スコップ片手に平城京で土器を発掘する生徒も…難関私立・渋幕の旅行が「現地集合・現地解散」を貫くワケ
何をしても、集合場所に遅刻しても「自己責任」
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千葉県にある進学校の渋谷教育学園幕張中学校・高等学校、通称「渋幕」の研修旅行は生徒たちが現地集合し、グループごとに自由に巡り、現地解散する。教育ライターの佐藤智さんは「集合時間に間に合わないといったアクシデントも起きる。それでも生徒を信じ、自己決定の場を与えるという方針が見える」という――。 ※本稿は、佐藤智『渋幕だけが知っている「勉強しなさい!」と言わなくても自分から学ぶ子どもになる3つの秘密』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
開校当初からノーチャイム制…「自調自考」が浸透
渋幕では開校当初からチャイムが鳴りません。だから、生徒たちは次の授業への移動時間になると、自分で時間を見計らって動きます。今でこそ、チャイムをなくす学校もちらほらと出てきていますが、40年前から「自調自考」の教育目標をすみずみまで浸透させ、ノーチャイム制をとってきた渋幕は稀有けうな存在でしょう。
卒業生の一人がこんなエピソードを話してくれました。
「前日に夜更かしをした私は、他の生徒の目につかない教室の窓際の一番後ろの席で授業中眠りこけてしまいました。ハッと目を覚ますと、教室には誰もおらず……! 別の教室で次の授業が始まっていました」
チャイムが鳴らないことによる、とんだ失敗談です。
しかし、本書をここまでお読みいただいた方ならばもうおわかりだと思いますが、こうした失敗も含めて、渋幕の学びです。
教員が面白い授業をすることが大前提
化学の岩田久道先生はノーチャイム制は教員にとっても重要な意義があるものだと語ります。
「チャイムを気にせずに、急き立てられるような緊張がない中で、自分の学びに集中できる環境を作ることはとても重要です。一方で、『生徒たちがきちんと時間通りに授業に入れるのか?』と疑問に思う方もいるでしょう。
私の授業では教室から離れた化学室で実験の準備をしなければならないことも多く、生徒が時間通りに動くことはとても重要です。だから、生徒たちが自律性を持つことは欠かせません。とはいえ、そもそも生徒が授業に興味を持てなければ間に合わせようと思いませんよね。だから、当たり前に聞こえるかもしれませんが、私たち教員がおもしろい授業をする、ということが生徒たちが前向きに授業に向かうための大前提なんです」