なぜ7月なのにヒドイ暑さが続くのか…「世界の中でもダントツに異常」という日本付近の海で起きていること
もはや「熱帯夜」という言葉は死語になった
Profile
今年は多くの地域で統計開始以来、最も早い梅雨明けとなった。これが夏の気象にどんな影響をあたるのか。三重大学大学院の立花義裕教授は「日射量が一番多い6月下旬に晴が続くと海水温が上昇し、猛暑が強く、また長引くことが考えられる」という――。(第1回) ※本稿は、立花義裕『異常気象の未来予測』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。
日本は春夏秋冬から夏冬の「二季」に
温暖化で世界中の海面水温が急上昇していますが、世界中で最も上昇しているのは、実は日本近海の海面水温です(図1、図2)。猛暑は地表の温度だけでなく海面水温も上げています。
年間を通して日本で日射しが一番強いのは夏至の6月下旬、一番気温が高い時期は8月上旬。夏に記録的猛暑が発生すると、海面水温も1カ月程度遅れて異常なほど高温となります。猛暑でも海面水温を温めるのには時間がかかるため、気温の上昇よりも遅れます。
2023~2024年の2年間を平均した、世界の海面水温の平年からの差。濃い色は全て平年よりも高温を示す(気象庁の海面水温データを用いて作図)。『異常気象の未来予測』より
2024年9月21日の海面水温の平年からの差。濃い色は全て平年よりも高温を示す(気象庁のWEBサイトより)。『異常気象の未来予測』より
水温は一旦上がると下がりにくくなります。夏のお風呂が翌朝でも温かいこともあるのと同じ現象です。
猛暑で上がった日本周辺の海面水温は、日射しが秋めいてきても下がりません。猛暑に伴う海面水温の上昇が残暑を厳しくさせる原因になっています。本来涼しいはずの秋の海風も、海面水温上昇によって暖かく、湿っているため体感的にも暑く感じてしまうのです。
夏が長引くほど、秋は短くなります。それが長い夏と、冬だけの「二季」の国につながっています。夏の異常気象が、海を経由して秋の異常気象を呼ぶ。まさに異常気象の連鎖です。異常気象を知るには、空を見ているだけでは不十分なことをわかっていただけたかと思います。