「優しいアドバイス」は不毛な時間でしかない…「マジメ上司×マジメ部下」の組み合わせが職場を崩壊させる理由
そのアドバイスは「自分のため」になっていないか
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なぜ上司は部下に不毛なアドバイスをしてしまうのか。アドラー心理学とコーチングを学んだという佐藤悠希さんは「快楽のためのアドバイスが不毛な会話を招いているのかも」という――。(第2回/全2回) ※本稿は、佐藤悠希著『不毛な時間をゼロにする』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
不毛な時間はなぜなくならないのか
「何度言っても、わかってもらえない……」
かつてのわたしの一番の悩みです。
職場の同僚や家族に対して、何を言ってもそのとおりにやってもらえないことに毎日イラだっていました。
こうした不毛な時間は、どうしてなくならないのでしょうか。
ある金融機関で研修をしたとき、
「メンバーにどう伝えたら、やる気になってもらえるんだろう?」
と悩んでいる50代の部長の方がいらっしゃいました。
その方は、チームで新商品の拡販を目標にしていたものの、メンバーが思うように動いてくれず、目標達成に苦戦しているとのことでした。
メンバーに、「この仕事をやると昇給するチャンスが広がるよ」とか、「この仕事は、難易度が高くてやりがいがある仕事だよ」とか、
いろいろな角度からアドバイスしているものの、一向にやる気になってもらえないと嘆いていました。
不思議なことに、多くの人が「アドバイスするのは良いことだ」と思っています。
でも、本当にそうでしょうか?
「昇給できる」とか「難易度が高くてやりがいがある」とか、相手がピンときていないことを言い続けるのは、まったくもって不毛です。
そこで、本稿では、不毛な時間をたくさん生み出してしまう「不毛な会話」を打破するコツをお伝えしていきます。
なぜ人はアドバイスをしたがるのか
では冒頭の部長のように、不毛だとわかっているのに、そもそもなぜ人はアドバイスをしたがるのでしょう?
それは「気持ちがいい」からです。
米ハーバード大学心理学部の発表によると、自分の感情や考えなどを他者に伝える【自己開示】によって、脳内では快楽物質ドーパミンに関連する領域が活性化されるのだといいます。
つまり、食べ物やお金の報酬、セックスなどと同じような快楽を感じているからこそ、人はアドバイスしたがるのです。
ドキッとした人がいたら、もしかすると快楽のためのアドバイスが不毛なコミュニケーション、不毛な会話を招いているかもしれません。