くつろげるはずの在宅勤務でなぜ体調を崩すのか…心を病んだ公認心理師がカウンセリングを受けて知った事実
メンタル回復のために捨てた“5つの習慣”
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【第1回】ストレスに負けない人は「たった一つの指標」を持っている…公認心理師が「もう疲れた」という相手に伝えること 自分らしく生きるにはどうすればいいのか。公認心理師の伊藤絵美さんは「人生にはいろいろなことが起きる。心の専門家である私自身も、数年前、メンタルの調子を崩してしまった。何が足りなかったのか。考えた末に、捨てた習慣がいくつかある。まず1つ目は『家で仕事をすること』だ」という――。 ※本稿は、伊藤絵美『自分にやさしくする生き方』(ちくまプリマー新書)の「まえがき」の一部を抜粋・再編集したものです。
専門家なのに、メンタルを崩してしまった
(第1回からつづく)
「内なるチャイルド」の声に耳を傾け、チャイルドの欲求を満たすようにものを考えたり行動したりできるよう、私はクライアントを手助けするようになりました。
その結果、クライアント自身が、自分にやさしくできるようになり、それが回復につながっていきました。認知行動療法に加えてスキーマ療法を実践することで、明確に「自分にやさしくする」ことができるようになり、それがカウンセリングのさらなる効果を導いたのだと思われます。
「自分にやさしくする」というのがとても重要で、人々が健やかに、そして幸せに生きていくためには不可欠だということを、私は身をもって知りました。
ここで話をハッピーエンドで終わらせられたらよかったのですが、スキーマ療法で自分にやさしくできるようになったと思っていた私は、しかしその後、2019年から2023年にかけて、体調やメンタルの調子を大幅に崩してしまう、ということを体験しました。
その間、家族の病気や介護や入院や手術や死が立て続けにおこり、その対応に追われていました。フルタイムで働きながらの対応は、今思えばかなり大変で、私自身のキャパシティを超えていましたが、そのときはそれに気づかず、「誰もが仕事と介護の両立に苦労しているんだから」と自分に言い聞かせ、頑張っていたのです。
「自分へのやさしさ」では間に合わなくなってしまった
スキーマ療法で、心理的には以前より自分にやさしい対応ができるようにはなっていたのですが、行動面ではまだまだ「このぐらいは頑張って当たり前」だと思って頑張り続けてしまったのでしょう。
また年齢的にも更年期にさしかかり、普通に暮らしていても女性であれば誰もが心身が揺らぐ時期であったということも関係していたのだと思います。
さらにそのなかでコロナ禍に見舞われました。
私は、自分のカウンセリングオフィスの運営を継続させること、オフィスからクラスター感染を出さないこと、もちろん自分が感染したらもろもろ大変なのでとにかく感染しないようにすることに必死でした。
それまでは会場を借りて実施していたワークショップもオンラインに切り替えなくてはなりません。カウンセリングも希望するクライアントにはオンラインで提供できるようシステムを整えました。
そんなこんなで、スキーマ療法で得た「自分へのやさしさ」では間に合わなくなってしまい、心身の調子を大幅に崩したのです。