事」「高収入」甘い誘いは地獄の扉だ。42年間凶悪犯と対峙した「リーゼント刑事」こと秋山博康さんは「ミャンマーとタイの国境『KKパーク』で日本人高校生が監禁される事件が起きた。ネットで若者を騙し、海外マフィアに売る人間はSNSやオンラインゲーム、マッチングアプリに潜む」と警告する――。 ※本稿は、秋山博康『元刑事が国民全員に伝えたい シン・防犯対策図鑑』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
海外サーバーでもオンラインカジノはNG
オンラインカジノは、絶対にやったらあかん。オンラインカジノで借金を抱えた若者が闇バイトに手を出し、罪を犯す。そんな負の連鎖が、現実に起こっているからや。
しかも、この問題は一般人に限った話やない。芸人やプロ野球選手など、有名人が書類送検されるケースも相次いでいる。テレビやネットニュースでも大きく取り上げられているよな。
オンラインカジノは、刑法上明確に違法や。「単純賭博罪」(刑法第185条)には50万円以下の罰金または科料、「常習賭博罪」(刑法第186条1項)には3年以下の懲役が科される。この判断は刑法第1条で定められた「属地主義」に基づいており、たとえサーバーが海外にあったとしても、日本国内からアクセスすれば日本の刑法が適用されるわけや。
とはいえ、賭博罪の罰則は比較的軽いため、これまでは見過ごされてきたケースも少なくない。たとえば、友人同士の賭け麻雀や賭けゴルフなどは、違法でも黙認されてきたのが実情や。
これまではグレーゾーンだったが…
こうした曖昧さは、暴行罪(刑法第208条)にもある。たとえば、芸人が相方を叩くツッコミは、法的には暴行にあたる可能性もあるが、社会的には“お笑い”として受け入れられている。法律の運用は、社会的な空気や通念に左右されることもあるってこと。
オンラインカジノもまた、“グレーゾーン”に置かれてきた。しかし、その構図は崩れつつある。
取り締まり強化の契機となったのは、闇バイトとの関係が明らかになったこと。オンラインカジノをきっかけに、詐欺罪(刑法第246条)や強盗罪(刑法第236条)といった重大犯罪へと発展するケースが後を絶たない。そうした実態が社会問題として浮上したことで、警察も本格的に動き出した。オンラインカジノは、黙認できる娯楽ではなくなったってわけや。
この流れは、東京高等検察庁の元検事長の賭け麻雀事件にも重なる。当時、同氏は検事総長候補であり、定年延長をめぐる法改正の渦中でもあった。そんな人物の違法行為が、個人の問題で済まされるはずもなく、最終的に同氏は略式起訴・有罪になった。
ここで共通しているのは、「賭博行為そのもの」ではなく、それが社会的な問題と結びついた瞬間に、法の適用が一気に厳格になるという点や。
実際、かつては日本のテレビCMでオンラインカジノの広告が流れたこともあり、合法と誤解した人も少なくなかったはずや。もちろん、広告を流した側にも問題はある。とはいえ、たとえ「知らなかった」「合法やと思っていた」としても、その思い込みで罪を免れることはできない。気の毒ではあるけどな。