そこじゃないんだわ…妊娠・出産アドバイザーに9億かける「三原じゅん子大臣はご存じない」少子化の根本原因
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巨額の予算を投じても少子化に歯止めがかからないのはなぜなのか。ジャーナリストの池田和加さんは「三原じゅん子大臣の取り組みはどこかチグハグで優先順位が違う。日本の少子化の最大の課題は、女性個人の生殖能力の問題などではない。日本社会全体が子どもを産み育てる生殖能力を失っているのが根本問題だ」という――。
「プレコンケア」ではなく、「バースギャップ」に注力すべき
三原じゅん子大臣が率いるこども家庭庁が今月発表した「プレコンセプションケア推進5か年計画」。9億5000万円という大きな予算額に「税金の無駄遣い」「現金給付のほうが効果的」といった批判・疑問がSNSやメディアで噴出している。
識者からも「性教育の“はどめ規制”をまず撤廃すべき」「性と生殖の健康・権利の教育を推進すべき」との厳しい指摘が上がっている。
同庁には少子化対策などとして7兆3000億円という巨額な予算が注ぎ込まれているにもかかわらず効果が乏しいとの声が多い状態だったが、そこに火に油をそそいだ形だ。
この5カ年計画は、将来の妊娠・出産に向けて若年層に正しい健康知識を普及させる取り組みだ。
プレコンセプションケアのプレコンセプション(Pre Conception)とは、受胎や妊娠の前という意味で、妊娠前から女性の心身のケア管理をすることを指す。5年間で「プレコンサポーター」と呼ばれる啓発人材を5万人養成し、企業や自治体、学校で講習や相談窓口を設置するという。
日本女性の産婦人科受診率が欧米と比べて低いのは事実だ。ロシュ・ダイアグノスティックス社の調査によると、日本の婦人科受診経験者は55%にとどまり、7割超のフランスやスウェーデンを大きく下回る。
筆者も、プレコン啓発の重要性を認識しており、その活動に大いに賛同する。だが、既存の医療従事者や教員を増員すれば済む話を、学校や企業などで助言するアドバイザーを新規に養成する立て付けになっていると見られ、裏に、新たな資格制度で誰かが儲ける「資格ビジネス」の臭いもしないではない。
しかし、より深刻な問題がある。それは、どれほど妊娠・出産の知識を普及させても、残念ながらそれだけで劇的な出生数改善は期待できない、ということ。その事実を三原大臣も同省官僚も理解していない。日本の少子化の最大の課題は、女性個人の「生殖能力」の問題ではない。以下に述べるように、社会全体が子どもを産み育てる生殖能力を失っているということだ。