この症状がある人はがんによる死亡リスクが52%低下…医師「がん発症リスクとアレルギー性疾患の意外な関係」
アレルギー性疾患があることは消化器系のがんのリスクが低下する要因に
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免疫を高める行動は何か。医師の佐藤典宏さんは「免疫の最前線ではたらくNK細胞による免疫監視機構が弱くなると、がんが発生、成長するリスクが高まると考えられる。この活性を高めるために5つの習慣を紹介しよう」という――。 ※本稿は、佐藤典宏『専門医がやっている「がん」にならない50の習慣』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
花粉症とがんリスクの意外な相関関係
花粉症の人は多いと思いますし、年々増えているという報告もあります。
春から初夏の花粉の時期に、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといったつらい症状が続き、生活の質を低下させるやっかいなアレルギー性疾患です。
ただ、この花粉症が、意外にも、がんのリスクと関係があるという報告があります。
はたして、花粉症があると、がんのリスクが高くなるのでしょうか? あるいは、低くなるのでしょうか?
2016年にClinical & Experimental Allergyという雑誌に報告された論文によると、日本人を対象とした観察研究で、群馬県の中高年の住民およそ1万人について、過去12カ月以内に花粉症になったかどうかを調査した結果、全体の12%が花粉症になったということです。
そのうえで、花粉症の有無と、その後のがんによる死亡率との関係を解析した結果、花粉症がある人では、なんとがんによる死亡リスクが、52%も低下していました。
これは、花粉症があるとがんで死ぬリスクが半減するというおどろくべきデータです。この研究報告は、以前、東京大学の中川恵一先生も、新聞記事で紹介されています。
もう一つ、花粉症と膵臓がんとの関係についての研究を紹介します。
2020年に、Frontiers in Public Healthという雑誌に報告された論文によると、これまでに報告された花粉症と膵臓がんとの関係についての研究論文をまとめて総合的に解析した研究です。
8つの研究をまとめて解析した結果、花粉症の既往がある人の膵臓がんの発症リスクは、43%も低くなっていました。